murmur
2013.01.28 Mon 02:44
ああ、鬱ってしまった……。これから先、父のことを楽しく思い出せる日なんて来ないんだろうか。思い出すたびに泣いて、抑え込んで、偏頭痛でこめかみを揉んで、そんなの嫌だと思うのに思い出さずにはいられない。
そういえば、創作授業の先生が「君達の作品は幼すぎる、反抗心がない、親離れできていない。一刻も早く親から離れなさい」と言っていた。それが良い小説、売れる小説を書くための必須条件なら、もう私には無理だ。一生、小説なんて書き上げられない。ああでも母の話なら反抗心だけで書ける気がする。父は、無理だ。もう私の中で絶対的な良心になってしまっている。……こんな思考も、私がしているのか、私の中のキャラに私がさせている考えなのか、もうよくわからない。
とりあえず、一通り泣いたら寝て、明日のテストは早めに起きて頑張ろう。
2013.01.28 Mon 02:36
父から貰ったCDコンポが壊れてしまったようです。
……実は1・2年前からMDを上手く読み込んでくれなかったりはしたのですが、最近は無傷新品のCDですらマトモに再生できなくなりました。買い替え時、なんでしょうか。
小学生の誕生日のとき、ふと父が買ってきてくれたものでした。その頃の私の「遊び」と言えば、冷たい廊下に何百個もの指人形をひたすら並べては崩して、並べては放置してを繰り返し、飽きたらゲーム、ゲームにも飽きたら指人形を並べて……のループでした。小説はおろか、コミックすら読まず、テレビは父が回したチャンネルを隣で眺めるだけという有様。さすがの父も見兼ねたのでしょう。誕生日プレゼントに私が要求したのはシルバニアの人形で、数日後には指人形の整列に混ざる予定になってました。そんなとき部屋にやってきたCDコンポは、今にして思えば小型でショボイものでしたが、当時は世界最先端の「キカイ」とやらが侵入してきた、ぐらいに思っていました。驚異的です。だって、デンキを食べて虹色に光るのです。CDも食べます。MDも飲み込みます。音楽を流すと、スピーカーが振動するのです(父に障っちゃ駄目と言われて触らなくなったけど)。
「音楽とか聞いてみれば?」と言われても、そんな「遊び」を知らない私にとっては無理ゲーな話で、数週間は埃をかぶるだけの機械でした。でも、だんだんと父が悲しげな表情をするので、父の部屋から適当なCDを拝借して流してみました。つまらない。なんてつまらないんだろう、と思ってすぐ止めました。でも、せっかく父が買ってくれたものだし、と思うと罪悪感で胸が詰まり、私は音楽というものに興味を持たざる負えない状況に追い込まれていきました。……当時、知っている曲と言えばスキー場で流れていたユーミンくらいで、その中でも「春よ来い」が最も好きで、それだけは平々凡々を超越した究極の薄っぺらい生活をしていた私が唯一歌える曲でした。父はユーミンのベストアルバムを貸してくれました。ユーミンのアルバムを流して、その曲たちの素晴らしさに圧倒されました。一曲目は「リフレインが叫んでる」だったんですが、最初の伴奏から一気に引き込まれて、音楽に夢中になりました。といっても、聴くのはユーミンのベストアルバムだけで、CDコンポはユーミン専用機と言っても過言じゃない有様でした。その中でも「春よ来い」ばかりが部屋に流れていて、カラオケに連れ出されては「春よ来い」ばかりを歌う――ある意味つまらん生活となったわけです。
しかし、歳を重ねるに連れ、「遊び」はカラオケ中心になり、ユーミンしか知らない私は孤立……。ユーミンを小学生の前で歌ったって、周囲はつまらんわけです。それよりもモー娘。とか歌えないといけない、みたいな空気で、私はテレビから聞こえてくる曲を必死で覚えました。こんな経験のお陰で、カラオケでサッと歌うだけなら、一度聞けばどんな曲だって歌える?ようになりました。
曲を流しながら指人形を並べる生活に戻りつつあった私を見兼ねた父が、こんどはCDレンタルの店に連れて行ってくれました。自分の背よりも高い棚にCDがぎっしりと詰まっていて、よくわからん英語のタイトルが並ぶ中に放り出されて、「なんでも好きなの持ってきてみ?」と言われたって私には無理ゲーなわけです。たまらず父に縋ると、ボアと林明日香のアルバムを借りてきてくれました。この二つは今でもよく聴きます。そんなことを繰り返していくうちに、私もなんとか周囲と話が合うようになり、遊びにも誘われるようになりました。
他にもいろいろありますが、そういう思い出の詰まったCDコンポだったわけです。壊れました。
家族には内緒にして、CDはノートPCで聴くようにしています。家族に言えば「捨てろ」と言われるに決まってます。でも、父が買ってくれたものを捨てたくないのです。こういう思い出まで一緒に捨ててるような、そんな嫌な気分になるからです。
