ボルデロ・ダービー
 2011.05.22 Sun
「何か、見えますか?」
「え、」
「向こうに何か、見えますか?」
「……何にも。街並みと遠くに水平線しか見えないよ。ああ、白い船もある」
「そうじゃなくて。さっきから上の空ですよ。そろそろ仕事しましょうか」
「……フーゴ君。時に君は運命というものを、」
「信じますけど。言いてえことはそれだけですか?なら口を噤んでそろそろ書類を上げましょうか。あとがつっかえてます」
「やる気が起きないよ。フーゴ君、マッサージ」
「何言ってんですか。リーダーにどやされても、此間みたいに庇ってあげませんからね」
「えー」
「えー、じゃねえですよ。ほら、メローネ」
「わかったよー。……でさ、」
「どうして君はこういうときだけ途端に饒舌になるんですか」
「ご褒美!」
「は?」
「終わったらご褒美ちょうだい」
「何言ってんですか?」
「ね、いいでしょ」
「終わったらの話ですけどね」
「欲しいもの、っていうかしたいことがあるんだ」
「へえ」
「アムステルダム行こ!」
「はあ!?」
「わかる?ア・ム・ス・テ・ル・ダ・ム。オランダのさ、」
「いや、わかっちゃいますけどッ。けど、どうして急に」
「することなんて一つじゃん。極上の女とセック、」
「言わなくてよろしい!」
「なんだよー、なにも叩くことないじゃん」
「叩いちゃいませんよ、頭の上にハエがたかってたんで叩いただけですから」
「叩いてんじゃん」
「そんなことどうでもいい。まさかとは思いますが、女のこと考えてるから今の今まで仕事に手がつかなかったとでもいうんじゃねえだろうな?」
「そのまさかだよ」
「否定しろ!……全く、僕は知りませんからね。とっくに仕事を終えてオフだっていうのに、君のお守に忙しいんだ」
「うーん、さすがに抜いてって言ったら怒る?」
「怒る怒らない以前の話ですよ。パープル・ヘイ、」
「わー、ごめんごめん!謝るから許して」
「許す許さない以前の話ですね。とりあえず、僕は女じゃない」
「みりゃあわかるよ。やだね、こんな腹筋ムキムキの女なんて。俺は顔が埋まるくらいムチムチか、骨が浮き上がるくらいのガリガリが好き」
「君の好みなんて聞いちゃいませんよ」
「ていうか、ナイスバディの褐色の女の子がフーゴ君みたいな恰好してくれれば最高なのにな」
「僕で変な想像しないでください。気持ち悪い」
「もういいや、フーゴ君でも」
「妥協みたいな言い方だといやに腹立ちますね」
「ああ、そうそう、此間いい雑誌見つけたんだけど、見る?」
「見ませんよッ、間に合ってる!」
「そんな慌てなくてもいいじゃん。ありゃりゃ、もしかして、」
「パープ、」
「ごめんなさい」
「とにかく、さっさと仕事終わらせてくださいよ」
「じゃあやる気が出るように仕向けて」
「そうですね、終わったらご褒美をやりましょう」
「まじで?ありがとー」
「そりゃあいいことしてやりますよ。君の部屋をアムステルダムの飾り窓にしてやります。どうですか、君みたいな極上の変態を相手する女の気持ちになれますよ」
「あ、いいねそれ。楽しみにしてる」
「言いましたね?ならさっそくやってやりましょうか。飾り窓にバイクもキッチンもいりませんよね」
「え、それは困るよ」
「そういうことですよ。身体はって金がえられりゃいいってことだろ?」
「何言ってんのさ。フーゴ君ってば冗談きついね」
「やる気になりましたか?ならなかったらさっそく君の家の、まずは、そうだな……全ての飲料をローションに変えてきます」
「え、マジで」
「マジですよ」
「そりゃ困る。結構高い酒もあるんだけどな」
「残念ですが、その酒も今夜からローションですね」
「わかったよー、やるから勘弁して」
「はいはい」

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