2…【運命られた…】
2010.05.05 Wed 21:33
「ただいまぁ〜・・・」
真っ暗なアパートの玄関で靴を脱ぎ手探りで電気のスイッチに手を伸ばした
『あ!!そういえば!!』部屋の電気をつける事を私は急に躊躇した
それは…いつか見たテレビニュースか女性週刊誌なんかで防犯特集の記事がありその中の1項目に[女性の一人暮らしの帰宅後、部屋の電気を直ぐにつけるな!!他人に“私がここに住んでます…”と教えているようなものだ]という項目があった事を思い出し、私は真っ暗な部屋の中、手探りで床に座り10分程待ってから電気をつけた
『はぁ〜・・・なんか馬鹿らしい・・・』防犯の為とはいえ真っ暗闇の部屋でボーとしている自分に虚しさを感じため息をした
ベッド近くの床灯台に置いてある目覚まし時計の針はPM11時を回ったところだった
『さて・・・シャワーでも浴びて早く寝よ』いつもなら少しゲームをしてから入眠するが、明日は日直でいつもより早く出社をしなくてはいけない為、仕方がなく寝る事にした
※夢世界…
急な寝苦しさに目を覚ました
『へ!!?此処・・・何処?』自分愛用のベッドに横になっていつものように寝ている…と思った私は何故か特急列車らしき乗り物の座席に座って寝ていたようだった
「お客様・・・大丈夫ですか?」
と客室乗務員と思われる女性から声を掛けられた
どうも私は他の人から見ても寝苦しそうにしていたようだった
「は、はい・・・だ、大丈夫です」
愛想笑いを浮かべながら、客室乗務員が差し出したおしぼりを受け取った
「ありがとう・・・」
と再び客室乗務員に視線を移すとニコリと満面の笑顔を浮かべ"「では…何か御用がありましたらなんなりとお申し下さい」"と一言言った後、私が座っている座席から離れていった
躾の憤った客室乗務員だな…と感心しつつも私は一つの事に疑問を感じた、それは笑顔の素敵な客室乗務員が着ていた制服のデザインだった
『ん・・・?あの制服、一昔前の制服じゃなかった?』私は腕を組みつつ小首を傾げていた脳裏に一つの不安が浮かんだ
『も、もしかして・・・』不安が過(よ)ぎった瞬間、私が座っている席の後部座席の方からけたたましい男の悲鳴が聞こえた
『な、なに!!?』と立ち上がり後部座席の方を見ようとした一瞬、私が乗っている特急列車が大きく揺れ私はバランスを崩し窓硝子に両手をつけた瞬間、私の耳に凄まじい列車の音に間切れて歌声が聞こえた
『歌声・・・?』と窓硝子に耳を当てた瞬間、歌を歌っていたと思われる人物と一瞬目があったような気がした後、再び列車内にけたたましい悲鳴が充満し列車は再び大きく揺れ凄まじいスピードで一心不乱に走り始めた
※現世界…
『身体中が痛い・・・』何かに打ち付けられたような痛みで私は目が覚めた
『夢・・・?』今の今まで見ていた夢のリアルさに私は少し戸惑いを感じ、ベッドの上から身動きが出来ないでいた
『頭が重い・・・』長年愛用のベッドは私が動くたびにギシギシ…と音を立て、ベッド近くの床灯台にある目覚まし時計は持ち主を叩き起こすような勢いで私を追い立てる
私は仕方がなく…ギシギシと音を立てながらベッドから降り目覚まし時計の音を止めた
1時間後…
私は軽く朝食を食べ、身嗜(みだしな)み程度に化粧をした後、アパートを後にした
勤め先の大学病院まで徒歩で約10分程度の道のりを、私は大きなあくびをしつつ歩く…昨夜見た夢のリアルさに圧倒され頭が重い
『それにしても変な夢だったなぁ・・・』と一人小首を傾げながら、夢の場面設定が何かとよく似ているような気がして仕方がなかったがいまいち“何か”がよく分からず頭の中の記憶を辿るしかなく視界に勤め先の病院全体がはっきりと見る事が出来る頃には、昨夜の夢の奇妙さは頭の片隅に追いやられ思い出す事はなかった
誰もいない朝の女子更衣室で制服に着替え更衣室を後にした瞬間、言葉では言い表す事の出来ない奇妙な視線を感じ背筋にゾワリと寒気を感じた
“!!?”振り向いてはいけない…と誰かが私に教えているような気がしつつも私は怖い物見たさに後ろをゆっくりと振り向いた
「っ!!?」
声が詰まった…振り向いた先の光景は、先程感じた“恐怖”を微塵に感じる事なく昨日新しく就任した橋倉主任が片手を上げ“「おはよう!!東さん」”と笑顔で気やすく私に呼び掛けていた
私は軽く頭を下げ
「お、おはようございます!!橋倉主任」
