バトン 狂い咲き
2013.07.04 Thu 20:28
夏向けお題バトン
夏向けお題バトン
夏向けの言葉が5つありますが全て書いても、選んで書いてもどちらでも。
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*高い高い空
暑いのも日差しも苦手だけど、夏は兄さんが生まれた季節だ。
だから、その暑さも、眩しさも、兄さんみたいで嫌いじゃない。
兄さんも俺も、祭りも海も好きだしな。
たまに少し鬱陶しく感じたり、たまに寂しいくらい遠くに感じたりする所も、似てると思う。
だから前に「兄さんって夏みたいだよな。」って言ってみたら、
「遠回しに大嫌いだっつってんのか?…上等じゃねえか。」
って、非常に面倒臭い事になったから、もうその話題には触れないようにしてる。
*夏至の日の夜
少し前まで、日の長い夏至の頃は不思議な気持ちにだった。
夜行性のお尋ね者が、明るい内から活発に行動していたからだ。
今は、兄さんもすっかり日向が似合うように“戻った”。
いつも大体真っ直ぐ帰ってくるけど、やっぱり遅い。
だから明るい内に帰って来てくれるってだけで、凄く嬉しい。
「おかえり、兄さん。」
「…まだ日は沈まねえのか。」
「あっちいよな。ごくろーさん。ご飯、風呂、俺。…勿論、風呂だよな?」
「桃と風呂だ。」
「ははッ!」
こんな日常が凄く愛しい。
*祭りの終わり
花火が終わり、祭りも終わった。
腹も一杯、機嫌も良い。
体力の有り余ってた昔は、遊び足りなくて、もう祭りも終わったのに少しでも長くそこに居たくて駄々をこねた。
今だってまだ若いし、体力も有り余ってる。
でも、今は手を握る大きな手に、従順に引かれている。
昔は帰っても寝かしつけられるだけだった。
今はこの後、兄弟水入らずの家飲みが待っている。
「俺もでっかくなったなあ。」
「…ああ。その点だけは可愛くねえな。」
「…はいはい。すみませんでしたあ。」
でも、俺の成長を兄さんは素直に喜べない。
*西瓜と花火
風鈴が夜の涼風を知らせる縁側に、蚊取り線香を焚いて、胡座をかく。
西瓜をめいっぱい頬張って、種を吹き飛ばした。
「兄さん、知ってっか?西瓜って唐辛子付けて食うと甘味が増してめっちゃ美味いんだぜ?」
無言、でも雰囲気でわかる。
疑ってる。
「辛いのが苦手な桃がそんな事するわけねえだろ。」
「あ、そっちから疑ったか。いやいや、俺も最初は総悟が唐辛子付けて食うの見てドン引きしたね。総悟の死んだねーちゃんが大の辛党だったからその影響か?って聞いたら姉上の言う事が信じられねーのかってシスコン野郎に口に突っ込まれたってわけ。今度は美味くてビビったぜ。」
無言、でも雰囲気でわかる。
総悟の名前が出た事で、兄さんが不機嫌になった。
「お。」
何処かで花火が上がった。
きっと見事なそれのおかげで、兄さんの機嫌が少し直った。
でも残念。
もう我が家で唐辛子西瓜は食べられそうにない。
*お稲荷さんは
昔々。
兄さん達が戦争に行って、独りぼっちだった頃。
逃げ回り、住む所を転々としていた日々。
まだ土地勘も人付き合いもなく寂しかった時、その地で祭りがあった。
追っ手にバレやしないだろうと独りこそこそ参加してたら、やっぱりバレた。
必死に走って、追っ手を捲いて、荒廃した神社の中に逃げ込んだけど、やっぱり見つかって、流石に神社で殺すのは怖かったのか、引きずり出された。
俺もここまでかと、いい加減諦めかけた時、阿吽のお稲荷さんの後ろから、白狐の面をしたおにーさんが二人、現れた。
暗かったし、逃げるのに無我夢中で、その二人をよく見る事ができなくてよく覚えてない。
「もしかしたら本当にお稲荷さんだったかも」と、半ば本気で言ったら、兄さんは喉の奥で楽しそうに笑った。
「くっ、くっ。今度、万斉にもその話をしてやれ。」
「…え、もしかして?」
兄さんが頭を撫でてくれる。
もしかしなくてもそのまさかだ。
「悪い。あの時はあの距離が精一杯だった。」
「ばっか。嬉しくて泣いてんだ。」
凄く寂しかったけど、それでも兄さんが見守ってくれてたって知れただけで、こんなにもマシになる。
「兄さん、大好き。」
「…知ってる。」
「じゃあさ!俺が川で溺れてんのをさ、」
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ありがとうございました。感想などありましたら、どうぞ。
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