10…【続き…】
2010.03.04 Thu 22:25
【続き】
「こんばんは・・・夏華」
蓮が入院している病院の駐車場付近で私は急に声を掛けられた
病院を後にした時間が午後8時だった為、私の視線に映る光景は所々に街灯が灯る夜の景色だった
声の主の姿形をはっきりと見た訳ではない為、確信は出来ないが私に話し掛けてきた声の主の正体は“『この人しかいない…』”と私の中で言っているようだった
「こ、こんばんは・・・翔さん」
「こんばんは・・・……
ねぇ・・・夏華、ここ約3ヶ月程・・・よくこの病院に来ていない?誰かこの病院に知り合いでも入院しているの?」
と言いながら、声の主は私に近づいてきた…私の足は無意識に後退りをし、声の主から離れようとした
後退りする事に夢中になってしまったのか、彼の言葉に返事をしない私に声の主は
「どうしたの・・・夏華
僕・・・夏華に聞いているだよ・・・この病院に知り合いでも入院しているの?と・・・僕の話しの内容に答えられないところがあるかなぁ・・・ないよね・・・夏華」
と言い終わると同時に瞳が笑っていない微笑みを浮かべた彼の姿が、街灯の灯りに照らされ私の視線に映し出された瞬間、腕を掴まれれ何処かに向かって走り出した
「しょ、翔さん・・・」
片方の腕を彼に掴まれたまま、私は無意識のうちにお腹を支え庇った
私の腕を掴み彼が向かった先には黒塗りの車があった…
助手席側のドアを開け“「入って…」”と言うように私の腕を放した…私は物言わぬ彼の命令に従うしかなかった
車中…
「ごめんよぉ・・・夏華、君の身体にとって今が一番大切な時なのに走らせてしまってごめんね・・・
あんな場所じゃぁ・・・話し難いと思ってさ・・・ここなら、誰に気兼ねなしに僕の問いに答えられるでしょ」
と微笑みを浮かべた彼の顔を直接目視出来ず彼から目を逸らす事しか出来なかった
やはり彼は私が妊娠している事を知っていた
そして恐らく…彼は知っているだろう…私がこの病院に通う意味がある事を
自分の台詞に何も返事をしない私に苛立ちを感じたのか私が座っている助手席を素早く押し倒した
「しょ、翔さん・・・」
と今にも消えそうな声で彼の名を言う私の額に自分の額を合わせ
「夏華・・・何故、僕に隠し事をするの・・・僕、寂しい・・・
君は・・・僕がどんなに優しく聞いても・・・この問いには答えてくれないんだね・・・僕、夏華の口から直接聞きたかったな・・・
僕と君は3ヶ月前から毎日のように愛し合い・・・交わる、その結果・・・必ず起こる君の身体の変化・・・の事も、この病院に君の想い人が入院している事も・・・全て・・・」
彼は自分の目とあわそうとしない私の瞳に合わせる為、私の両頬を両手で掴み自由を奪った…それはまるで"目は口より物を言う"と言うかのように私の瞳を見つめた
「ど、どうしてそれを・・・」
私の心の中を見透かそうとする彼の目から逸らす事が出来ず、私は今にも消えそうな声で聞き直すしか出来なかった…
聞き直さなくっても彼の答えは変わる事はないのに…
分かりきった事を聞き直した私に彼は優しくkissをして
「ねぇ・・・夏華、医師にとって主事義務っていうのがあること知ってる?・・・知っているよね・・・僕、そのルール破ったんだ
だって・・・ルールって守る物であり、破る物だろう!!
