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2012.07.27 Fri 05:00
アニ孫千年魔京の最終回があまりにも素敵すぎたので、半チート主で猛烈に三代救済ルートを書きたい。全員イケメソでキャッキャやってるヤロー共を書きたい! その場合、乙女ちゃんは見殺しにしかできないんだけどね!

2012.07.17 Tue 13:49
「やい鯉伴。若菜さん連れて、ちょいとわしの部屋に来い。客だ」

「あん? 客って…、若菜もか?」

「そうだっつってんだろうが。大事な客だ。早くしろよ」

ぶすくれたような苦虫を噛み潰したような顔で来客を告げられた鯉伴は、釈然としないながらも父親の真剣な気配を嗅ぎとってやれやれと腰をあげた。
安定期を迎えたからと家事に復帰した妻を炊事場まで呼びに向かう。
心配ながらも、若菜がくるくる動き回るのを見るのは鯉伴の楽しみでもある。
今頃、雪女ときゃいきゃい騒ぎながら夕飯を仕上げているのだろう。
ふ、と顔の力を抜いてから火のないキセルをしまい込み、鯉伴はゆるりと歩を進めた。

「おおい」

「あら二代目、どうなさったんですか?」

「おう、若菜借りれるかい」

「はいな、もちろん。若菜さまー!」

やはり雪女と鍋の前で騒いでいた若菜が、毛じょうろうの声でぱっと振り返る。

「二代目がお呼びですよ」

「鯉伴さ、きゃ!」

若菜は春のような笑顔で鯉伴に駆け寄ろうとし、未だ馴れない着物が足に纏わり付きつまづく。
鯉伴は危なっかしい身重の嫁に肝を冷やし、とっさにその身を支えてやった。


(また時間できたら続き書くます)

2012.07.16 Mon 21:47

「あたしゃ、いまさらこの家でどうにかなろうなんて考えちゃいないよ」

「なに?」

「あたしはただ、それこそ三代目が生まれてから出てったんじゃあ今よりもっとややこしくなると思ってね。いい加減、あんたに会ってみたかったし、白黒つけさせたかっただけなんだ」

「あん? 白黒?」

訝しげに眉を寄せたぬらりひょんに深い怒りの篭った嘲笑を向け、璃苑が口を開こうとした、刹那。

「そ、総大将ー!!」

「ご無事ですか先代!」

「なんですかさっきの畏れは!」

先ほど璃苑が吹き飛ばした襖から、わっさわっさと妖怪が湧き出る湧き出る。先陣をきったのは目付け役と名高い鴉天狗だろう。そして廊下で会った、首が浮いた男と傘を被った僧が一匹。その他いかにも妖怪然とした有象無象が部屋に飛び込んできた。

瞬時に張り巡らされた糸に気づき、璃苑はそっと唇に触れた。二本の指の間から吐き出された息は小さな鎌鼬となって、部屋中の糸のみを切り刻む。
それに気づいたのはぬらりひょんと璃苑、そして糸を張った首無だけであった。

「貴様いったい…!」

「やめな首無。こいつは大丈夫だ。手出し無用よ」

「しかし先代!」

「……話はここで中断だわね。ねえぬらりひょん、あたし、二代目に直接挨拶したいんだけど、よろしくって?」

「り、鯉伴にかい?」

「うん。あと若菜ちゃんだっけ? 嫁御にもちゃんと言祝ぎたいねえ。きっと愛らしい子が生まれるよ」

ふうわり、目を細めた璃苑に、部屋中の妖は勿論のこと、敵対していた首無さえも言葉を失う。それはまるで、天女の微笑みだ。
若い妖怪の腑抜けた様に、着物の袖に腕を突っ込んだぬらりひょんはやれやれと溜め息をついた。

