3z設定
沖神


雲一つない清々しい青空が頭の上に広がっている。
こんな日になぜドロドロした女の醜い嫉妬心をぶつけられなければならないのか。しかも、全く面識のない後輩に。
ふざけんじゃねーよ。お前ら誰だよ。こちとら日の光に弱いんだよ。総悟は早くパン買ってこないかな。とかいろいろ考えていたら、後輩Aが私を強くフェンスに押した。


「神楽先輩。なんで沖田先輩と付き合えたんですか?」


「そんな変なメガネつけて、素顔も変なんでしょう?」


「絶対私たちのほうが可愛いのに」


「……」


「なんかいったらどうです?あ、私たちにビビってます?」


「仕方ないんじゃない?こんなチビだし、幼児体型だから勝ち目ないしねぇ」


後輩三人がクスクス笑う。見てるだけで気分が悪い。


「……アル」


「え?」


「総悟はお前らみたいな厚化粧になんか興味ないアル」


「なっ!」


クスクス笑っていた三人の顔が変わった。目がつり上がって恐ろしい顔になっている。


「香水も臭いし、人を見た目でしか判断しない奴なんかに総悟は渡さないアル。だからさっさとどけろヨ」


「不細工なくせに調子のらないでよ!」


後輩Aの手のひらが私の頬をぶった…と思った。でもそれは後輩の思い人、総悟によって阻まれた。


「誰が不細工だって?おめェの事かィ?まさか神楽じゃねェよな?」


突然現れた総悟に驚きが隠せない様子の三人の顔は次第に赤らんでいった。
腕を捕まれている後輩Aの顔はトマトのように真っ赤だ。


「……神楽先輩のどこが可愛いんですか?変なメガネつけてるし、可愛い要素なんて一つもないじゃないですか!!」


後輩Bが叫ぶように言う。そんな大声で貶すな。頭かち割ってやろうか?


「神楽、メガネ外してやれ」


言われるままに外すと、三人の顔はいきなり青ざめた。なんで?


「これでわかったろィ。さっさと失せな。俺が本気でキレる前にな」


後輩達は悔しそうに私を睨んでから、屋上から走り去っていった。


「…おっせーヨ。ハゲ」


「ハゲてねェし。ほらメロンパン…と酢昆布」


「おお!!気が利くアルナ!」


「お前さ、知らねェ奴についていくなって何回言ったらわかるんでィ?」


「だって…無理矢理…連れてこられたアル」


総悟から貰ったメロンパンにかぶりつきながら言うとデコピンされた。なんで?


「なんで先に食ってんでィ。…これからは俺から離れんな。離れたらお仕置きな」


「…ゴホッゴホッ」


いきなりなにを言い出すんだコイツは。なにがお仕置きだ。今日だってこんな目にあったのはお前がさっさと購買にいくからだろ、とかいろいろ言いたかったけどメロンパンが喉に詰まって言えなかった。く、苦しい!!


「…ったく、これ飲みなせェ」


総悟から四角い紙パックの牛乳を渡された。それを一気に飲み干した。


「…ッハァ……ハァ…」


生き返った。あれもこれもコイツのせいアル!!


「あ、間接チューだねィ」


「ふざけんな!お前が変な事いうから死にかけたんだからナ!!」


「変な事って?」


「お、お仕置きとか!!」


「え?もしかしてイヤらしいこと考えた?俺はデコピンとかで済まそうと思ってたけど…そうかィ。神楽ちゃんはイヤらしいお仕置きをされてェのか」


ニヤニヤしながら手を気持ち悪く動かす総悟は本気でキモい。逃げたい。


「そんなわけないだロ!!お前と一緒にすんな!」


「神楽はツンデレだからねィ。ホントはそれを望んでるって事くらいわかってまさァ」


何にもわかってないのになんでそんなこといえるんだ。信じられない。なんでこんな奴と付き合ってるんだろう。


「キモいキモいキモい!!近寄るな変態!」


「そんなに誉めてもなんも出ませんぜ」


「誉めてねーよ!!バカだロ、お前バカだロ!!」


「ハイハイ。本気で逃げんじゃねェやィ。冗談でさァ」


総悟は一瞬で真顔に戻り、私の隣に座った。


「お前は冗談なのか本気なのかわかんないアル」


「お前に対しては九割は本気でさァ」


「……」


「ってことで」


喜んでいいんだか怒ればいいんだかわからない。九割本気ってことはほとんど嘘じゃないってことアルカ?それはそれで怖いネ。


ぺんっ


「痛!」


「お仕置きでさァ」


何事も無かったように澄ました顔でパンを食べる総悟にイラッとした。


「お腹減ったアル」


「ふざけんな。数秒前に食い終わったろィ」


「それよこせ!!」


「また間接チューしてェのかィ?」


「そ、そんなわけないだロ!!」


「半分だけだぜィ?」


なんだかんだ言ってパンをくれる総悟は優しいのかもしれない。


「あ、ありがとアル」


「可愛いねィ」


意地の悪い笑みではなく、優しく柔らかい笑みを浮かべるものだから、こっちも笑ってしまう。


「あ、ありがとアル」


「……」


総悟に見つめられ、どんどん顔が熱くなっていくのを感じた。


「なァ」


「…なにアルカ?」


「キスさせろ」


「命令かヨ。……別にいいけど」


「んじゃ遠慮なく」


目を瞑って唇が触れるのを待っていると……


ガチャッ


「はあ…ここでしかニコチン摂取できねーな」


「……」


聞き覚えのある声がして、目を開けると、タバコを口にくわえたトッシーがいた。


「あ、お前ら…」


「いいところに入ってきやがって土方コノヤロー!!」


バタバタバタバタ…


総悟とトッシーは屋上から去っていった。彼女ほったらかしにして男を追いかけにいくなんてあり得ない。パン食べてやる。


しばらくして総悟が帰ってきて、パンはどうしたと聞かれたので正直にこたえたら頭を小突かれた。小突かれただけとはいえイラッときたので鳩尾にパンチをいれてやり、闘いのゴングが鳴った。

こうやっていつまでも喧嘩するカップルでもいいかもしれない、と思った今日この頃である。


end

おまたせして申し訳ありませんでした!
真夏様が書き直ししろよコラッと思われたのならさせていただきます。お持ち帰りも真夏様だけにしていただきたいと思います。
リクエストありがとうございました!!


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