「アーサー…」

絶えずカサカサと一定間隔で響く紙をめくる音。

「何だよ」

何、と聞きながらも、アーサーはフェリシアーノを見ることなく、ただただペンを持つ手を進める。

「そんな書類ばっかり相手にしないで、俺の相手してー?」

そんな彼をアーサーはチラリと一瞥し、

「断る。」

そう言って、また山積みの書類へと向き直る。

「なんでぇ。」

「クラウツの野郎にでも構ってもらえばいいだろう。明日までに全部終わらせなきゃいけねぇんだよ。」

(…何でルートが出てくるのさ。確かにルートは好きだけど、でも、それは…)

行儀良く座っていたソファーから立ち上がり、フェリシアーノはアーサーに後ろから抱きつく。

「…邪魔だ。」

「だぁって、昨日も一昨日も、一週間前だってずっとそればっかりで構ってくれなかったでしょー!」

俺はアーサーがいいの!

ぷぅ、と頬を膨らませてフェリシアーノは言う。

「文句ならあのクソ髭に言え。」

あいつのせいで俺の仕事が増えるんだ、とぼやく彼。

ゆっくりとアーサーの背後に回るが、再び書類に目を向けた彼は気付かない。

(流石に、いい加減我慢の限界なんだってぇ…。)

忙しいのはわかる、フェリシアーノ自身も【国】なのだから。

だけど。

「……っ!?」

…幾ら国と言えども、人の姿(尚且つ男の、だ)をしているのだ、人同様溜まるものだってあるわけで。

「なっ、お前何を、…ひぁ、」

「えー、だってアーサーが構ってくれないんだもん。いーよ、俺こうやって待ってるから、アーサーは仕事続けてて…ね?」

背後からピチャリと音を立てて右側の耳に舌を差し込めば、面白いように跳ねる体。

ペンを持つ手が震え、ポツリとインクが一滴白い紙に染みを作った。

あーあ、後で怒られるかなぁ、なんてぼんやりそれを眺めて、やんわりと耳たぶを甘噛みする。

「……ふ、昼間っから、盛ってんじゃ、ねぇ!」

耳まで真っ赤に染めて、与えられる快楽にふるふると震えながらも意地でもペンを離さない辺り、どうやら彼は抵抗を続けるらしい。

(ま、俺は別にいいんだけどねー)
(まだまだ夜まで時間はあるし)


さぁこの可愛い恋人は、一体いつまで保つのかな、なんて。


考えて旋毛に一つ、キスを落とした。


恋せよ青少年!





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