ヴェニスの商人の考察〜誰が本当の悲劇の主人公か!
 2011.08.26 Fri 01:15


ヴェニスの商人は紛れもなく喜劇であるが、物語の登場人物ほぼ全員に暗い未来を予感させるフラグがあることで有名である。
今回はその辺を真面目考察・・・

@バサーニオは富豪の娘ポーシャと結婚するために先立つものが欲しいので、アントーニオから金を借りようとするが、財産は航海中の商船にあり、金を貸すことができないので、ユダヤ人の金貸しシャイロックに金を借りに行く。アントーニオは、金を借りるために、指定された日にシャイロックに借りた金を返せなければ、シャイロックに彼の肉1ポンドを与うという条件に合意する。
→もともとアントーニオはシャイロックを馬鹿にしていて、シャイロックはそんなアントーニオを憎んでいる。それは宗教上の対立だけではなく、アントーニオは金利を安くして金を貸すためユダヤの高利貸しは商売上がったりだと。そしてシャイロック個人にアントーニオはつばをはいたり、足蹴にすることが何回もあったことが作中で語られた。

Aアントーニオはの商船は難破し財産を失ってしまい、シャイロックは、復讐できる機会を得た事を喜ぶ。一方、シャイロックの娘ジェシカはロレンゾと駆け落ちしてしまう。
→ジェシカは身一つでロレンゾのもとに駆け落ちしたわけではなく、家の金目のものを持って出て行っている。その中にはシャイロックの妻がプレゼントした指輪も含まれており、わざわざこれだけ名指しで書かれているからに、娘より妻を愛していたことが伺える。親を裏切ったジェシカは果たして心優い教徒になるのだろうか?

Bその間に、バサーニオは、ポーシャと結婚するためにベルモントに向い、見事結婚する。だが幸せなバサーニオの元にアントーニオが借金返済が出来なくなったという報せが届く。バサーニオはポーシャから金を受け取りベニスへ。一方、ポーシャも密かにベルモンテを離れる。

→もともとポーシャは王様や貴族よりもバサーニオのような軍人がタイプだったのでほぼ結婚は決まっていたようなもの。dステージでは、このシーンを超大げさにして碓井ポーシャが加治バサーニオに箱を選ぶ試験はいつでもいいからまずはゆっくり滞在していって!なんて言って超デレを見せてたけどwwwこの時ロレンゾとジェシカの愛を告白しあうシーンがあるんだけども、そこで昔の小説とかを引用してどちらがより愛してるかを言い合う時に、全部悲恋モノから引用しているのがポイント。今こんなにうまくいっている二人だけどもしかしたら悲恋になってしまうのかもなんて予測も生まれてしまう私的にうれしくないシーン。そしてジェシカはポーシャのことをべた褒め。ここがおかしいところ。dステージでも原作でもポーシャはジェシカとほぼ会話0。なのにどうしてジェシカは褒めるのかは多分宗教的な憧れからきているのだろう。結婚したバサーニオはポーシャからあなたは私の主人なんて言われて逆に掌握されてるのが怖い!

Cシャイロックはバサーニオから金を受け取らず、契約通りアントーニオの肉1ポンドを要求する。法学者に扮したポーシャがこの件を担当し、シャイロックに慈悲の心を促す。しかし、シャイロックは譲らないため、ポーシャは肉を切り取っても良いという判決を下す。

→最も印象的だったのは、和田アントーニオの破産が決定し、三上が傍聴席からシャイロックを罵倒した際、シャイロックは「ユダヤ人ならば、キリスト教徒と体つきが違うのか?ナイフで刺されたら死なないのか?痛みを感じないのか?傷つけられたら復讐を考えないのか?」と叫んだシーン。ユダヤ人としてキリスト教徒に報復するよいチャンスだと考えたシャイロックの憎しみが破裂したところ。もはや金銭は関係なく、前例がほしいだけである。

Dシャイロックは喜んで肉を切り取ろうとするがポーシャは続ける、「肉は切り取っても良いが、契約書にない血を1滴でも流せば、契約違反として全財産を没収する」。仕方なく肉を切り取る事を諦めたシャイロックは、金を要求するが一度金を受け取る事を拒否していたから認められず、しかも、アントーニオの命を奪おうとした罪により財産は没収。アントーニオはクリスチャンとしての慈悲を見せ、シャイロックの財産没収を免ずる事、財産の半分をシャイロックの娘ジェシカに与える事を求める。そして、本来死刑になるべきシャイロックは、刑を免除される代わりにキリスト教に改宗させられる事になる。

→アントーニオは真摯なクリスチャンかと言われると実はそうでもない。彼は命が極限の状況にさらされても「神に助けを求める」ことを一切しない。そしてポーシャとアントーニオの恐ろしさの真骨頂であるこのシーンはシャイロックに改宗を命じるのである。dステージでは若干碓井くんや和田が暴走しているようにも見えたほど理不尽な仕打ちである。この場合、生きているのに殺されたようなものである。現にシャイロックはいっそ殺せ!とわめく。呼吸にも等しい生活様式を様変わりさせること、自分の大切な財産をキリスト教徒のロレンゾに渡さなければいけないこと、これは生きながらも彼の人生の終焉である。

Eアントーニオの船も難破せず無事であった事がわかり、大団円を迎える。

→さてdステージでは和田アントーニオが邸宅の窓から外を眺めると、下を向いて体中満身創痍のような状態のシャイロックが、同じような人たちの集団(多分怨念)の中とぼとぼ歩いているのを見つける。そして舞台がどんどん暗くなり、心臓の音が聞こえ始め、和田が何か恐れているような動きで後ずさるシーンで暗転終幕である。これは解釈はたくさんあるけど、大半はアントーニオの民族宗教差別の考え方は彼自身を破滅させることを予感させるようなことであろう。彼にはその罪悪感からか、同じように改宗させられたり迫害された人の怨念が見えてしまったということである。



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