人☆拍手お礼文☆113
2019/07/09 Tue 20:36
拍手ありがとうございます!
<攻撃は最大の防御>
※拍手お礼文72<隣の部長>の続編の続編の…
※お礼文☆109の続編
二人が同居しているという噂は、瞬く間に広まった。
「リヴァイ兵長、合議の稟議書です。ご確認ください。」
「ああ。聞きたい事もある。すぐに目を通す、少しそこで待て。」
「はい。」
他部署にあまり来る事がない王子だが、ここは実家の近所のチビ達ばかりなので居心地がよかった。
廊下よりもよほど、目が優しい。
「この件だが、」
「そちらは、」
二人で話していても、ひそひそされる事もない。
ミカサはハムスターが餌を頬張っているところを見ている少女のような顔をしているし、アルミンは仏のような顔をしているし、エレンは早く話が終わらないかな少しでも話せないかなという顔をしている。
可愛いやつらだ。
ミカサとアルミンは確実に気がついた上で、あからさまに見る目を変えたが、関係を変えようとする気は感じられない。
エレンは、もういろいろと心配だがミカサとアルミンがいるから大丈夫だろう。
「もう行っていい。」
「はい。失礼します。」
王子はメモを閉じ、押印された稟議書を受け取った。
残念そうなエレンに手を振り、事務所を出ようとしてリヴァイに呼び止められた。
「今日の晩飯はなんだ?」
「勤務中ですよ。」
「それくらいいいだろ。」
「シチューです。」
呆れが勝って照れる隙もない。
リヴァイは噂が広まってから、同居を隠そうとする事はなかった。
「お弁当も毎日おいしそうに食べてるよ。あれ、王子の手作りだったんだね。」
気の置けない仲良し幼馴染の飲みの席、ビールジョッキ片手に早速テーブルに突っ伏した王子に、アルミンは憐みの目を向けた。
「最初はあまりの食生活に俺のおかん魂が刺激されてさ。次は、家賃重視の曰くつき物件に住み続ける独身男性の存在を俺の親切心が我慢できなくてさ。」
「王子ってそういうところあるよね。」
「大丈夫よ。兄さんはそんなにやわじゃないから放っておいても。」
「俺も王子の飯食いたい。」
「また今度な、エレン。遊びに来るなら兵長にはおまえから言っといて。」
エレンは喜びビールを飲み干し、追加注文した。
飲み放題だ。
好きなだけ飲んだらいい。
王子もジョッキを煽り、芋焼酎を頼んだ。
「それで、これから二人はどうするの?」
「どうって?」
「うちは社内恋愛禁止だろ?」
「普通、男と男が同居してるだけですぐにお付き合いに結びつくか?」
「普通ならそうだけど、噂になってるじゃないか。だって、あの潔癖の兵長が他人と、しかも男と住むなんて、よっぽどの事だからね。」
「王子は黙ってシャキッとしていれば見目が麗しいから、表情筋が死んだ兄さんの隣にいると映える。」
「ミカサ、それはおまえもきっちり遺伝してるからな。クライアントにはもう少し愛想よくしろ。それだけの事で商談の勝率がアホほど変わる。おまえくらい可愛いなら尚更だ。」
「王子の目を信じよう。善処する。」
「そうしな。」
エレンはビール縛りだが、王子は日本酒を頼んだ。
「別にわざわざ事実を吹聴してやる事もねえし、バレたところで仕事に支障を来たさなきゃ誰も何も言わねえだろ。相手はあの人類最強だぜ?そもそも人望もあるし、妬みで喧嘩売るには命知らず過ぎる。」
「喧嘩を売られるのは君だろ?王子。兵長に密かに思いを寄せる女性達から嫌がらせを受けるんじゃないかい?」
「それなら問題ない。」
答えたのは王子ではない。
「私の中で最優先事項はエレンだけど、アルミンや王子も庇護対象だもの。危害を加えようとするやつらを私は許さないし、何より王子には正義感の強い妹がいるじゃない。」
「クリスタの事を言ってんなら、あいつは虐められてへらへらしてるやつが嫌いだから味方してくれねえよ。でも、ありがとな。ミカサ。」
頭を撫でられたミカサは、少しだけ頬を染めた。
エレンは気持ち良さそうに涎を垂らして寝ている。
それからしばらく、飲み放題の時間が過ぎても、3人は愚痴や思い出話に花を咲かせた。
「アルミン、おまえ酒強いな。」
「アルミンと酒を飲み交わせる人はそうそういない。よかったわね。」
「今日は楽しかったよ。忙しいのにありがとう、王子。」
「俺のが年上なのに割り勘で悪いな。」
「僕達の方が先輩だから。」
ミカサは軽々とエレンを背負った。
「私達は電車だけど、王子は?」
「そんなに遠くねえし、酔い覚ましがてら歩いて帰るよ。」
「そう。気をつけてね。」
「ミカサ、エレンを頼んだぞ。アルミン、ミカサを頼んだ。」
王子は、駅に向かう3人を見送り、踵を返し、一気に酔いが覚めた。
「〜〜〜ッ!こんな繁華街で悲鳴を上げるところだっただろ!?」
「すまない。何も考えずに迎えにきたはいいが、あいつら相手でも見られたくないかと思い直し、気配を消していた。」
「あいつら相手に今更何も気にしませんよ。それよりも上司に迎えにきてもらう方が恐れ多くて気になります。」
「終業後だ。俺は上司ではなくおまえの恋人だ。やりたいようにやる。おまえが気にする事はない。」
「はいはい。やっぱりあいつら相手でも、リヴァイさんが惚気てるところを見られたくないので、自重してください。」
「善処しよう。」
「そうしてください。」
「酔いを覚ましちまったな。飲み直すか?」
「奢りッスか?」
「どういうつもりでねだってるかによる。」
王子は酒だけで赤いわけではない顔で、リヴァイの顔を覗き込んだ。
「あんたは俺の年上の彼氏でしょ?」
「合格だ。いい酒を飲ませてやろう。」
「やったね!」
翌日以降。
攻撃は最大の防御と思っていたが、年下の彼氏の可愛いところを幼馴染達にも見られたくないと思い直した年上の彼氏が自重した事により、噂はそれ以上加熱する事はなかった。
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