返信という名の暴想
 2020.11.08 Sun 21:14


三十路過ぎると小さい地図が見えんくて見えんくて。
応援に来てた若い同期に「おばちゃん老眼始まって辛いから次からは二十代にやらせろって上申していい?」って嘆いたら、めっちゃ爽やかな笑みで

「またまた、のりさんならできるでしょ」

って流された。
その同期、かつて何を思ったのか残業2時間経過した辺りでおもむろに私のデスクに現れて、何か聞きたい事でもあるのかと思って見上げたら、小さなチョコレートの箱(緑)を両手で恭しく持ってたの。

「のりさん、パクチー嫌いでしたよね」

みたいな問いを投げかけてきたので大きく頷いたら、チョコレートの箱(緑)を得意気に掲げて、

「これ、一緒に食べましょう」

って、爽やかな笑みで言ってきた子でね。
そう、そのチョコレートの正体は、某有名お菓子メーカーが何をトチ狂ったのか生み出してしまった<パクチーチョコ>である。
私が死ぬほど嫌がったら、まずその同期の子が自分で一口食べてみて、

「うーん、これのどこがパクチーなんだろ。企画してみたものの、やっぱりチョコと合わなくてパクチーの存在感を消したんですかね。気分転換に持ってきてはみたものの、あまり面白くないかもしれません。」

みたいなことを言ってね。
「ほら」とばかりにずずいと箱(緑)を私に突き出したわけ。
まあゴーヤ(宿敵)じゃないし、そんなに薄い味ならミント的な感じでいけるかなって、私も食べてみたわけよ。

あとはお察しのとおり。
飲みこめないし事務所で吐き出せないしトイレ遠いし、チョコが自発的に溶けて消えるまで涙目で無言でその同期の子を叩き続けたよね。
その同期の子は嬉しそうに笑ってたよね。
そんなことを思い出した短い地獄でした。
でも、前の部署の方が毎日が地獄だったから、期間限定の地獄なら余裕で乗り越えられるもんだと思った。

私もピアス穴、再発するよー!
なんかピアスすると化膿するから、福耳みたいに腫れて真っ赤になっちゃうの。
袋?を取り除けばいいらしいんだけど、皮膚科の先生が「面倒くさいしもうピアスしない方が君も楽じゃない?」みたいな発言をし、<○><○>ってなった。
再発、すると思う。
兆候を察し、早めに受診するように!!

ドリフー!ドリフー!早く続きが読みたいよー!
この私が珍しくよいっちゃんみたいな美少年がいるにもかかわらず、おっさん(ノブ)に萌えてるんだから奇跡の作品だよー!
一応予想では来年の5月らしいから、ヒラコー先生まじがんばって。

というわけで。
なんか今回返信暴想捗って色々同時進行で書いてたけど、上記の同期の話に全然関係ないけど以下の小ネタを投下しておきます。



<集中乱れて癒しあり、頭春にしてやる気増し>



最近珍しくマスター業をがんばっていると思いきやこれだ。

「ねーえー!ミスター!」
「なんだよ、相棒。こっちは徹夜明けでしんどいんだよ。」
「私に構ってる暇があったら少しでも寝たいのはわかるけど、ねーえー!」
「それ、わかってねえやつだからな。」

ミスタームニエルはジュナスタが差し出すコーヒーを受け取り、ミスタームニエルの机に突っ伏したジュナスタに体を向けた。
こいつみたいに生きられたら楽そうだなと思いながら、こいつみたいなやつはどんな環境でもこんな風に管巻くんだろうなとも思った。

「最近萌えが足りんと思わん?」

だがしかし、こいつのこういうところが、なんだかんだ言って嫌いではないのだ。

「こんだけ美男美女に美少年美少女にジェンダーレスまで取り揃えた環境に在って、大変贅沢な悩みなんだけどさー。」

ジュナスタはもう一つ持って来ていたコーヒーをすすり、上目で画面上のミスタームニエルの仕事を眺めて「ふーん」と気のない鼻息を漏らした。

「アストルフォきゅんはノリがいいから協力を得やすいけど、私は萌えには傍観者でありたいのよ。アストルフォきゅんという萌えは向こうからやって来るから大好きだけど、今は違うのよ。」
「わかるぜ、相棒。推しが嫌がることを職権で強制したいわけでもない。」
「そーなのよー。ご都合同人みたいな茶番が足りんのよー。」
「危険が少ないトンデモ特異点でも現れてくれりゃいいんだけどな。」
「例えばどんな?」
「そうだな。」