2012.07.15 Sun 21:41
「お義父さんにお客様です」

「わしに、客……?」

好々爺然とした男の声に険が篭った。それに気づいているのかいないのか、若菜はええ、と朗らかに返した。

「空き部屋にお通ししようかと思ったんですけど、込み入ったお話があるとおっしゃったので、こちらにご案内してしまいました。……あ、すみません勝手をしてしまって」

「いや……、わざわざ悪かったのう。ほれ、入ってきなされ」

「はい、失礼しますね」

そう言って、若菜が襖に手をかける。
古いながらもよく手入れされた襖は璃苑の高鳴る鼓動と緊張を知る由もなくするすると開いていく。だというのに、その様がこまおくりのようにはっきり見て取れて、璃苑はその間に覚悟を決めた。

女は度胸、女は度胸、女は度胸。

仮にも神の後継たる自分が、臆すことなどあってはならぬ。妖怪屋敷で畏れてはならぬ。誰が許そうとも手前の矜持が許しはしない。
俯きがちだった璃苑はふっ、と小さく荒く息を逃がして力を抜き、片頬で笑んでみせた。

「お邪魔しますよ、ぬらりひょん」入るつもりはないのだろう、襖を開けたままの若菜に会釈してから、璃苑は畳を踏み締めた。
古風にも、薄暗い部屋照らすのは行灯が一つだけ。曖昧にゆらめく光を右に受け、脇息にもたれた妖こそ、長年会いたくて会いたくなかった男だ。

「……座んな。若菜さん、わざわざ案内ありがとよ」

「いえいえ、では私は夕飯の準備に戻りますね」

「ああ、よろしく頼むよ。わしは話が済んだら頂くよ」

「ちゃんと取っておきますね」

にこり。
見ている方が幸せになるような笑顔を残して、若菜は襖を閉めてその場を辞した。ぱたぱたと軽い足音が消えた途端、ぬらりひょんは穏和な笑みを消した。

「で? 何者だいお前さん」

すう、と細められた金の瞳が璃苑を射抜く。同時に璃苑の髪がばさりと舞った。放たれた畏れは、それほど強力だった。

「お初にお目にかかる、ぬらりひょんよ。あたしは璃苑、風来の璃苑」

ぬらりひょんの眉がぴくりと動く。呑んでいた煙が噛み締めるように吐き出される。

「風来の璃苑、ねえ……あちこちふらふらしてる風遣いが、何故この街(うちのシマ)にやって来た?」

「あたしを…、知ってるのかい?」

質問に答えるより先に、疑問がぽろりとこぼれ落ちた。じわり。胸に広がるのは焦燥にも似た期待。うまく働かない舌を動かしながら、ただただ金の瞳を見つめる。聞いていた容姿と全然違う男の、唯一通じたその瞳。逸らせないし、もとより逸らすつもりもなかった。
対するぬらりひょんは、何やら急に必死な様子になった璃苑に目をしばたいた。
調子を狂わされ、頬をかきながら口を開く。害がありそうでもない璃苑に内心では首を傾げた。

「いや、それこそ風の噂、じゃがの。お前さん、あちこちで妖怪のいざこざ収めちゃあ組に仲介してやってんだろう? 昔だが、うちの貸元でもそんなことがあったと聞いた気が……」

「そ、そう。それ、あたしだ。あたしゃ全国気ままに旅をしてんだけど、どうにもつまらんことでやり合う妖が多くてねえ。修業がてらってやつさ。そ、そういえば昔々に世話したやつが、奴良組だとか言ってたかもね」

「そうか、うちのが世話ぁかけたの」

「いや、いいんだよ。あんたんとこと知ってたわけじゃなし、ただの偶然さね」

恩に着せようなんて思っちゃいないから気にしないでおくれよ、と言いながら、璃苑は仄かな歓喜と当時の動揺を思い出し、乾いた声で笑った。

「しかし風来の。その様子じゃあ別にうちに喧嘩売りに来たんでも、入りに来たんでもなかろ?お前さん、なーんでまたうちに来たんじゃ?」

それもわし名指しで。
見当もつかないとキセルの灰を打ち捨てて、ぬらりひょんは腕を組んだ。入室させた折のような威嚇はもうしていない。必要がないと判断した。だからこそ、大昔に貸元にちょいと関わっただけの璃苑が、己を訪ねてくるのか分からない。

