バトン 狂い咲き@↓続き
 2013.11.06 Wed 22:46


※ちょいちょい更新


(16)きみのとなり
→白零輪

庭で遊んでたら、縁側で見てた晋兄の隣に、いつの間にか銀兄と小兄が増えてた。

何を話してるのか知らないしわからないけど、いつも楽しそうで良いなあって思う。

俺もいつかあそこに並ぶんだ。

「どうしたら早く大きくなれる?」って聞いたら、「食いもんの好き嫌いを無くせ」に「元気に遊べ」に「勉強しろ」だったから、銀兄の案を全力で採用した。

並ぶとして、自分は何処かなって思って、遊ぶのを止めて縁側をじっと見る。

銀兄が投げキッスしてる、ウザい。

小兄がウィンクしてる、キモい。

晋兄は、微笑ってる。

やっぱりあそこだ。

走り始めたら、三人共両手を広げた。

行くとこなんて決まってる。

晋兄に抱き上げて貰って、お膝に座らせて貰う。

悔しそうな銀兄と小兄が手を伸ばしてくるけど、全部晋兄がはたき落とした。

それが楽しくって笑っちゃう。

晋兄も俺と顔を見合わせて笑った。

やっぱり、晋兄の隣はこの二人で良いや。

俺はここだ。

ここならみんなの顔が見れる。


あの時はそう思ってた。


縁側に腰掛け、みんなの見ていたものを探すけど、わからない。

少しでもあそこに並んでいたら、見えたんだろうか。

「(三人して飽きもせず、なぁに見てたんだろうな。)」

隣に兄さんが腰掛ける。

そっちを見たら、目が合った。


(17)風の中でたなびいたひとつの言葉


「神威さんはマジで困った人でさ。普通の時はただちょっと尋常じゃない大食らいの普通の人なんだけどさ、三日に一回は派手なドンパチしないとカルシウム不足みたいになってさ。」

何が始まりだったか、桃太郎は高杉に春雨船上の思い出を語る。

「料理中は免除されるけど、首根っこ掴まれて最前線に連れてかれる、つか神威さんの隣にいさせられるわけよ。当然、相手も強いじゃん?神威さん、戦闘始まったら俺の存在ほぼ忘れるし、超危なかったわけよ。」

最前線に連れて行くわけではなく、自分の隣の方が色んな意味で安全だったのだろうと高杉は思った。

神威の目が届かない、非戦闘地帯では、桃太郎の特に背後が危険だ。

「大きい怪我はしなかったけど、紙一重でさ。当たったら大怪我どころか死んでたね。…嫌でも強くなるってもんよ。」

桃太郎は笑みを引き吊らせる。

でも、ふと、表情が引き締まった。

「怖いな、とか思った時。手が震えたり、足が竦んだ時、風が言葉を運んで来てくれて、俺の背を押してくれたんだ。」

桃太郎の笑みに、高杉は見惚れる。

「またなって、良い言葉だよな。」

それから桃太郎は、またいつもの表情で下らない話を続ける。

高杉は大事な弟の無事を、改めて噛み締めた。


(18)全てが嘘のように
→輪咲

催事護衛中、鬼兵隊の側を桃太郎が通った。

長身の男が、一度目にすれば忘れられない美しい顔を化粧で更に飾り、女物の色鮮やかな美しい衣を幾重にも重ね、裾を持ち上げるこれまた見目麗しい小姓二人を引き連れ、鴉の濡れ羽色の髪を彩る髪飾りを優雅に奏で、身分の高さを物理的に見せつける渡り廊下を歩いていた。

桃太郎を囲む幾人もの官僚達も、目を奪われ足下が覚束無い。

幻想的ですらある登場に、女であるまた子でさえ、見惚れる。

誰かが何かを言い、桃太郎が笑う。

ふらりと、意味は無くただ吸い寄せされた無意識の手が、桃太郎の肩に迫る。

一つでは無い。

厚い衣に覆われ、感覚が鈍くなっている桃太郎は気付けない。

「武松様。」

また子が「えっ」と振り返ったのは声の主だ。

両手を広げる高杉の視線の先、桃太郎が豪奢な衣数枚を脱ぎ捨て渡り廊下から飛び降りる所だった。

「鬼兵隊総督、高杉晋助!榎本武松が命ずる!しかと受け止めよ!」

「畏まりました。」

先程の厳かな美の空気の全てが嘘の様に、突然、残念なブラコン兄弟の抱擁を見せ付けられた周囲は、いつの間にか伸びていた手を下ろし、袖に隠した。


(19)今夜君だけに誓うよ

花街から帰り、珍しく大人しく早く寝たという、今日は良い子の部屋に立ち寄った。

独りで寝る時は大体刀を抱き枕にしている。

今もそうだが、顔に当たる柄は硬く、痛くないのだろうか。

それ以前に、危険極まりないので止めて欲しい。

何度言っても聞きゃしない、可愛い寝顔に溜め息が出た。

それくらいで起きやしないので、掛け布団を剥ぐ。

相変わらずどうしたらそうなるのかわからない寝相のお陰で、夜着は概ね脱げている。

露出した、目の毒でしかない、繊細そうで割と丈夫な白い肌に、直接刀が当たっている。

肩にも、内股にも。

無理矢理引き抜くと擦れて、怪我をする事はなくても痒くなり、雑で残念な弟は気が済むまで掻き毟る。

大惨事だ。

それに場所が場所なだけに、掻き毟る様は猿よりも酷いだろう。

膝を掴んで足を開かせる。

無警戒に拓かれた股は、素材だけなら白く滑らかで、形も良いが、持ち主が残念なだけに品が無く、また、下着のセンスもあってそそらない。

刀を退けてやり、割と乱暴に膝を戻してやるが、自称侍の弟は起きない。

次は柄だ。

刀を握り締める両手に手を重ねる。

一本ずつ指を絡め、刀から剥がした。

後は容易だ。

刀を取り上げ、枕元に置いた。

「…俺はここだ、桃。」

刀を求めて彷徨う手を指先でつつく。

捕まえようと伸ばされては手を引っ込め、またつつくを繰り返す。

それでも自称侍の弟は起きない。

暫く楽しんだが、可哀想になったので手を握ってやる。

掴み返される前にその手を布団に押し込み、その上から握り直した。

「もう置いてったりしねえ。ちゃんと帰って来るから、安心してゆっくり寝ろ。」

自称侍の弟の寝顔から力が抜ける。

良い子の弟の頭を暫く撫でてやり、その隣を拝借した。


「なあ。昨日の夜、俺から刀取り上げたの、兄さんだよな?」

翌朝、弟の確認に無言で是と答えると、弟は呆れた様な顔で溜め息を吐いた。

「あっぶねえな。寝惚けて斬っちまうぞ。」

「ハッ、まだおまえに負けてやるかよ。」

「銀時も小兄も同じ事言ってた。」

「…斬りかかったのか。」

「…取り上げようとすっからだろ。」

「…。」

どうやら可愛い寝顔に騙されていると、その内死ぬらしい。

今度、万斉あたりをけしかけるか。


(20)久しぶりに君の声を聞いた



20題で終わりです^^
何かありましたらどうぞ*


回答ありがとうございましたっ!
もし次作がありましたらまたよろしくお願いしますです〜(*´`*)◎


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