返信という名の暴想
 2021.03.06 Sat 18:03


だいぶご無沙汰しております。
白羽の矢は私に立ちませんでしたが、来年度のことを思っていたら、「おまいう!?」や「再三確認いたしましたが!?」な今年度のごたごたのせいで死んでました。
今月修羅場ですが、私もバスゴリ精神でがんばります。
仕事したくないは仕事をしながら言うものです。

幼女戦記!ついに手を出してくださいましたか!よいでしょう、よいでしょう!?
元人事課長現幼女、格好良過ぎるでしょう!?
シュワルコフさんを私は全力で推すが出番は少ない(笑)

最近ようやく鬼滅のアニメを見始めました。
たかな様、正解です。善逸君を私は推す。
いのすけ君も可愛いし、だがやはり不死川がいい。
お館様に頭が上がらなさがヤバい切替格好いい。

バレンタインに全然間に合わなかった小ネタです、オー、シット。

※追伸
後れ馳せながら、道満さま支部巡りでビジュアル把握しました。
晴明さまに対して拭えない劣等感とか、汚れ仕事喜んで(拗)とか、私の感覚があってるかはわからないけど、確かにいとおしいですが、体重が単車並みで驚いたよ。



<実は>



バレンタイン当日。
門下生一人に対して免許皆伝の師範が二人と、超贅沢な剣術道場新撰組は、浮かれることなく茶をすすっていた。
いつの間にかスタッフなどで構成された「ジュナスタを更生させようの会」によって、これまたいつの間にか設けられた床張りの部屋の隅、畳敷きの小部屋は、精神統一や小休止、談話のためにジュナスタもありがたく使用させてもらっている。
襖は誰に依頼したのか一目瞭然の名品で、窓のない部屋にあって閉塞感を覚えることはない。

「実は、甘いもんそこまで得意じゃないんですよね。」

ジュナスタは好きでもなければ嫌いでもない微妙なラインを、唇をギザギザに引き結んで表現した。
沖田は茶を噛みしめるように頷く。

「一番に喜びそうなイベント当日に、こんな所でこそこそしている理由がわかりました。」
「そーなんです。ちびっこサーヴァント達の気持ちは嬉しいんですけど、断るのも、もらったものを捨てたり食べ物を腐らせたりするのも信条に反するので、今年はそもそももらわないことにしました。」
「昨年はよほど苦労したようですね。」
「はい、それはもう反動で毎日カレーを食べるほどに。こうして少しずつならおいしく食べられるんですけどね。リツカのせいで年々量がえぐさを増して恐怖の域。」

ジュナスタは、お茶菓に沖田と斎藤が貰ってきたチョコレートを分けてもらっている。
それくらいが丁度いい。
斎藤はチョコレートの包み紙で折った鶴をジュナスタの前に置いた。

「あれ?でもお嬢ちゃん、仕事中はチョコレートとか甘いもの、食べてるっていうよりばりばり噛み砕いてるよね?」
「はい、食事は歯ごたえも大事ですから。でも、行儀が悪いってアルジュナによく叱られます。」
「まるで肉食獣が軟骨食べてるみたいな姿だからねえ、カロリーって魔力に変換できたっけ?」
「残念、未来の猫型ロボット的な夢のエネルギー回路は故障したら核爆発を起こす超危険理論を採用しているので実現不可能、つまり気分の問題です。」

今度は紙風船が置かれ、ジュナスタは指先で突いて遊んだ。

「アーチャーは燃費がよくて助かるし、私の魔力量は一般的なのですぐには枯渇しませんが、宝具を使わせたときに襲い来る不可避の疲労軽減のための気休めです。」
「お嬢は自らも戦闘に加わりますから、一瞬の隙や油断は大敵です。任務中は常に万全の状態でいるべきでしょう。よい心がけです。」
「ありがとうございます、沖田せんせ。」