璃苑は上擦った声でそれは、と答えた。入室前の落ち着きなど、どこかへ行ってしまっていた。400歳も遠に過ぎた身で情けないにもほどがある。
あの、それは、実は、ええと、と前置きを幾度か繰り返し、ようよう璃苑は覚悟を決めた。

「あっ、あたしの姿に見覚えはないかい!?」

正座のまま、ずいっと身を乗り出して、胸に手をやる。
自慢じゃないが、璃苑の容姿は絶世と誉めそやされるし、何より母とうりふたつだ。
覚悟を決めたわりには遠回しだけれども、璃苑にはこれが精一杯であった。

「見覚え……?」

予想外の質問に、ぬらりひょんの口からぽろっと言葉が零れた。璃苑はそれにも律儀に頷きを返す。まじまじと見られることに対する照れと緊張から、薄闇にもわかる白磁の肌にほんのり朱がのぼる。
何とも愛らしいもんじゃ。
思いつつ、ぬらりひょんは記憶を探る。
どこかで、これを、これとよく似たものを見た気がした。
白磁の肌、白金の髪、空色の瞳。
まるで作り物めいた姿形に、稀にしか動かぬ高貴な表情。
なれども打ち解けてみれば、こどものように素直な顔をする。そう、あれは……。

「まさか、風神の血筋か?」

かあっ、と顔いっぱいに朱が広がった感覚がした。だが抑えようもなかった。抑える必要もなかった。
嬉しい。
今の璃苑にはそれしかなかった。
400年以上も昔、数えるほどしか合わなかった母を、この男は覚えていた。記憶の奥底から思い出した。それがひたすらに、ただひたすらに、嬉しいのだ。

「そう! そうだよ。あたしの母は季節の風を司る。昔あんたと知り合ったんだと言っていた。あたしはずっと、あんたに会いたいと思ってたんだ」

「風神が……。なるほどのう。ならお前さんの風遣いの名も納得じゃ。さぞ強いんじゃろうな」

カカと笑うぬらりひょんに、璃苑はコクコクと頷く。頭でも撫でてやりたいくらいだ。
だが同時に、疑問でもある。
これだけの妙齢の美女、しかもかわいげも気品もある相手にまったく欲もからかいも浮かばないのだ。
まだまだ若いつもりだったが、わしも老いたかのう……。
ため息をつきたくなりながらも、ぬらりひょんは無邪気に笑う璃苑に笑みを返した。

「そ、それで、その、今まで踏ん切りがつかなかったのに、今日ここに来た理由なんだけどねえ」

こほん、と咳ばらいをして璃苑は姿勢を正す。もはや緊張はしていないが、少し落ち着いて話したかった。

「あんたに言うなら今しかないと思ってね」

ぬらりひょんも、空気が変わった璃苑を真似て笑みを消し、無言で続きを促した。

「少し前、二代目が今の嫁をとったろう?」

「ああ、盛大にやったなぁ」

「そん時も行こう行こうと思ったが意気地がなくてね……、この街にゃあ近づけなんだ。で、今回さ。二代目のややができたってえじゃない。あたしゃ、これを逃したら死んでもここにゃ来れないと思ったのさ」

