拍手ありがとうございます。
「うん、美味しいよ。初めて食べる味だけども」
「罰ゲーム用にしちゃあパンチが足りないんじゃないか」
「これくらい何てことはない」
「作るならもっと正確に作れ」
以上、私の作ったクッキーへの感想です。
酷くないだろうか? いや、酷いだろう。確かに、あまり形は良くなかった、それは認めよう。少し、焦げてしまった。認めよう。それから、クッキーのサクサク感がなかった。ごめんなさい、認めます。
ひとりうなだれながら、目の前の山を恨めしい思いで見つめる。もちろん、それで彼らがどこかへ行ってしまうということはない。ただそこに自己を存在させるだけだ。
私はその中からひとつ手に取り、口に含んだ。
「そこまで言うことないじゃない」
甘さの中にそれだけじゃ足りないと苦みが襲う。私はそれを勢いよく飲み下した。
みんなが悪いわけではないんだ。手放しで誉められる代物ではないのは自分がよくわかってる。
さらにひとつ口に放り入れた。
だけど、誉めて欲しかった。なんてワガママなんだろう。涙が出てきそうだ。
私は口を空にして少し長く息を吐き出した。
そのとき、ドアを開けて先刻正直な感想をくれた人達が入ってきた。あまり会いたくない、これが私の率直な気持ちだ。惨めな気持ちで私のまわりに腰掛けた彼らを見た。
「どうかしたの?」
そして、精一杯の見栄を張って尋ねた。
「クッキーを貰いに来ました」
何を言っているのだろうか。驚きで目を見開くと、今度は違う彼が、
「お前が作ったのを食べない訳ないだろう」
それじゃあ、さっきと言ってることが違うじゃない。よくわからなくなってきた。
「別にマズいとは言っていない。お前が作ったのなら食べたい」
もうよくわからない。わからないけど、なんか嬉しくなってきた。つまりは私の作ったクッキーを食べに来てくれたんでしょう?
「ありがとう」
私は彼らの前へクッキーを差し出した。
「次作るときは、僕に君を誉めさせてくれ」
そう言いながら、クッキーを手にする彼の言葉を聞いて、
「覚悟しておいてよね」
私は笑顔を作って彼らに言い返した。
一口食べた感想は?
title:Magic powers
何かありましたらどうぞ。
お返事はmemoにてさせてもらいます。
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