悟史と詩音

(気持ち大人め)




月がふたりを照らしてる。
「悟史、くん」
細めに見えていた腕も、薄いと思っていた胸板も、抱かれてみればちゃんと男の子らしく逞しくて、どきどきしてしまう。小さく彼の名前を呟けば、彼の腕が強く私を抱き締めて。鼓動がとろけあう。目を閉じて、心地よいそのリズムを聞いていると、彼の唇が額に降りてきて、くすぐったい。
「好きだよ」
「はい」
「大好きだ」
「私もです」
ぽつり、落とすような会話をひっそりと交わせば、また微睡むような沈黙が訪れる。それが、心地よい。小指を絡めてみる。じんわり伝わる熱が、愛しくて。
「悟史くん」
「なに?」
「生まれてきて、良かったです」
「そっか」
「はい」
「僕も、…君に会えたから」
「はい」
「生まれてきて、良かった」
月明かりに照らされた彼の頬がほんのりと赤くて。
ああ、大好き。
私は彼の首に手を回して、抱き着いた。優しく唇を寄せてくる彼の、不器用に触れる手の平の温度に、心がいっぱいに満たされた。

ずっとずっと、永遠に一緒になんて、夢みたいなことは言わないよ。
いつか死が私たちを別つまで。ううん、もしかしたらもっと早いかもしれない。普通の恋人のよくある別れが、私たちを別つまでは。こうやって貴方の心臓の音を、聞かせていてね。





(BGM:月恋歌)

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