「なんだお前さん、もしやあの放蕩息子にたぶらかされたクチかい?」

だとしたら厄介だと思ったぬらりひょんは苦い顔をした。が、その顔はすぐ間抜け面へと転じた。

「あっはっはっはっは! あたしがあのガキに!? ないよ、ないない! あたしゃあんなんに靡くつもりは一切ないね!」

あんたの息子、馬鹿にするようで悪いけどさあ!
璃苑は美貌に似合わずカラカラと笑う。その清々しいしさに、ぬらりひょんも笑みをこぼした。

「はっ、関東妖怪の頭ぁつかまえてガキ扱いたぁ言うじゃねえか」

「ああ笑った笑っ! 悪気はないんだ。二代目はいい男だと思うよ。ただ昔っからそういう対象にはなりえなかっただけさ」

目を伏せて、微笑む璃苑は絵に描いたように美しい。親しみやすさは璃苑の心根ゆえだろう。

「今日は祝いを言いにきた。おめでとうよ、奴良組。風の神の名の元に、奴良組に幸多からんことを祈ろう」「そりゃあ、ありがとよ」

「そんでから…、それも本心だけど、それは口実なんだ」

璃苑はぐ、と口を引き結んだ。
ぬらりひょんも真剣に耳を傾ける。

「あたし、ほんとは…、ほんとは、父親に会いに来たんだ!」
「ほ……?」

言った。とうとう言ったぞと勢いこんだせいでつむった目をちらりと開けば、口を開いたまま瞬きを忘れたぬらりひょんがいた。璃苑はぬらりひょんが我にかえるまで辛抱強く待った。

「父に…、会いに……?」

やがて動いたぬらりひょんは、思いもよらなんだ、という声を出した。ぱちぱちと瞬きを繰り返しながら、どこか茫然もしている。

「そう、父に。ずいぶん昔から、母からここにいるとは聞いてた…。でも、あたしも若かったし、色々、あってさ。でも二代目にややができたってえし、来れ以上は引き延ばせないって、今日お邪魔したわけよ」

璃苑はまた、目の前の妖をじいっと見つめた。どう見ても、背も低く、頭ははげ上がっていて、根性がひねくれたような顔をした爺だ。母に聞いた色男は存在しない。だが、その畏れと金の瞳だけはこの男がかのぬらりひょんなのだと示していた。

「そうか…父をな……」

「ああ……」

よし、とぬらりひょんは景気よく膝を打った。

「明日うちで懐妊祝いの宴がある。もちろん幹部連中もほとんど来るだろう。そこでお前さんの親父を呼び出して話をさせよう! で? 肝心の親父は誰だい? 本家の者か、幹部連中の一人か……あの風神の相手だ! よっぽどの妖じゃろう」

「はっ?」

今度は璃苑が間抜け面を晒す番だった。にやりと笑うぬらりひょんを見て、そして呆れた。この爺、空気読めよと。
い、いや、いやいや、あたしもハッキリ言わなんだから悪いさね……。
そう反省し、璃苑はわざとらしく咳ばらいをした。

「あ〜、あれだ、ほら、ぬらりひょん」

「ん?」

「話が飛び飛びになっちまったあたしが悪かったよ」

「おう…?」

「あたしが、誰に会いにきたかは言ったよね」

「親父に会いに来たんだろう」

「そう。そんで、ずっと会いたかったのは誰って言ったよ」

「……、……………わしか?」

こっくり。

むくれた顔で頷いた璃苑に、ぬらりひょんは、かぱっと顎を落としたまま動けなかった。
「そ、そりゃあ」

「言っとくけどね」

はははと乾いた笑いをあげながら、何かの間違いではないかと言おうとしたぬらりひょんを璃苑は遮る。
あれほどにあたたかかった眼差しは今や、出会った当初の風神を目の前にしたかの如く、怜悧なものに変わっていた。

「あたしの言葉をお疑いじゃないよ…。狐の呪いに神の祟りも加えてやろうか」

ドンッ。

璃苑の放つとてつもなく重い畏れと烈しい風が室内で暴れる。行き場をなくした力は四方の襖をたやすくぶち抜いた。
ぬらりひょんは頬を引き攣らせ、冷や汗をたらした。畏れてはいないが、気圧されているのは間違いなかった。
空色だった瞳は、今や夜空の如く深みを増して煌々としている。それがまた璃苑の美しさを引き立てるのだから空恐ろしいものがある。きっと璃苑が敵意を剥き出しにすればするほど相手は魅入り、さらに璃苑に畏れるのだろう。
どこまでも母親似の璃苑にぬらりひょんは溜め息をつくのをぐっと堪え、笑う。