ミスタームニエルは休憩がてらくだらない話に付き合うついでに、趣味用のラップトップでこれまでに集めた萌え画像をスライドさせた。

「サーヴァントがロリショタ化する特異点、とか。」
「イエスザッツライ!それいいー!」
「逆に、幼少期の姿で顕現したサーヴァントは、青年期の姿になるとか。」
「最高かよー!心がぴょんぴょんするんじゃー!」
「…ふむ。」

ミスタームニエルが何やらすごい勢いで打ち込み始め、そのあまりの鮮やかさに見とれていたジュナスタは、半分寝かかっていて驚いた。
ミスタームニエルに得意気にラップトップを突きつけられて、思わずのけ反った。

「な、何?」
「相棒のツイートに着想を得た。むしろこれまで何故この発想に至らなかったのか、疲れていたんだな。」
「お、おう。」

ジュナスタは気を取り直し、ラップトップを覗き込んで、両手で口を押えて目を輝かせた。
そこには青年アストルフォの姿があった。

「高度な演算プログラムで本人の素質をベースに統計的な年齢を考慮して導き出した姿がこれだ!」
「ミスター天才!!」
「これと適当な拾い画を組み合わせてランダムで再生するように、…っと。」

二人はラップトップを真ん中に椅子を引いて適切な距離を取り、カップを両手で持ってスクリーンを凝視した。
砂場遊びをする園児ガウェインと園児ガレス。
ホスト化した牛若丸や女性モデル化したアシュヴァッターマン。
年齢だけでなく服装、性別まで一粒で千差万別の魅力を堪能していた時だった。
ジュナスタはカップを握り潰し、手から血を滴らせながら、口の端から涎を垂らした。

「ミスター!今のスクショ!」
「あいよ。」

今のとは、愛するサーヴァントアルジュナとその兄のカルナの、合成写真だ。
幼女アルジュナを、中学生カルナが抱き上げている。

「尊い!」
「なんなら声も合成しといてやるよ。」
「兄様一択!」
「わかってる。」

再生された幼声に、ジュナスタの手の平に深々とカップの破片が突き刺さる。

「おいおい、大丈夫か相棒。」
「大丈夫なわけがあるか。萌え死にそうだ。」
「そうだな、幼女アルジュナは夢がある。」
「むしろ夢しかない。将来絶対美人さんになる。このお兄ちゃん、絶対妹の初デート尾行する。結婚のときとか、パパよりも出しゃばって彼氏を尋問する。」
「この妹がその兄をウザがるか兄が好き過ぎるか解釈がわかれるが、どちらにしろ尊い。」
「うむ。この妹が反抗的に育つか素直に育つかで、美人さんの種類も変わってくるが、どのパターンでも尊い。」
「気に入った設定を深堀りしていくのも悪くないな。最近周回をがんばってる相棒への御褒美も兼ねて、プログラムを追加するから5分くれ。」
「じゃあ私はコーヒーでも淹れ直してくるわ。」
「ついでに手当てもしてくるように。」
「はいはーい。とっておきのおやつも持って来るね。」

