刀剣:部下から上司になりました。
2018.07.28 Sat 08:20
クロスオーバー一発目。
・戦国BSR×刀剣乱舞
・現代パロ
・佐助視点
・捏造てんこ盛り。独自設定あり。
・当方、刀剣は原作未プレイです。アニメとプレイ動画との知識で書いています。
・説明不足な個所は、各々脳内保管をお願いします。
以上のことにご理解いただけましたら、本文へお進みください。
『部下から上司になりました。』
サニワ、なる者になれるらしい。
よほどの人手不足なのか、人がいても業務が追いつかないのか。趣味の範囲程度での働きでも構わないから、本丸を持って欲しいと懇願された。
金の入る趣味ってのはありがたいが、俺様はもう、戦場に身を置くつもりはない。丁重に断りを入れるも、とにかく一度、となおも食い下がる。
もういっそ、現場でやる気のなさとか適性のなさでも見てもらった方が向こうも納得するだろうか。
そんな気持ちで、短期の仮契約に至ったのだった。
最初の一振りにと選んだのは、赤い装飾が施された刀。武田の色だから、と意識した訳ではない。ただ、自然と手が伸びてしまったのだ。
そして、顕現。…なるほど、さして苦もなく出来るらしい。
それに、自身は刀を使わなくていいってのもありがたい。一応扱えはするけれど、俺様はお侍様じゃなかったから、刀にはあまり馴染みがないのだ。
「で、あんたが人擬き(ひともどき)の。」
「つくもがみ、ね。加州清光。よろしく。」
ふむ、このくらいの事では怒らないのか。一振り目に一言目の会話で嫌われれば、適正なしでお役御免になると思ったのに。残念。
(余談だが、後日この話を彼と思い出語りしたら、「怒りそうな奴もいるよ」と苦笑された。なるほど、俺様は最初の選択を間違えた訳だ。…といったら、間違えたんじゃなくて、あんたは俺たちの主になる運命だったんだよと笑われた。
なんていうか、結構打たれ強いよね、彼。川の下の子侮りがたし。)
顕現がすんだら、即出陣。一人きりの初陣って、ずいぶんスパルタじゃないかと思ったが、それが通例らしい。
そのまま戦場での動きや、負傷時の手入れ、新たな刀剣男士の鍛刀、と、一通りの流れを教わる。
初めての鍛刀で顕現されたのは、女の子と見紛う姿形をしていた。男士じゃなくって女士が出た!ほら、やっぱり俺様審神者に向いてないみたい!…と案内役の狐に喜々として報告するも、乱藤四郎は元からこの姿で、かつ、れっきとした男士だと説明された。こんなに可愛いのに男とか、なにそれ。詐欺だ。
「以上が通常業務です。いかがでしょう?審神者になっていただけますか?」
狐に問われ、はたと気が付く。
もし俺が断ったら、今、この場にいる二人(二本?二振り?)はどうなるのだろう?
適当な用事を言いつけて加州くんと乱ちゃんを退室させ、それでもなんとなく心配で、ちょいちょいと手招きで狐を呼び寄せる。耳元でこそっと問いかければ、狐は表情を曇らせた。
「残念ながら刀解となり、今のお姿も記憶もなくなります。」
おいおい、嘘だろ?
嫌々来た審神者体験だってのに、最後の最後にそんな後味の悪いことをさせる訳?彼らは結局、道具扱いなのか?
戦場で使われる道具、なんて聞くと、俺様ちょっと他人事と思えなくなっちゃうんですけど。
これ、もう、実質一択だ。人の姿して会話して、好意を寄せてくれる相手を消せって、平和ボケした現代人にはちょっとハードルが高い。
趣味程度でいい。お金がもらえる。お仕事内容は、(後々はどうなるかわからないけど)確かにそう大変ではない。断れば、彼らは稀な確立で得た生をほんの数時間で終えることになる。
楽しみも何も知らずに、幕が下りるのだ。
「…いーよ、わかった。契約書ちょーだい。」
数百年前の自分だったら、容赦なく断っていたんだろうな。面倒はごめんだって。…下手すりゃ、わざと折るくらいしたかもしれない。
けど、今の俺様にゃそれは無理だ。
用事を終えた二つの頭が、ひょっこりと仲良く障子からのぞく。
「…ってことだから、よろしくね。」
署名した契約書を振って見せると、二人は、今日一番の笑顔でもって頷いた。
END
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