「わ、わしが悪かった。頼むから落ち着いてくれんかの…?」

「……二度はない」

「肝に銘じるとしよう。すまんのう。さすがのわしも、その、思いもよらなんだ」

ぽり、と片頬をかいて、ぬらりひょんは口を閉ざした。さてどうしたものかと考えるのは組のことだ。
二代目、鯉伴は今や妖の大将として誰にも負けぬ逸材だ。ぬらりひょんの時代より組は力をつけ、シマも拡がった。だが、とぬらりひょんは思う。
長いものに巻かれている輩のなかには未だに半妖よと鯉伴をよく思わぬ者もいる。そこに混じり気のない、それも正真正銘のぬらりひょんの嫡子が現れたならば、組の瓦解はたやすい。
しかし目の前の娘は、心当たりのある相手との、自分の娘。

わ、わしはどうすれば……!

「あの、ぬらりひょん?」

「なっ、なんじゃ!?」



2012.07.15 Sun 21:34
いつぶりに更新してるんだろうか……お久しぶりです三雲です。そして他ジャンル小話ですいません孫ネタが再燃してます、よ!




※ヒロインは450歳前後


ぬるい風が舞う現代の都に、女は足を踏み入れた。己が生まれ、物心ついてから400年以上が経った。夜も明るいこの街はけれども今まで旅したどの街よりも闇の気配が濃い。風に乗る妖気は多々ある愉快なれども、汚れきった空気だけは好きになれそうもない。胸を悪くしたものが田舎に療治にくるはずである。
女は眉をしかめて袖口で鼻を覆い、緑と排気ガスに溢れた公園を後にした。
目指すは浮世絵町。関東任侠妖怪の総本山である。



時代錯誤といえる大きな門、広い敷地、古い建築。それが今、目の前にある。400年の宿願ともいえる奴良家への訪問に、璃苑は柄にもなく緊張した。

ついにきた。きてしまった。

迷いに迷って、友人の死に際の頼みでさえも自分は動けやしなかったのに、風の噂を耳にすれば来ないわけにはいかなかった。その真偽に、関わらずとも。

璃苑は、らしくないや、と自分を鼻で笑い、にやりと顔を歪めた。
そして、時代錯誤なわりにきちんと設置されているインターホンへと指をのばした。



インターホンで用件を言ってしばし。出てきたのは可愛らしい娘だった。艶やかな黒髪に同色の大きな瞳。柔らかな表情はあの噂のおかげだろうか。

「お待たせしました」

「ああ、いいえ。こっちこそ忙しい時間に御免ですよ。で、いらっしゃいます?」

なんともない風に声は出た。
けれども心の臓はカタカタと震えていた。

まったく、神の子たる者が情けない限りだ。

「はい。先程ちょうど戻ってらしたんですよ。どうぞ」

「そう…。じゃあ、お邪魔、しますよ」

まだ着慣れていない様子の着物で、けれども淀みなく足を進める娘についていく。途中、小さな妖共や首の浮いた男に猜疑の視線を受けたものの、先導の娘――噂の奴良組二代目の嫁御の一言で事なきを得た。

これからが大事なのに、横槍をいれられるのは御免だよ。

そっと安堵の息をついて、璃苑は前を見据えた。
やがて、二代目の嫁御こと若菜はある襖の前で足を止めた。
ここか。
ぎゅう、と、喉の奥が締め付けられる。
情けなく思いながらも、もはや仕方ないのだとも思った。400年越しの決意だったのだから。

「お義父さん、すみません」

「おや、若菜さん。どうかしたかい?」

(続)

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