一時保存からのこっそり
 2019.10.24 Thu 23:04


書いたはいいけど、自分が眠たかっただけなのがありありとわかるので、ボツにしたのをこっそり救済。
ギャグ要素が少ないのは私らしくない(`・ω・´)



任務終了後、機器の不具合で帰還ができないと知らされた。
1時間後かもしれないし、夜明けになるかもしれない。
アルジュナは、自分のマスターが発情期の猿のように取り乱さないか心配だったが、相変わらず想定の範囲に収まってくれなかった。

「わかったわ。なるべく早くしてね。」

アルジュナだけでなく、誰もがこの言いたい放題のマスターが現状に理解を示したように思っただろう。

「いいこと?私がわかったのは状況であり、怒ったところで疲れるだけだから大人しく待つけれど、決して不手際を許したわけではないのよ。」

ヘリウムでも吸ったかのようにペラペラとお喋りするときとは打って変わり、落ち着いた声音は力強い。

「私は寒くて眠たい。このことを十分念頭に置いたうえで、なるべく、早くよ。」

言いたいことを言いきって通信を切った後、大きく息を吸って吐き、そのままうなだれ、ようやく黙った。
最後の力を振り絞ったのだ、今すぐにでも柔らかなベッドに飛び込んでぐっすり眠りたいに違いない。
それが叶わぬ今、マスターは木の幹を背にどっかりと座り込んだ。
これ以上、無駄に体力を使うわけにはいかない。
何が起こるかわからないのだから、今のうちに回復できるだけしておいた方がいい。
落第生のマスターが冷静にそう判断したかどうかは、アルジュナでもはっきりとはわからない。
自分に素直にとった行動が功を奏するのが、このマスターの少ない長所だ。

「私が静かな方がアルジュナはありがたいだろうから寝る。何かあったら叩き起こして。」
「承知しました。」

マスターは胡坐をかき腕を組み、口元を引っ張り上げた襟に隠し、目を閉じた。
常日頃から低い体温を保つためだ。
アルジュナが隣に腰かければ、控えめに肩に頭が乗せられた。

「もう少し寄りかかっても大丈夫ですよ。」
「これで十分。」
「らしくありませんね。どうせ寝るならイビキをかくくらい徹底してください。その方が疲れもとれます。」
「私は歯ぎしりよ。どちらにしろお構いなく。私はどこでも眠れる無神経だからね。」
「中途半端が嫌いなマスターは、本当は私の膝枕で豪快に眠りたいところでしょうが、地面が冷たくてできないだけでしょう。今も、腰が冷たいのではありませんか?」
「セクハラ反対。」
「それは、私に抱えられるのが恥ずかしいのか、嫌なのか、どちらですか?」
「アルジュナが、マスターのためなら嫌なことも我慢する系サーヴァントである疑いが残ってるので、その分腹筋に力を入れてるの。」
「はい。その通りですが、私もよくマスターに嫌なことを強いています。相手のために自分を曲げるような殊勝な性格はしていませんから。」

アルジュナからは見えないが、マスターの目がうっすらと開くのを察した。

「あなたみたいな主との上下関係で腹の探り合いは無駄です。嫌なら嫌だとはっきり言い合えるのですから、今更しおらしくされても年頃の女性らしく恥じらっているか警戒しているとしか思えません。」
「私なんかも年頃の女として認識してくれる紳士的な精神性。ありがたいけど、だったら私が言わんとしてることもわかってくれてもいいと思うの。」
「はい。わかったうえで、もっと寄りかかるように勧めました。そして、恥ずかしいのか嫌なのか問いました。」

つまり、わかったうえで、自分の気持ちを遠回しに伝え、マスターの気持ちを明確に言葉で求めたと言っている。
マスターの唇が尖る。

「意地悪。」
「定期的に人を試そうとするマスターに言われたくありません。」
「年頃の女は繊細なのよ。」
「つい先ほど、どこでも眠れる無神経と伺いました。」

アルジュナが両手を広げれば、まだ遠慮がちなマスターが収まった。
マスターが言わんとしていることに答えるように、アルジュナは冷たい体を力強く抱きかかえた。
さっそくアルジュナの体温が沁み始めたマスターは、満足そうに目を閉じた。

「おかげさまで爆睡できそうだから、ちょっとやそっとじゃ起きれない。何かあったら蹴り起こして。」
「承知しました。おやすみなさい、よい夢を。」

この二人、なんだかんだ言って距離感バグってるんだよな。
せっかく超特急で復旧作業を終えたスタッフは、帰還許可をすぐに出すかどうか、非常に悩まされた。

 



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