橋倉主任は笑顔を崩さず
「昨日もそうだったけど・・・今日も早いね!!」
と言う橋倉主任に私はどう返事をしたらいいのか分からなかった為“「は、はい…」”と愛想笑いを浮かべ橋倉主任の目に視線をあわせ…そして、分かった
私は基本的に男の人は苦手だが橋倉主任のわざとらしい笑顔(作り笑顔)を目にしたとたん、“苦手”意識のレッテルを瞬時に貼ってしまったようだった
「東さん・・・今日は宜しくね」
「は、はい・・・」
と愛想笑いを浮かべつつ、口頭で主な日直の仕事を一通り教えたながら、心情では大きなため息をしていた
本来、日直は事務員一人で担当する…ある程度は口頭でも説明可能だが、他にも細々と目立たない仕事もある為、人それぞれ独自のやり方がある
「東さん・・・君は教えるのが上手だね
本社とはやり方が違うから戸惑ってしまうところは多々あるけど・・・東さんが優しくフォローしてくれるから助かるよ!!」
と言う橋倉主任に今度は苦笑いで返事をした
『心にもない事を言って・・・』と私の心の中では、ますます橋倉主任を"苦手"意識過剰になっていた
日直の仕事が一段落終わる頃、通常勤務の事務員達が続々と出社し始めた
私と橋倉主任はひとまず、それぞれの仕事に戻る事にした
数分後…
席について仕事時愛用のパソコンと睨めっこしている最中、米川事務長から手招きをされた
「東君、今朝はご苦労様
橋倉君からも君から手とり足とり教えてもらって嬉しかったよ・・・と言ってくれてね、私は君を選んで本当によかったよ!!東君、これからも橋倉主任の部下として彼を支えてあげてほしい・・・頼むよ」
“「は、はい…」”と返事をした後、軽く頭を下げ席に戻った
席について直ぐ…これ程“憂鬱”を感じない日はないな…と改めて心の中で何度目かのため息を吐いた
日直最後の仕事は事務所の戸締まりだ
事務所の壁掛けてある時計の針は只今PM7:00を回ったところ、今日は残業をする人もなく帰り仕度に専念している
私も日直の仕事を最終チェックをし後はこの鍵で鍵を掛けるだけ…と仕事愛用の鞄と鍵を持ち、再び時計の針を見た
「東君、日直お疲れ!!」
と私の肩を軽く叩き米川事務長は帰って行った
私も軽く頭を下げ“「お疲れ様でした…」”と言って見送った
『さてと・・・』私は事務所に鍵を締め鍵専用の場所に置き一息ついて直ぐ…背筋にゾワリと寒気を感じた、それは…まとわり付くような視線だった
「っ!!?」
再び声が詰まる…今度は今朝とは違い振り向く事は出来なかった
「東さん、戸締まり終わったよ」
背後から橋倉主任の声が電気の付いてない薄暗い廊下に響いた
橋倉主任は私が戸締まりをしたところを…もう一度確かめたようだった
私は一瞬息が詰まった後、引きつる表情に一生懸命笑顔を浮かべ
「お疲れ様でした!!橋倉主任」
と深々と頭を下げたまま
「橋倉主任、私・・・服に着替えてから帰りますので先に帰っていて下さい
では、今日は本当にお疲れ様でした」
と言う私の心を橋倉主任は知ってか知らずか
「お疲れ様・・・東さん、今日は少し遅いからアパートまで送ろうか?」
と言う橋倉主任に私は
「あ、ありがとうございます・・・で、ですが今夜はスーパーでお買い物をして帰ろうと思っているので・・・だ、大丈夫です
で、では、お疲れ様でした!!」
と彼から逃れるよう、私は女子更衣室に向かった
棚に残る食パンを買い物かごに入れながら
『私って最低だなぁ・・・』と自分に苦笑いを浮かべた…橋倉主任はただ単に、私に気を使ってくれただけなのに私は彼の気持ちを“足蹴り”をするような態度をとった自分に私はとっても情けなかった
『スーパーに寄るの明日にして・・・送ってもらえばよかったかなぁ・・・』と思いながら、私はスーパーを後にした
アパート…
買って来た物を冷蔵庫や戸棚に入れ一息ついた後、私はWiiの電源を入れディスクを設定した
『さてと・・・始めますか』昨日は新しく就任した橋倉主任の歓迎会に出席していた為、今日は一昨日(おととい)セーブした所から始めた
昨夜ゲームをする事が出来なかったぶん先に進めたかったが、今日は妙に気を使って疲れてしまったのか…私はゲームをそのままにして眠ってしまった…
ゲームはプレイヤー(私)が眠てしまった事を知っているかのように再びイベントが始まった
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