日直という名の雑用
それはクラスメイトのこの一言から始まった
「今日、日直だから宜しくね?」
突然の宣告。
今日は早く帰宅してあの男の子と約束した編みぐるみを作る予定だった
――――10分前までは。
日直といってもやる事は単なる雑用。
意外に器用で綺麗好きな完二にとってはまぁ構わないのだが、素直に日直なんかをしたら周りが驚くのは目に見えていた
「面倒くせぇ………」
日直の仕事といえば日誌、黒板の掃除等
「……はぁ……………」
ため息をつきながらも素直に日誌を書く自分にあの時見たシャドウの自分を思い出した
……あれは、俺だ。
認めたくなかった
全てを。
ぬいぐるみを作るのが好き
意外に器用な指先
縫いものが得意
―――女々しい。
拒否してきた自分だった
でも今は違う
認める事で仲間と出会い、大切な物を見つけた
そんな時教室のドアが開いた
「………巽くん?」
「あぁ………?直斗か?」
驚いた
「えっと……さっき担任の先生に会って…先生が“巽が珍しくサボらずに日直をしてる”って感激してたので…窓閉めくらいなら手伝えるかと思って」
大きなお世話でしたか?
困ったように首を傾げた
その姿は女の子だった
「いや……ありがとな。日誌も終わったからよ、後は窓閉めだけだ」
「じゃあしておきますから巽くんは日誌提出してきて下さい」
素直に甘え日誌をだしにいくと職員室はざわめきの渦だった
「わりぃ、遅くなったな」
時間は6時。
秋とはいえもう薄暗い夜道、女の子を一人歩かせる訳にはいかない
「………お前がよけりゃ、送ってってやる」
「……え、でもまだ明るいですし………」
「明るいっつっても街灯だろ。秋だぞ、ひィ落ちんのはえぇんだぞ!?」
「で、でも…………」
「いいから送らせろ!いいな!?」
その言葉に直斗は驚いたように小さく笑った
「…………はい」
………日直っつーのもたまにはいいかもしれねぇな