故宮の色
 2011.05.21 Sat
「終わったぜ」
「そうか。吐いたか?」
「ああ。『5月22日、午前2時、ボローニャの○○ホテル、205号室、5人』だそうだ」
「確かか?」
「ああ、嘘はつかせねえ」
「そうか。人質は?」
「地下室ん中で酩酊してる。今ソルベとジェラートが車でその辺に捨ててくれるってよ。ああ、……今いった車だ」
「わかった。上出来だ。お前はもう寝ていいぞ」
「その前にシャワー浴びるぜ。お前は?」
「俺はまだいい」
「おいおい、お前昨日も入らずじまいだったじゃねえか。今日の寝ずの番はギアッチョだぜ。任せてさっさと寝ろ」
「いや、あの二人が帰ってきてからでいい」
「あいつらは今日は帰ってこねえ。足がつかねえようにそのまま適当な場所にドライブして来いっていったのは手前じゃねえか、リーダー」
「そうだったな。とにかく、俺はまだ入らない。プロシュート、一人で入ってこい」
「……何か後ろめたいことでもあるようだなあ」
「そんなことはない。ああ、ないさ」
「いいや、手前の目は嘘をついてる。俺の方を見ようともしねえ」
「そんなことは、」
「あるな」
「……」
「勃ってて立てないとか?」
「それはない!」
「ああ、本当だ。冗談も通じねえのか、カタブツ」
「いいから寝るかシャワーを浴びにいくかどっちかにしたらどうだ」
「はいはい。と言いてえところだが、折角だから少し話そうぜ。なあ?」
「……ああ、いいぞ」
「どうやって聞き出したか興味ねえか?」
「何に、」
「人質に」
「……」
「無言は肯定とみなすぜ。一言でいうなら、自白剤を使った。もっと詳しくいうなら、アルコールをちょっと変わった方法で飲ませて今のは自白剤だと暗示をかけた。どうだ?」
「やり方としては間違ってはいない。しかし、ザルだった場合にはどうするつもりだった?」
「言ったろ、変わった方法で飲ませたって」
「あえて聞かないでおこう」
「賢明な判断だな。俺はゲスじゃあねえが、目的のためにはときに手段も選ばねえ」
「お前らしいな。それより、どうしてそんなことを話した?」
「あ?暇だからに決まってんだろ」
「いや、お前のその口元は嘘をついてるな。俺の前でうそをつくときは、必ず右の口端が上がる」
「あー、降参降参。まあ暇だっつうのも10%くらいは真実なんだがよう」
「それで」
「急くなよ。まあ、今回は生憎麻薬の類を持ち合わせちゃいなかったからアルコールを使ったって話だ。どうしてそうしたかって、手前からヒントを得たんだよ」
「どういうことだ?」
「手前がベロンベロンに酔っぱらってた時の話だ。お前が珍しく素直でなあ」
「……記憶にない」
「だろうな。つい先日の話だがよ、アジトで二人で飲んだ記憶は?」
「それはある。あるが、起きたら二日酔いだった」
「じゃあ、飲んでる最中の話は記憶にねえんだな」
「ああ。……いや、そうでもない。確かお前と仕事の話をして、……」
「だいぶ最初の頃の話だな。そのあとのことは、」
「覚えがない。……何か迷惑をかけたか?」
「何も迷惑なんてかけちゃいねえ。むしろご馳走さまってな」
「ご馳走さま?」
「ケッ。覚えてねえならいい」
「待て、どういうことだ?」
「シャワーに行ってくる」
「おい、待て!」
「折角夜更かしするなら、もう一度酒でも飲もうか?せいぜい酔っちまわねえように気をつけな」
「いや、おい待て!まさか俺はお前に何か、……したとか、」
「何も。ほら、話は終わりだ。ご苦労さん」
「おい!……何したっていうんだ」





「立ち聞きなんて趣味が悪いな」
「そ?たまたま居合わせただけなんだけど」
「嘘ついてんじゃねえよ。手前は嘘をつくときに髪を耳にかける」
「ありゃりゃ、参りました。あんた顔真っ赤だよ」
「うるせ」
「嬉しかったんでしょ、あの時。まさかノンケの可能性の方が高い思い人に手出されるなんて、ってね」
「たかだか少しキスしちまったってだけだぜ」
「それでも嬉しいくせに。ねえ、リーダーじゃなくて俺にしなよ。俺なら望みがあるじゃん、両刀だし」
「冗談じゃねえ」
「冗談だよ。ま、あんたも女だったら望みがあったのに。顔も悪くないしさ、もったいない」
「うるせえ。男に生まれたからには男として生きるのが常だ」
「男しか愛せないくせに」
「……」
「怒んないでよ」
「呆れただけだ」
「ねえ、シャワーいくんでしょ?俺も一緒に入っていい?」
「気分じゃねえ」
「つれないなあ。性欲処理も一緒にしてあげるのに」
「気分じゃねえ!」
「……わかったよ。じゃあね」
「手前もさっさと寝ろ」
「あんたのあとにシャワー入ってからね」
「だったら地下室の片づけして待っとけ」
「またやりっぱなしにしたの?酷えの」

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