☆武田軍SS(佐助メイン)夏
 2018.09.16 Sun 20:44

武田お父さんと、佐助お兄さんと、幸村くん(弁丸さま)のお話です。
特に必要性が無かったので、細かな設定は決めていません。
さらりと読み流すなり、脳内補完するなり、よろしくお願い致します。

・現代パロ
・佐助視点
・上記三人一緒に暮らしている
・年齢差は上記参照
・武田軍で夏休みのお話
・家族っぽい武田軍大好き

以上のことにご理解が頂けましたら、本文へとお進み下さい。














『残暑お見舞い申し上げます』





夏の風物詩、と考えれば季節外れになるのだろうが、残暑厳しいこの季節、我が家の家庭用カキ氷器はまだまだ現役活躍中だ。
冷蔵庫の中のシロップやカルピスはややスペースを取っているものの、そこは自慢の大型冷蔵庫。さして邪魔にはなっていない。
今日も今日とて、帰宅を告げる元気な声を背後に、冷やしておいたお皿と氷を用意する。やや年季の入った器械に氷を入れ、力を込めてハンドルを回せば、お皿には削れた氷が降り積もる。少々腕が疲れはするものの、コスパの良いおやつだよなぁ。

手洗い・うがいを終えた旦那が合流し、二人で氷の山を作っていく。
「シロップ、好きなの出しといで。」
「うむ!」
冷蔵庫に駆け寄って、取り出したのは真っ赤なイチゴシロップ。赤色が好きだからか、一番馴染みのある定番の味だからか、旦那はイチゴ味がお気に入りのようだ。
使いすぎてしまわないように、かけるのは俺様の役目。軽く回しかけて、溶けて崩れた山に再び氷を足す。仕上げに頂上を赤く染めれば完成だ。
旦那の席に運びスプーンを手渡せば、目をキラキラと輝かせながら、いただきますと手を合わせる。あんまりに嬉しそうに、美味しそうに食べるものだから、うっかり俺様の分も作ろうかな、なんて気分になる。
もっとも、腕にはいまだダルさが残っている。瞬時に氷を削る労力を思い出し、そんな考えはあっさりと霧散する。

「佐助!」
突然の呼びかけに驚いて顔を上げると、旦那が氷を掬ったスプーンをズイッと突き出した。ちょっと、お行儀悪いですよー。
「そうではない!美味しいから、佐助にも食べて欲しいのだ!」
溶けてしまった、と一旦引っ込んだスプーンは旦那の口の中へ消え、また新たにイチゴ味の氷を掬いとる。
「ほら早くっ」
身を乗り出してスプーンを差し出す姿は、しつけ上は褒められたものじゃない。
でも、まあ。
カワイイし、うれしい。
二人っきりだし、大目に見ちゃう!
「あーんっ」
パクリとくわえたスプーンの先っちょは、甘くて冷たい。
うん、美味しい。
「ありがと、旦那。」
礼を言えば、にぱーっと口を横に広げて笑う。あーもーカワイイ。ほんとカワイイ!カキ氷を作った甲斐があった!
「見〜た〜ぞ〜…」
「!?」
「おぉ!お館様ァッ!」
一体いつからそうしていたのやら。海外出張を終え、時差ボケがひどいと部屋で寝ていたはずの大将が扉の陰からこちらを覗いていた。
「氷を用意せよ!」
あ、やっぱりそうなります?
幸い、大きい冷蔵庫は冷凍庫だってだだっ広い。氷のストックは十分にある。
「でも、自分で削ってくださいよ?」
「無論!ほれ、ついでじゃ。おぬしの分も出せ、佐助。」
「…ありがとうございます。」
甘やかされるの、いつまでたっても慣れないなぁ。嬉しさと気恥ずかしさを抱えながら、二人分の氷とお皿を用意すべく席を立つ。
その間、旦那はあわあわとしながら、俺様たちのやり取りと目の前のカキ氷とを忙しなく見比べていた。『一緒にカキ氷を作りたいけど、目の前の氷を食べないと溶けてしまう』。そんな葛藤が見て取れた。
なにか、フォローをしなければ…
「幸村っ!」
「は、はい!」
考えることは、一緒だったらしい。俺様が声をかけるよりも先にお館様が動いてくれたので、この場は任せてしまおう。
ちらりと様子を窺えば、「ワシにも一口くれ」とねだるお館様に、旦那が大喜びで「あーん」をしていた。ここにカメラがないのが悔やまれる。
もう少し眺めていたいところだけど、せっかく用意した氷が解けてしまっては本末転倒だ。
「ほら、大将!旦那のが溶けきる前に作っちゃって!」
「おう任せよ!」
うおぉぉー!!と、暑苦しい気合の雄叫びを上げながら、勢いよくハンドルが回される。熱気で氷が解けちゃいそう。あと、ハンドル取れちゃわない?大丈夫?
万が一壊れたら、次は手動ではなく電動のカキ氷機を買ってもらおう。…風情がないって一蹴されるかなぁ。
ぼんやり考えを巡らせている間に、氷は驚きの速さでお皿の中に奇麗な山を作っていた。
「大将、シロップは?」
「宇治!」
「だと思った!金時もありますよ。」
「流石は佐助ッ!」
で、俺様はカルピス。どうせ皆で食べっこすることになるんだろうし、それなら三人ともが全く違う味のほうが面白い。

宇治金時とカルピス。二つのカキ氷が完成した時、旦那の手元のイチゴ味は半分ほど残っていた。いつもよりゆっくり食べていたらしい。
じゃあ、改めて。
いただきます、と三つの声が重なって、まずは各自の持っているものを口に運ぶ。あとは、各々あっちこっちにスプーンが行き来する。
お行事悪いな。しつけ上よくないな。わかっているんだけど、でも、楽しい。

残暑厳しい今年の気候。
我が家のカキ氷器は、まだしばらく活躍することだろう。



END





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