再会、初対面(幸佐)
 2017.06.25 Sun 22:30

・幸村×佐助
・転生現代パロ
・佐助視点
・互いに記憶なし

以上のことにご理解頂けましたら、本文へとお進みください。













『再会、初対面』





「会いたかった。」
男と向かい合い、するりとこぼれた言葉に自分で驚く。
「あぁ、俺もだ。」
答えた男もまた、驚いた顔をしていた。
そうして、改めて。二人で「初めまして」と挨拶を交わした。

会いたかった、などと言ってはみたが、久しぶり、とは違う感覚だった。
そりゃそうだ。なんせ、相手とは間違いなく初対面なのだから。SNSで顔を知らずにやり取りをしていた、なんて事実さえない。
けれど、やっと会うことが出来たのだと、心の底から湧きあがる歓喜と安堵があった。
それは、初めての感覚で。
聞けば、相手も同じ気持ちだったという。
ますます不思議だ。そんな偶然もあるんだな、と、二人で笑いあった。

『失った半身を取り戻したようだ』
『なくした影が戻ってきたようだ』
そんなことを互いに語る。
一緒にいて、落ち着く。
それがまるで当たり前のようで、今までどうやって一人で生きてきたのか、もうわからないほどだ。
なんだか、恋愛にも似ていると頭の片隅で考えた。

少し変化が訪れたのは、出会って半年も過ぎた頃だったろうか。
そわそわと、相手にどこか落ち着きがなくなった。その様子が気になった俺様も、ちらちらと忙しなくそちらを盗み見るようになった。
そわそわ。ちらちら。
妙な距離感、妙な空気。
こそばゆいのだけど、不思議と居心地の悪さは感じない。
「ねぇ、真田の旦那。」
意を決して、問うてみようと試みれば。
「さ、佐助!好きだっ!」
突然、告白された。
「うん、俺様も。」
返事は、するりと口から流れ出た。
俺も、旦那も、目を丸くしていて。状況といい、会話といい、まるで初めて会った頃のようだった。

そわそわも、ちらちらも、互いを意識しての行動で。
いつから好きだったんだろう、なんてのは、考えるだけ無駄な気がした。
きっと、出会った頃から。
もしかしたら、それよりもずっと前から。
きっと、ずっと、好きだったのだろう。

「…ま、今までもずっと一緒だったし、今更何が変わるってこともないだろうけど。改めて、よろしくね。旦那。」
笑って手を差し出せば、旦那は片眉を吊り上げた。
おや、と思う暇もなく手を掴まれて、強い力で引っ張られる。突然のことに抵抗も出来ず、顔面から旦那の胸にぶつかった。
「ちょっと…!」
なにすんの、と抗議をして顔を上げれば、常にはない距離に鳶色の瞳が見えた。
(え、近い。)
思ったときには、唇が重なっていた。
それは触れてすぐに離れていったけれど、体はいまだ腕の中にとらわれている。呆然と見つめるその先で、ぷいっと顔を反らされる。無防備にさらされた耳は、真っ赤に染まっていた。
「か、変わるだろう!こういうことを、…す、する仲だ!」
こういうこと。
気付いていなかった訳でも、理解をしていなかった訳でもないのに。改めて確認されたことで、実感を伴って認識する。
途端、顔も体も燃えるように熱くなった。なんだろう、たまらなく恥ずかしい。
「そ、そうだよね…うん、そういう仲だ…。」
初めてお付き合いをする中学生でもあるまいに。くそ、なんだこの甘酸っぱさは。なんだって、こんな…俺様らしくもない。
頭の中は既にパニック状態だというのに、ぎゅうぎゅうと強く抱きしめられて余計に気が動転する。
それでも、どうしようもなく幸せだった。

一つ大きく息を吐いて、相手の背中に手を回す。少し迷っておずおずと服を握り込めば、ちらりと旦那の視線が戻ってきた。
好機とばかりに背を伸ばし、やや強引に唇を塞ぐ。
さっきのお返しだ。少しだけ、長く味わった。
「これからもよろしくね。旦那。」
再び告げた言葉に、今度こそ旦那は頷いた。
「覚悟しておけ」と、彼らしからぬ挑発めいた言葉が添えられる。
望むところだと笑って返せば、旦那はとても綺麗に微笑んだ。

あぁ。この人も、幸せだと思ってくれている。

胸が、幸福と充足感で満たされる。
泣きたくなるほどの喜びを、俺はこのとき初めて知った。




END






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