あの病院にはね・・・僕の医科大学の友達が研修していてね・・・その子に教えてもらったんだ、その子には僕に沢山の借りがあるからね・・・僕の注文に快く引き受けてくれたよ」
と悪びれる事なく…当たり前かのように彼は言った
弁護士や医師等にある“主事義務”…患者や弁護人等のプライバシーを保護する為の最低守らなくてはいけないルールを彼は簡単に破った…破った事を私が世間に公表すれば警察に捕まり、医師免許を剥奪されてもおかしくない程の大罪なのに…彼は含み笑いを浮かべ言いのけた
半時間後…
頬に触れていた彼の手はいつの間にか私の胸を優しく揉み上げ、優しくkissをしていた唇は私の乳首を軽く吸い舌で転がす…彼に押し倒され彼の体重を感じた時には既に…私の身体は疼き溢れ彼を求めていた
『あぁぁ・・・早く来て欲しい・・・』目に涙を浮かべた目で彼を見つめている私に気が付いたのか
「夏華・・・もう僕が欲しいの・・・」
と私の耳元で優しく囁く…私は意思を無視し無意識に頷いていた
「良い子だね夏華・・・
ねぇ・・・夏華、今・・・君が欲しい物と思っている物をあげてもいいけど・・・それは僕にとってフィフティーフィフティーじゃないんだ・・・僕が欲しいのは・・・夏華、君の気持ちが欲しい・・・
身体だけではなく・・・心から僕を・・・僕だけを愛してくれる夏華が欲しい・・・
夏華が僕を愛してくれるのなら・・・僕は君に最高の愛を一生・・・捧げよう」
自分自身の気持ち(意思)を裏切り…彼を求め続け今も尚、彼を求め続ける…自分の身体のおぞましさを彼の言葉で知った…
それと同時に私は、蓮への想いが気持ち(意思)として溢れ出てきた
「翔さん・・・私、貴方の想いを受け入れられないわ・・・
貴方だって分かっていたでしょう・・・私の心は蓮・・・彼だけの物、あんな状態になってしまった原因は私のアパートにわざわざ迎え来てくれたから・・・
私が貴方をどんなに求めても・・・心だけは蓮を想っていたい・・・だから、貴方の気持ちを受け入れる事は出来ません・・・ごめんなさい・・・」
と言う私の目の前で彼の表情は、みるみる内に怒りとも喜びとも一言で言い表す事が出来ない程、複雑な表情を浮かべた
彼の表情を目にして私は
『やっと・・・彼の呪縛から解放される・・・』と心を撫で降ろした
元々…こういう今の状態を作ったのは3ヶ月前に私が彼にあやふやな返事をしたのが原因だった
蓮の事だけを想っている清らかな私に戻る事は出来ないが、中途半端な彼との付き合いに終止符を踏む事が出来て私はホッとした
私の身体の上を覆い被さったまま、身動きしない彼は予想外な表情を浮かべている事に私は気が付いた
「しょ・・・翔さん?」
と声を掛けた瞬間、彼は私の首に手を伸ばした
「え!!?しょ・・・翔さん?」
私の首に絡めた手の指には、まだ力が入っていない為喋る事が出来たが…私と彼の間には変に緊張感溢れる時間が流れた
「ふふ・・・夏華、やっぱり・・・そう返事をしたね
君がそう返事をすると思っていたから・・・君が僕の子供を妊娠するまで・・・待っていたのに・・・結局、君は僕の子供を妊娠しても僕のプロポーズ(願い)は受け入れてくれないんだね・・・寂しいよ・・・夏華」
と言い終わるのと同時に彼は私の首に絡めた手に少し力を入れた
「んん!?
しょ・・・翔・・さん」
「苦しい?・・・夏華」
彼は分かりきった事を私に問い掛ける
彼の問いに私は返す言葉が見付からなかった
「夏華・・・その苦しさと同じぐらい僕も・・・胸が苦しいよ・・・
こんなに君を愛しているのに・・・君の心には今も蓮・・・という男が存在する・・・それは僕の一生を捧げる愛を持ってでも消去する事が出来ないんだね・・・」
と言い終わると同時に再び首に絡めた手に少し力を入れた
「
ん!・・くく・・・」
「はぁぁぁ・・・夏華
君の心には・・・まだあいつがいても、君の身体は僕の物・・・……
あいつには渡さない・・・君が僕の願いを受け入れてくれなくても・・・君の身体は・・・もう、僕の物・・・……」
彼は私に優しく囁くように耳元で言いながら、私の首を締める手に力を入れた
※
ここからは選択小説
夏華にとって→ハッピーエンド(P8)
夏華にとって→バックエンド
・
感想(0)
[*前へ]
[#次へ]
戻る