「寒い、ですね、悟史くん」
「うん」
冬の、一月のおわりごろ。
悟史と詩音。都会に出てきてからお互い、別々に住んでいても頻繁に部屋を行き交いしていた。
今日は久しぶりのデート。詩音はとてもご機嫌だった。クリスマスに悟史がくれたお揃いのペンダントを首に飾って。悟史もまた、クリスマスに詩音があげたマフラーを首に巻いていた。
「えへへ、悟史くんっ」
「何だい?」
「何もないですけど、悟史くん大好きですっ」
詩音の鼻の頭は真っ赤になっていて、ほっぺも真っ赤になっていて。そんな詩音がかわいくて、悟史はちゅ、と詩音に口付けた。
いつも恥ずかしがる詩音が、ぎゅーっと抱きついてきたから、悟史もぎゅーっと抱きしめ返した。
「あ、悟史くん、雪ですよ」
「ああ、本当だ」
雪がはらはらと降ってくる。婚約したての幸せいっぱいの二人を、祝福しているかのように。きらきら光るそれは、ふたりの肌で一瞬きぃんと冷たく存在を主張したあと、夢のように溶けていった。
「雪は、好きです」
「うん」
「雪がふるおかげで、悟史くんの温度をもっとたくさん感じれるから」
「…うん。…僕も雪、好きだよ」
「どうしてですか?」
「詩音が雪、好きだから」
なんですかそれは、なんて言いながら詩音は真っ赤になる。それは真っ赤なしるし。悟史に首ったけだという、しるし。
「詩音、だいすきだよ」
「私もですっ」
かじかんで冷たい詩音の指先を握り締め。僕の温度で少しでもあたたまればいいと思いながら、悟史は再びちゅ、と詩音の唇に愛のシグナルを送った。