ジュナスタの前に、お尻を押すと跳ねるカエルが置かれた。
目を輝かせて遊ぶジュナスタに、斎藤も口元を緩めた。

「お嬢ちゃんのサーヴァントは優秀だからマスターの負担にならないよう、任務でも毎回それほど魔力を消費しているようには思えないけど、全然太らないよね。」

斎藤はジュナスタの遊んでいない方の手首を掴んで、お人形遊びをする子どものように振ってみた。
英霊でなくても、鍛えた成人男性なら少し力を込めただけで折れそうな細さだ。
これで刀を振り回すのだから、魔術と剣術を同時に鍛えている証であり、褒められて然るべきなのにいまいち評価されないのが、剣術道場新撰組七不思議の一つだ。

「太らない、は語弊があるね。もう少し肉を付けた方が、剣圧も上がると思うんだけどな。」
「セクハラですよ、斎藤さん。」
「やだな、お嬢ちゃん相手にお節介は焼いても下心なんてないよ。」
「女性相手に、体つきの話をすること自体がセクハラです。相手は関係ありません。」
「それもそうか。ごめんね、お嬢ちゃん。」
「いえ、はじめせんせが謝ることではありません。自覚もあり、とっくの昔にエミヤ料理長に相談して献立に気を使って貰ってもこうですから、…食事量や体質よりも性質の問題でしょう。」

へらりと笑うジュナスタは、怠惰ですからねと疲労を隠さなかった。
斎藤はジュナスタの手を自分の手の平に乗せ、悲しげに眉尻を下げた。

「僕こんな顔してるけど、これでも僕らを慕って本音を漏らしてくれて嬉しいと思ってるんだよ。」
「斎藤さんの言うとおりです。私も表情が硬いかもしれませんが、お嬢の心情を汲みとった故にです。」
「この小部屋では、もっとお嬢ちゃんがお嬢ちゃんを好きになれるような話をしたいね。」
「己の内面を見つめることもまた修行です。せんせとして、受け止める覚悟はできています。」
「はじめせんせ、沖田せんせ。」

ジュナスタは沖田にも手を取られ、うっかり絆されかけた。
二人はジュナスタの手をがっしりと掴んで離さない。
これは握手ではなく捕獲であると理解するのに、時間はかからなかった。
沖田の顔が一変、笑顔になる。

「さて、この口と頭がさっぱりするお茶はどなたが調合したものですか?」

ジュナスタは答える前に、この話の終着点を試算し、口元を引きつらせた。
前言撤回、免許皆伝の師範は、二人ともたまのイベントに浮かれている。

「チョコレートの貰い過ぎで胸焼けを起こしたところに、問題児である私からさしておいしくもないチョコレートを貰っても嬉しくないだろうとの判断で、私が調合しました。」
「心遣い、嬉しいよ。食堂の机の上の、大きな瓶に詰められたティーパックは紅茶だったけど、今淹れてくれたのは僕達の口に馴染んだ煎茶だ。これは、義理チョコよりも少しランクが上のチョコをもらったと、せんせは自惚れてもいいのかな?」

斎藤の顔も満面の笑みだ、ジュナスタの頬の引きつりが痙攣する。

「どうぞ、自惚れちゃってください。」
「カップから垂れる紐の先のリボン細工を、主に女性陣が可愛らしいと喜んでいました。」
「ちょっとぽっちゃりした男性スタッフが、今度は何をしでかしたんだ、何か裏があるぞ気をつけろ、って騒いで、水を差してたけどね。」
「冷静な女性スタッフが、たちの悪い毒が入っているのではというデマを払拭するために、成分解析した結果を紙に印刷して瓶の下に挟むことで、ぽっちゃりスタッフさん以外、みなさん安心して召し上がっていました。」
「つまり、普段しないことをしたってことだよね。どうして?」