ミスタームニエルは鼻で溜め息を吐き、肩を回した。
存外凝りが解れていて、同好の士とのくだらない会話はやはりいい骨休みになるのだと改めて思った。

数分後、プログラムを更新し終えたミスタームニエルは、転寝をしながら相棒の帰りを待っていた。
かくんと船を漕いだ時に頭を振り、覚醒を促したところで、視界の端を二度見してスッキリ目が覚めた。
ノックに返事をした覚えはないが、間違いなく行儀よくされたであろう。
黙っていても雄弁で賑やかな存在の入室に気が付かなかったのだから、聞こえる筈がない。
入口に、お盆に湯気の立つ“紅茶”のポットとおやつを山盛り乗せたジュナスタと、その首根っこを掴んで子猫のように持ち上げている保健所の職員間違えたアルジュナがいた。
ジュナスタのさして大きくない目は悟りを開いたように薄く開かれ、口は皆まで言わずとも察してくれと一文字に引き結ばれている。
もちろんその手は丁寧に手当てされている。
ミスタームニエルは苦笑いを浮かべた。

「アルジュナさん、今回相棒はひびが入っていたカップをひとつダメにした以外、大した悪さをしてませんよ。」
「お仕事や休憩の邪魔になってはいませんか?」
「正直、こいつがいなかったら休もうなんて発想に至りませんでした。」
「良くも悪くも、人を怠惰に引き込むことは得意ですからね。」
「経験談ですか?」
「ご想像にお任せします。」

アルジュナが手を離せば、ジュナスタは紅茶を一滴もこぼす事なくふわりと着地した。

「30分後に迎えに来ます。その10分後にはブリーフィングですから、しっかり休養をとってください。」
「「はーい。」」
「はいは短く明瞭に。」
「「はい。」」
「よろしい。」

アルジュナは礼儀正しく扉から退室し、霊体化した。
30分後、ジュナスタの迎えが来て目が覚めたミスタームニエルは、誰も得していないのに流れる萌え画像の前で机に突っ伏して眠るジュナスタと、おやつの残骸を見て痛む頭に手をやって、口元を綻ばせた。
かき集められた椅子に、自分で横たわった覚えはない。
冷やす心配のないふくよかな腹をひざ掛けで覆った覚えもない。
珍しくアルジュナのお小言が少ないのが、推理を裏付けてくれる。

「おい、相棒。起きろ、説教が伸びるぞ。おーい。」
「ラーメンのように言わないでください。」

寝起きの悪いジュナスタが、これくらいの呼びかけですぐに起きるわけがない。
しかし、いくらぐうたらマスターでも準備を全くせずブリーフィングに参加する事は今までも、これからもない。
起床からなら準備をするのに最低でも30分は必要なのだから、アルジュナは時間を惜しみ、まだ寝ぼけているジュナスタをお姫様抱っこした。
ミスタームニエルは姿勢を正して頭を下げた。

「すみませんでした。」
「こういう時はありがとうと言うのだと、マスターは鼻白むでしょう。失礼します。」

後日、“仕事の邪魔をした罰”として、試作品の新型礼装が届き、ジュナスタは頬を引きつらせたが、アルジュナは目を輝かせた。
白地に青の文様が美しい、チャイナドレスだ。

「ミスタームニエルにとって、マスターも推しの一人なのでしょうね。」
「あら、気持ちの悪い事。アルジュナは同担歓迎なの?」
「はい。その中で一番になるのが甲斐性というものです。」
「私の背後霊、念強過ぎ。どうりで肩が凝るわ。」

ジュナスタは虞美人に目尻と唇に紅を引いてもらい、髪をまとめてもらい、チャイナドレスを纏った。

「おー、さすがスレンダー美人の国の服。貧乳でも様になるわ。」
「マスターがお望みでしたら、この最優のサーヴァントが責任をもって育成いたしましょう。」
「あっはっはっ!タングステンも驚きの硬さだったアルジュナも下ネタジョークが言えるようになって世界は悲しみマスターとしてはこんなに嬉しい事はない!」

虞美人は、アルジュナの顔から目を逸らし、友人とは呼びたくはないが周りからはそう見えてるんだろうこれでも女の能天気な呵々大笑を見て頬を引きつらせた。

「私でそれなりならアストルフォきゅんやパリスちゃん君ならもっと似合うだろう!早速ミスタームニエルに報告だ!」

大きなスリットから生足が覗くのも厭わず元気に走って行くジュナスタを、必死の形相で追い駆けるアルジュナに、虞美人は人間嫌いながらも同じ振り回される側として同情してしまった。


 



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