終点
2011.04.25 Mon
「リゾット、暇」
「そうか」
「他に気の利いた返答はなかったのか?暇だ」
「窓の景色でも見ておけ。それか書類にでも目を通しておくことだな」
「持ってきてねえよ、んなもん。俺は鞄を持たねえ主義だぜ。それにさっきからずっと同じような景色じゃねえか、いい加減飽きた」
「それを俺に言ってどうする。……書類、持ってこなかったのか」
「なあ、暇。トランプとかねえの?」
「遊びに行くわけじゃないんだぞ」
「暇だっつってんだ」
「……わかった、しりとりをしよう。しりとり」
「リネン」
「……」
「つまんねえよ」
「そんなこと言われても」
「あーあ、こんなことならついてこなきゃよかったぜ。わざわざ国境を電車で越えて人殺しなんてな」
「だから言ったんだ、遠いぞって」
「こんなに時間かかるとは思わねえよ。鈍行でおまけに遅延だとはな」
「書類に書いたじゃないか、ルートも」
「お前の走り書きは読めねえんだよ」
「……いや、タイプしたはずなんだが」
「けっ!付き合ってらんねえよ。もし俺がお前の男だったら絶対退屈させねえがな!」
「男じゃないのか」
「たとえばの話だよ。手前が女だったら、そうだな……旅の話やら何やら、絶対に飽きさせねえ」
「他の女と行くつもりか」
「他の女がいりゃあな。生憎、……今は手前だけど」
「実のところ、俺は楽しんでるぞ。旅してるみたいだし、お前の寝顔も見れたし」
「ふーん」
「実際は仕事だけどな。お前を誘ってよかったと思ってる」
「……ふーん」
「ついたら何か食べようか。俺だってお前を飽きさせないプランぐらい考えてるさ」
「……あっそ」
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