拝啓、宇宙で闘うお父さん

お元気ですか? 私は元気です。
この間、彼氏ができました。


〜愛の試練?〜


ダダダダダダダッ!!

物凄い轟音がしたかと思うと、突然万事屋の玄関が叩っ開かれた。(誤字にあらず)
「く〜そ〜天〜パ〜」
「うわっ! いきなりなんだよ、クソ禿げ!?」
「テンメェ、神楽ちゃんといくつ離れているんだと思ってんだ! こんのロリコンやろーーー!?」
銀時はいきなり現われた星海坊主に締め上げられた。
「俺じゃない、俺じゃないからぁぁぁーー!!」
「うわぁぁぁ、星海坊主さんっ!! 止めて〜〜」
新八の必死な制止を聞いてくれたのか、ピタリと動きを止めた星海坊主。だが……
「じゃあお前かッ!? 駄目鏡ぇぇぇーー!」
「僕でもありませんーー!!」
万事屋に悲痛な叫びが木霊した。
そこへ思い付いたように銀時が口を開いた。
「あー、多分だけど……」



一時間後。
ところ変わって真選組屯所。
「俺に……客?」
出先から戻ったばかりの総悟は待構えていた隊士にそう告げられた。
今日は特に約束した相手もなく思い当たるところもなかったが、とりあえず総悟はその人物が待つという客間へと向かった。
「お待たせしてすいやせん。沖田総悟で……」
「娘をたぶらかしたのは、お前かぁぁぁ!?」
謝辞の言葉を遮ったその叫びと叫んだ相手を見た時、総悟は全ての事情を悟った。

自分がすべき行動も……




「ただいまヨ〜」
星海坊主が来ていた時、偶然にも買い物に出ていた神楽が戻って来た。
「大変だよッ!! 神楽ちゃん!」
「なんネ、頼まれたものはちゃんと買ってきたアルヨ?」
「そうじゃなくて……」

何事か聞いた神楽は鼓膜が破れるのではないかとのほどの大声で叫んだ。
「銀ちゃんのバカァァ!!」
「な、なんだよ……銀さんは良かれと思って……」
つまり、こういうことだった。
突然やって来た星海坊主に神楽の彼氏かと詰問されたが、そんなものはいないと銀時たちは思っていた(彼等が知らないだけだが)。
けれど、止まない追求に銀時が「真選組の沖田らしい」と言ってしまったという。
(ちなみに裏話になるが、実は総悟の気持ちに気付いていた銀時が親心(?)として害虫駆除に星海坊主を向かわしたのだった)
「私をカモメにする気アルカァーー!?」
最後にそう叫ぶと神楽は家を飛び出して行った。
「それ、多分使い方違ううえにヤモメだからっ!! って……えええッ!?」




もうもうと砂埃が起ちこめる……

客間は見る影もなくなっていた。
ただ荒い息遣いが響く。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
(やっぱり、"コレ"じゃかなりキツいねィ……)
ピタッと総悟の額に傘の銃口が合わせられた。
「貴様………なぜ抜かない?」
星海坊主が問い掛ける総悟の手には鞘がついたままの刀があった。
「抜け、小僧」

「…………抜かねェよ」

「何?」
「アイツの大事な人に刀なんか向けるかよ……アイツの悲しむ顔は見たくないんでィ」

神楽がまだ父親を大事に思っていることを知っている。
それは時に総悟でも敵わないほどに……

だからこそ、星海坊主に刃(やいば)を向ける訳にはいかないのだ。


「お前……」
星海坊主がなにかを言いかけた時だった。
「総悟っ!!」
その場に息を切らした神楽が現われた。




神楽は真直ぐ屯所を目指して、ひた走った。
(……総悟!)

神楽が屯所の前に着いた時、そこには黒山の人だかりができていた。息も切れ切れだったが、神楽は近くにいた人に話かけた。
「あ、の……なにがあったアルカ?」
「なんでも真選組の隊長と、あの有名な星海坊主が戦っているらしいよ」
「そんなッ!!」
予想していたこととはいえ実際に起こってしまったことに、思わず神楽は悲痛な声をあげる。
「あ! お嬢ちゃん、そっちは危ないよ! 巻き込まれちまうよ〜」
神楽は構わず、戦闘が行われているであろう場所へと向かって行った。
そして、辿り着いたそこでは総悟が父に傘の先を向けられており、神楽は悲鳴をあげた。
「総悟っ!!」
「……神楽ちゃん」
「パピー! どうしてヨ!! 総悟がなにしたって言うアルカッ! パピーなんか……」
「神楽っ!」
大嫌いと続けようとした言葉は、総悟に強く名前を呼ばれたことによって飲み込まれてしまった。
「それ以上言っちゃならねェよ。それに……俺が悪りィんだ」
そう言うと総悟は改めて星海坊主に向き直った。
「ご挨拶が遅れましたこと、深くお詫び申上げます。お嬢さんとお付き合いさせていただいている沖田総悟といいやす」
はっきりと総悟は言い切った。しかし、星海坊主は黙ったまま。尚も言葉を続ける。
「神楽さんとは真剣に付き合ってます。なにがあろうと、俺が守ってみせます」



真直ぐに星海坊主を見て総悟は言う。その場は緊張感に包まれた。
「パ、パピー……」
緊迫した雰囲気に堪えきれなくなった神楽が声をかける。星海坊主はようやく総悟から銃口を外した。
「神楽ちゃん……」
「なに……」
「本当にこの男でいいのか?」
その問いに一瞬驚いた顔をしたあと、神楽はフワリと微笑んでみせた。
「……確かにコイツはどSで、根性曲がってて、いつも飄々としてるヤツアル」
「オイ」
「だけど、たまに優しくて、自分の正義ってのを持ってるネ……私、総悟のそんなとこ全部好きアル。好きでいられて幸せネ」
「神楽ちゃん……」
幸せそうに笑った神楽。それをじっくりと見つめた星海坊主は溜め息をついて言った。
「……おいお前、神楽ちゃん泣かしたら、ただじゃおかないからな! 肝に命じておけっ!!」
「はいっ! 必ず」




こうして事件は一件落着。屯所は星海坊主が修理費を負担して修繕された。

ちなみに真選組の客間が大破した事の顛末は、美しい恋物語として駆け巡り、総悟と神楽の関係は親しい間柄のみだけでなく江戸中に知れ渡ることとなった。


「う〜〜、恥ずかしいアルゥ〜」
「なにがでィ」
「みんな、私と総悟が結婚したみたいに言ってくるネ」
「俺はそのつもりで、親父さんに言ったけど?」
「……(カアッ)」


END



最初は銀さんがデートを目撃して殴り込むというのを予定していたのですが、
面白くなかったので、星海坊主さんに変えたところ筆が爆走してしまい、周囲どころか世間公認になった沖田と神楽ちゃんです。
週刊誌や新聞のアオリは『真選組襲撃!? 秘められた恋』とか『どS王子、熱愛交際宣言』とかがいいですね。
(どこの三流記者だ……)

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