〜Fresh Chocolete ‐恋のレシピ‐〜

丁寧に細かく刻んだチョコを湯煎にかけて、ゆっくり混ぜながら溶かす。
鍋に生クリームを入れて火にかける。この時、水アメをあらかじめ入れておいて溶かすようにするのがポイント。
ポツポツと表面が泡立ってきたら沸騰した証。火を止めて、チョコのボウルに少しずつ空気が入らないようヘラで混ぜ入れる。
オーブンシートを敷いた型に流し込み、冷蔵庫に入れて冷やし固める。その間に、使ったものを洗って片付けて、これから使うものを用意する。
余ってしまった時間は残った水アメを舐めて過ごす。「想いが伝わりますように」なんてえらく乙女チックなことを考えて選んだ赤い水アメはキラキラと輝いていた。


「神楽ァ、さっきから台所で何やってんの? しかも立ち入り禁止って……銀さん、いい加減のど渇いたんですケド」
やってきた保護者に慌てて一杯の水と、ちょうど持っていた水アメを渡して追い出した。
片付いてる時で良かったと、神楽は胸を撫で下ろした。

ホッと一息ついたところで作業再開。

まな板にオーブンシートを広げる。
取り出したチョコに軽く触れてみて、指にくっつかないことを確認する。ほど良い固さであることを確かめると思わず顔がほころんでくる。
シートの上に型から外して載せると、湯を使って温めておいた包丁を使ってカットする。
ココアパウダーを入れた容器の中に入れて、ココアをまぶす。怪力で潰してしまわないように一個一個丁寧に仕上げていく。


仕上がったら、ラッピング材を取り出す。赤いチェックの小さな箱にキレイに敷き詰めるように入れていき、最後にふたをして、ピンクのハートのシールを貼れば完成だ。

手早く片付けと出掛ける支度をすると、手提げ袋に箱を入れてそのまま家を飛び出した。
ツカツカとしばらく歩いてから、ようやく一時停止していた思考回路を作動させた。




まさか自分がこんなことをするなんて、思いもよらなかった。
去年の今頃は菓子会社の陰謀だと笑っていたのに、そういう人が出来たってだけでこの日が特別なるとは自分も随分乙女になったものだ。

そういう人……
――……総悟。

思い浮かべただけで、頬がカッと熱くなった。
(あああああ〜〜! なんか、もうダメかもしんないアルゥ〜)
「ドキドキのしすぎで、死んじゃいそーアル……」
心臓は痛いくらいに胸を打って、このままじゃどうにかなってしまいそうだ。
というか、頭から追い出していたとはいえよくもここまで作れたものだ。途中で投げ出さなかった自分を褒めてやりたいとさえ思う。
「女は度胸ヨ! あとは渡すだ…け……」

渡す……渡す!?


「……ムリ」
これを渡すということは、好きだと告白するようなものだ。いくら付き合っているとはいえ、天の邪鬼な自分にできるだろうか。
考えたらなんだか、その場に蹲りたいような気がしてきた。
だが、その時だった。




「神楽っ!」
(ああ、もうっ!)
心の準備なんて、全くできていないのに聞き慣れた声で呼び止められたのは。
神楽は覚悟を決めて今できる最高の笑顔で振り返ったのだった。


END



〜あとがき〜
バレンタインの素敵小説は他サイト様にあると思い、じゃあ何処にもないのってなんでしょうって考えた結果がコレです。
……。すみません!! 一応、うちの近未来設定ということで一つお願いします(爆)
ちなみに本当にこれで、恋歌流生チョコが作れます(笑) テンパリングなどあの子が間違えそうなことは除いてますが。
材料はチョコ200g、生クリーム100ml、水アメ10g、ココアは適宜で。
読んで下さった方、貰って下さった方、ありがとうございました。




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