ざまーみろ2
 2012.01.04 Wed 23:44



※倉間夢



















 オレが部室に行くと、席に座ったナマエの頬がぷっくり膨らんでいることに気がついた。他の部員がいない部室で、ボリボリと何かを食べる音がした。


「…何、食べてんだ?」


 オレはナマエの顔をのぞき込んだ。ナマエは、ポッキーを食べていた。まるでハムスターがひまわりの種を食べているみたいに、彼女の頬は膨らんでいた。それが何となく可愛く見えた。


「ぽっきいたべてるの、くらまくんもたべる?」


 そう言ってナマエが差し出したのは、苺のポッキー。オレが言うのもおかしいかもしれないが、小動物の様なナマエにはよく似合っていた。


「じゃあ一本」

「ふぁい、どうぞぉ」


 ナマエから一本もらって口にする。甘ったるい苺の味が口の中に広がる。オレが食べ終わる頃には、また頬を膨らませるほど、ポッキーを口に運んでいた。


「そんなに食ったら、太るぞ」


 オレが冗談でそう言ったら、一番聞きたくない人間の名前が耳に入ってきた。


「でも、南沢さんは、もっと食べろって言ってたもん。先輩が、女は少しふっくらした方がいいって…。」

「それはあの人のこのみだろ?!」

「でも、スタイルが良くて、胸もある人がいいって、倉間も思うでしょ?」


 何でそこでオレが出てくるんだ。それに、どうして南沢さんがそんなこと言っているんだ。
 南沢さん、コイツに変な知識…というか、変なこと教えないで下さい。


「何でそれをオレに聞くんだよ。」

「む。だって、倉間もきっとそう思っているかもしれない…って、言ってたから」

「南沢さんが?」

「うん。私、倉間が好きなこと言ったら、そう言ってくれた。」


 あの人知っててこんなこと教えたんだろ。


「ナマエ。オレは今のお前が好きだから、そういうことしなくてもいいんだよ。」

「でも、」

「好きなんだよ…それでいいだろ。」

「うん。」


 分かった、と言ってナマエは食べるのを止めた。


(南沢さん、ナマエに変なこと教えないで下さい。)
(ナマエのあの頬、可愛かっただろ。オレ、あれ好きなんだ。)
(ナマエはオレの彼女なんですから、)
(オレはただ、マネージャーをかわいがっているだけだ。)


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