目からハイライトを消した斎藤の問いを既読スルーするわけにはいかない、ジュナスタは必死に言葉を選ぶ。

「昨今の剣術稽古で若干精神が浄化されてきたからでしょう。普段、迷惑をおかけしているのでこの機にお返しができればと思った次第です。」

沖田の笑みが強まり、ジュナスタが引いた先には斎藤の笑顔があった。

「「誰に?」」
「…これをセクハラパワハラって言うんですよ。」

ジュナスタは観念して項垂れた。

「甘いものが得意じゃないから、自分で作ってみてもおいしいかわからない。エミヤ料理長に協力を仰いだら、ジュナスタ秘伝の疲労回復茶のレシピ伝授を条件に引き受けてくれました。当日まで疲労回復茶の量産を主動したのは、普段から多大なるお世話になっているエミヤ料理長への私なりのバレンタインのつもりです。」
「つまりやはり!本命チョコは、エミヤさん直伝お嬢渾身、王子様のお口にも合うチョコレートなんですね?」

身を乗り出す沖田に、ジュナスタも顔を上げ、前のめりで対峙した。

「ああ!もー!オウ!イヤー!私はチョコレートを作りました!バット!それは友達と格別仲のいいスタッフさんの分もありますから!王子様分オンリーじゃないですから!」
「お嬢はご友人や相棒さん達が大好きですからね、拒まれる憂いなどなく迷わず元気にいの一番に渡してすでに喜ぶ面々に満足してきたはず。しかし、本命には迷いが生じる意気地なしで、喜ぶ顔を直視できない捻くれ者です。」
「ぐ!」
「どうせお嬢ちゃんのことだから素直に面と向かって渡せず、部屋の中でも目のつく所に置いてさっさとここに逃げて来たんでしょ。どの面下げて部屋に戻るつもりなの?」
「ぐぬう!」
「きっと彼、今頃もしかしてって思いながら両手で顔を覆って悶えてるよ。」
「いやいや、ご友人の姫様の分かと思って不貞腐れているかもしれません。」
「うぅ〜っ!」

当人をほったらかして盛り上がる二人を、ジュナスタは唸りながら交互に睨んだ。

「わざとここに居づらくして部屋に戻るように促しているなら無駄ですよ。私は今日は部屋には戻らないと決めたんですから。」
「「じゃあここに彼を呼んで来てあげよう。」」
「私は迷わずカルナさんの所に逃げますが、カルナさんとせんせ二人のおそば、どちらの方がアルジュナの心に優しいでしょうね。」
「今日は特に、自分の隣が一番優しいでしょうよ。」

斎藤の核心に、沖田は優しく頷いた。

「ありえませんが、もし彼と向き合って怖くなったり、お嬢の真心が傷つけられたり貶されることがあれば、すぐにここへ戻ってきなさい。せんせ二人が待っています。安心して行ってらっしゃい。」

二人の手が、突き放すようではなく送り出すように離された。
ジュナスタは宙に浮いたままの両手をそろりそろりと回収し、ない胸の前で握り合わせた。
その顔は照れと恥で赤く、不安と緊張で青く染まっている。

「ああ、後先考えずにらしくないことしなきゃよかった。」
「後先考えない行動こそ、らしいことだと思うよ。」
「信念に基づき行動した結果がまだ出てもいないのに、勝手に出した結論で自省し落ち込むとは、いい加減士道不覚悟で切腹ですよ。」
「もうお二人が甘いのか辛いのか私にはわかりません!」

沖田と斎藤はくすくすと笑っている。
ジュナスタも馬鹿ではない、二人が自分に十分甘いことを知っている。
甘えてもいいと、言ってくれたばかりだ。
主従の関係は主従だけのものだが、ジュナスタが処理しきれない場合には先人や師範として力になってくれると言ってくれている。
こんなに力強いことはない、自分はその思いに応えなければならない。

「煎茶抹茶派のお二人も、よかったら紅茶も飲んでみてください。アルジュナほどではありませんが、私もそれなりに紅茶にはうるさいつもりです。」

渋々腰を上げて道場を出るジュナスタを、沖田と斎藤はほっこりと見送った。

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