父が買ってくれたもの、残してくれたもの、父の物、父の姿が焼きついた風景、全部全部無くなっていきます。だから嫌なのです。だから、本当は父の遺産だって使いたくないのです。それなのに祖父母は湯水のように父の物を捨て、遺産を消費し、私を苦しめてくるねえこれ何て精神攻撃? というほどに。あの空地だって、アパートが建ってしまったし。父の車は知らない人が乗ってるし。本当は葬儀のとき、父の茶碗を割るのがどうしても嫌で、親戚から「管理人ちゃん、お父さんのだから割ってあげたら?」とか言われましたが割れず、目の前で叔母が割ってくれました。だって、私には、私の中には、その茶碗に口をつけてご飯を食べる父の姿が鮮明に残っていて、もし戻ってきたときに茶碗が無かったら父が困るじゃん、とさえ思っていたのです。
CDコンポ、捨てたくないなぁ……。どうして壊れちゃったんだよ、馬鹿野郎。せっかく父が買ってくれたのに。他の誰でもない、父が選んで私にくれたものなのに。
2013.01.20 Sun 02:16
『嫌だッ! もう、何も見たくない!!』
耳を塞いで屈み叫んだ言葉が、耳の奥でまだ木魂している。階段の踊り場に設置されている鏡に自分の姿が映る。地味な紺色のブレザーを着た私が突っ立っている。これから生徒会の皆に会えると言うのに、なんてひどい顔をしているんだろう。両手で頬をふにふにと捏ね、鏡に向かって微笑みかけた。
『こんな辛い思いばかりしたって何の特にもならないじゃない! 心が擦り減っていくだけ……だったら、現実なんて見なくてもいいんじゃないの。優しいことだけ溢れてる世界に居れば、それでいいじゃん』
自分の輪郭が揺らぐ。瞬きの後、鏡を挟んで私を見ていたのは、お姫様だった。周囲に笑顔の人形を並べて、赤い両目から涙を流して叫ぶ、ドレス姿の私がいた。
『私はッ! ……私は、皆みたいに強くないの。強くなれないの。だから努力とか? 無理だし。運命を待つことしかできないし。……ねえ、見えてるんでしょう? こんなに滑稽で、惨めで、弱虫の私が映ってるんでしょう。笑っても、いいよ』
私は見てないから。思う存分笑えばいいよ。
赤い両目に涙が滲み、堪えきれずに泣き出した。震える肩に笑顔の人形がそっと手を置く。なかないで、なかないで、とインプットされた定型文を繰り返す心無い人形。それでも、触れるとほんのりと温かい。
こんなものにも縋る私、結局は、
『あなたの妄想で作られた、ハリボテの箱庭よ!
』
ハリボテの世界から抜け出せずにいるんだろうか。
「結菜。どうしたの、こんなところに突っ立って」
鏡から視線を引きはがすと、恋歌が背後に立っていた。白髪と翡翠の瞳が眩しくて、ほんの少し視線を逸らした。
「……ぼーっとしちゃってた」
「もう。結菜らしいと言えば、結菜らしいけど。早く行きましょう、一緒に。ね」
「うん」
駆け足で階段を昇って行く恋歌の背中を見送り、私はまた鏡を見た。そこに立っていたのは紛れもなく私で、地味なブレザーを着ていた。
指先で表面をなぞると、冷たく、キュッと音が鳴った。
「結菜らしい……私、らしい……」
『ほら、結局、あの子も私を見てくれてない。私はこんなに空色恋歌を見ているのにね……それはそれはもう熱い視線で』
「……っ」
いつの間にか、誰かの手に絡め取られていた。ほんのりと温かいその手を無意識に握り返す。
『先輩だって同じ。私はこんなに想ってるのに、きっと先輩は私のことなんとも思っちゃいないのよ。視線が離れれば、私のことなんかすぐに思考の遥か彼方……』
少しがさついた何かに耳を塞がれる。遠くで恋歌の声が聞こえた、気がする。
『ねえ、こっちに来て。辛いこととか、嫌なこととか、なんにもないのよ。幸せで優しいことだけが溢れて満ちている……”私”の理想の世界でしょ?』
優しさに包まれていたい。
ぬるま湯の中で溺れていたい。
いつか、水底へ辿り着けたら、そこに答えがあるような気がして。
『みんな待ってるわ! 人形たちも、お友達も……あなたのお父さんだって……! 会いたくて会いたくてウズウズしてるのよ!』
本当に、と問う声は掠れて小さかったが、鏡の中のお姫様は頷いた。
恋歌の声が近づいてくる。何をそんなに叫んでいるんだろう、うるさいなあ。心配しなくていいのに。私には、これが幸せなことなのに。
「また目を逸らすの……そんなことしたって、何にも変わらないじゃない!」
「待って。行かないで、結菜! 私は、私たちは、あなたのことが本当に――!」
答えが気になって振り返った私の目を、笑顔を張り付けた人形が塞いだ。
2012.12.31 Mon 00:32
暴走してすみません。すぐ消します。
でも最後に一言だけ、
地球滅亡しろ、いい加減に。
2012.12.31 Mon 00:25
寿命を打ち破るには、殺害されなくてはならない。無差別殺人が最も好ましい。