暑い時期の部活は大変ですね、そんな月影。
梅雨はあまり好きじゃない。
だって、ジメジメしてて天気だって安定しないし、何より蒸し暑いじゃないか。
ヘッドホンなんて暑くて付けてらんないし、変な話眼鏡は曇る。
いつもより気温も湿度も高い日の体育館なんて蒸し風呂状態で、皆汗まみれで集中力を欠いてるようだった。
まぁ、僕はそんなへろっへろのみっともない姿なんて、晒してたまるかって感じだけどね。
「月島!!」
王様のトスが僕に上がる。
でもそれにはいつもの精密さがあまり感じられなくて。
あぁ、流石の王様も梅雨のジメジメには形無し?
結局、そんなぐらついたトス打つ気はしなかったから、スパイクを打とうと振り上げた僕の手はボールを叩きつける重みを感じることなく、フェイントに使われた。
コイツだってまぁ一生懸命やってる。
今のミスだってわざとじゃないだろう。
分かってる。分かっているのに、僕の口から流れていくのはいつだって嫌みだ。
でも、自分がそんなひねくれた性格だってこと百も承知だし、影山だって決してチビのような素直な性格ではない。
「ちょっと王様、何?今のトス。喉乾いてんなら、水分補給ぐらいちゃんとしてよね。」
そんな僕の言葉に即座に反論した王様が、
「なっ、違ぇよバカ………うわっ!!」
僕の方に駆け寄ろうとして、不意に前のめりに足を滑らせるのが見えた。
見えたって言っても、僕とアイツの物理的距離なんてあってないようなものだ。
もしかしてさっきのミスも汗でボールが滑ったのかな?
まぁ僕には関係ないけど。
それにしてもやっぱり暑いな…、休憩まだかな。
あ、眼鏡曇ってきたマズイ。
きっと、僕がこうやって柄にもなく現実逃避みたいなことしてるのは、
数秒後、二人の体制的に僕が王様を抱き止める形になるからだと思う。
ほーら、3、2、1。
重なる瞬間、王様の腕に触れた。
それは汗でしっとりとして、陶器のような君の肌をなめらかに滑る僕の指は、
まるで駆け寄ってきた恋人を抱きしめるかのように静かに丸まった。
ドスン!と体育館に響き渡る僕の尻餅の音。
周りの先輩達やチビ、山口もめちゃくちゃ心配してるけどこれ考えてみたらけっこう恥ずかしいよ。
高校生男子の尻餅とか誰得だよ、どうしてくれるの王様。
そんな思考なんか露知らず。
開かれた僕の足の間にすっぽりハマって、胸元に顔をうずめながら練習着をギュッと握る、君が可愛いとか。
絶対思ってやらないし、言ってやらない。
暑いんだから、早く離れてよ。ばか。
君の心に歩み寄って
(引き合うように、これは運命でした)
中学時代、体育館で練習していた時の蒸し風呂状態を思い出しながら書きました。
さくっと、しっとりな影山くんウマー(^p^)←は?