今日は一段と寒い。マフラーに顔を埋めて、はぁと息を吐くと白く、それがふわりと空に舞う。駅のホームはもうだれも、いない。皆、誰かのもとへ帰ったのだろう、きっと。手袋をしないてのひらが、ひんやり、冷たかった。
粉雪が、待っていた。すこし寂しくなる。故郷が、懐かしい。家族が、友達が。いま目を閉じればきっと、涙が出てくると思う。少し寂しくて、そして。大きな、幸せ。
「圭一くん!」
駆けてくる、彼女。可愛らしい薄ピンクのコートが雪の舞う景色に溶けて、天使みたいだった。俺は笑って手を振る。幸せで涙が出そうだ。ことしもこうやって君と、聖夜を迎えられるから。
「ごめんね、遅くなって…」
「別に、いいんだ、」
別に、いいんだよ。君が、存在(い)てくれれば。―いて、くれれば。

愛しいレナの手を握る。レナは恥ずかしそうに笑って、俺の手を握り返してくれた。
電車が、来る。さあ、帰ろう、俺たちの家に。部屋をストーブであたたかくして、いつもより少し豪華なごはんを、二人で作ろう。そうして、プレゼントを交換して。嗚呼幸せすぎて、どうにかなってしまいそうだ。
「大好きだ、レナ」
「レナもだよっ」
ふたりだけの車両のそとには、キラキラと、街。
今夜は、聖夜。




粉雪が舞うホーム





(title by ひよこ屋)

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