逆風の太刀
 2016年10月3日 (月) 13:42

 忠義を通した 内膳の
 意志を受け継ぐ三百の兵
 内膳丸に立てこもり
 死への覚悟を胸に抱く

 弟子の無念をはらさんと
 行くは野牛の五郎右衛門

 吹雪の中を進みくる
 敵の軍兵火の手を上げて
 迎え撃たんと構えしは
 世にも聞こえし柳生の剣


 多勢に無勢 内膳丸に
 甲冑武者が押し寄せる
 黒煙(こくえん)まとい 大音(だいおん)あげて
 幾度も幾度も攻め寄せる

 五郎右衛門は先陣を斬り
 恐れも抱かず(いだかず)太刀を振る

 義理はこの手で果たすべし
 例えこの身が果てるとも
 甲冑もろともなぎ倒す
 振るは柳生の逆風の太刀

 五郎右衛門の逆風は
 豪力一閃鋭くうなり
 なみくる敵兵斬り倒し
 帰り血浴びつつ太刀を振る

 五郎右衛門の武者ぶりは
 吹雪に浮かんだ悪鬼のごとし
 非道を許さぬ逆風は
 敵兵斬ること十八人

 されど刀が折れた時
 矢玉を受けて倒れ伏す
 雪散る米子に見る空は
 遠き大和の柳生の里か
 義理とほこりを抱きつつ(いだきつつ)
 その身と命を吹雪に散らす
 されどその身は滅ぶとも
 柳生の武名は消えぬ物
 これぞ柳生の逆風の太刀


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