人☆拍手お礼文☆108
 2018/12/08 Sat 23:38


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<言葉よりも何よりも>
※拍手お礼文72<隣の部長>の続編の続編の…
※お礼文☆104の続編



というわけで、デートする事になった。
と、明確に言えたらどれだけ気が楽だろうか。
一応洒落て来たクソ王子は、助手席で強くそう思った。
運転しているのは勿論、リヴァイだ。
巧みなドライビングテクニックで、物凄いスピードを感じさせる事はなく、交通量が多くてもひやりはっとする事もなく、順調に目的地へと連れて行ってくれる。
スーパーダーリン、と言っていいのだろうか。
社会的には、憧れもあって既に言われている。
ペトラやオルオが代表例だ。
王子が悩んでいるのは、一個人の特別な相手としてその言葉を使っていいのか、という点だ。
あの、多少強要された告白に対して、リヴァイが王子に好意的なのはわかったが、決定的な返事もなければ、それらしいsomethingも何もない。
脳内会議はこれまで幾度となく開かれたが、時間と気力の無駄に終わった。
結論は脳内会議室を出て本人に直接聞かないと出ないとわかっているが、どっちにしろ一発殴られそうで鍵すらかけている状態だ。

「今日は冷えるな。」

「そうッスね。晩飯は鍋にしたいんで、帰りに道の駅に寄って貰っていいッスか?」

「了解だ。それで、何鍋にするつもりだ。」

「最近野菜の値段も落ち着きましたからね。いい大根があればみぞれ鍋なんてどうですか?」

「文句のつけようがないな。肉は?」

「何がいいです?昼飯ガッツリ食う系ですし、豚はないとして、鶏モモも俺はキツいんで、つみれとかどうッスかね。」

「問題ない。シメはうどんか。」

「すみません。うどんを切らしているので、昨日のご飯で雑炊にしようかと思いましたが、うどんの方がよければスーパーにも寄って下さい。」

「みぞれ鍋を雑炊にできるのか。」

「できるのでそのキラキラした目を前に戻して下さい!」

「これくらいで事故るような腕してねえよ。」

「そうですけど!」

昼は蕎麦とソースカツ丼だ。
腹ごなしに城や寺社仏閣をめぐり、おやつはおやきかと思いきや、和栗のモンブランだ。
観光をもっとゆっくりするために夜も外食でいい気がするが、リヴァイは当然のように家で食べられるように予定を組む。
王子はそれが少しだけむず痒い。

「寝てもいいぞ。」

「へっ!?」

「疲れているんだろう。顔に出ている。」

「いえ、疲れてはいますけど、眠たいわけではありません。流れる景色を見るの、好きですし。」

「そうか。ならばいいが、みぞれ鍋のシメまでは起きていて貰うぞ。」

「だから大丈夫ですってば。」

ああ、むず痒い。



食事も観光も予定通り済み、門前町を散策する事にした。
王子の腹ごなしのため、リヴァイの小腹を満たすためだ。
王子は夕飯について考える事も億劫だが、リヴァイはソフトクリームを食べている。
行儀のいいリヴァイは、人混みで立ち食いはしない。
その間、手持無沙汰な王子は土産物屋を冷やかしていた。
リヴァイの視界の範囲でだ。
リヴァイはその姿を飽きもせずに眺めていた。
王子は黙って背筋を伸ばしていれば、イケメンだ。
それはリヴァイの贔屓目がなくても通じるだろう。
しかし、残念な事にその顔は疲れ切っている。
そして、猫背だ。

「あ、すみません。」

「いえ、こちらこそ。」

人混みの中で軽くぶつかり、謝罪された者だけが、その魅力に気がつくのだ。

「おい。」

「うおわっ!?」

「でけえ声出すな。迷惑だ。」

王子の背後から顔を出したリヴァイは、顔を顰めた。
王子に声をかけようとした女性は勢いを削がれ、会計を済ませた友人と合流して店を出て行った。
その位置にリヴァイが立つ。

「何をそんなに熱心に見ている?」

王子は深呼吸して動悸を落ち着かせた。

「綺麗な石だなと思って。」

王子が指をさしたのは黒曜石だ。
真っ黒で艶やかだ。
パワーストーンとしての効果は、魔除けと成長促進、行動力と集中力の強化だ。
忙しい部署の下っ端に相応しい。

「特産なんですって。最古のブランドって言われてるらしいッス。」

「ふうん。」

リヴァイは玉の大きさが違う数珠を見比べ、王子の腕を掴んだ。
王子の手首は細く、大きな玉が似合わないにも程がある。
小さい玉の方を当てて見れば、まあまあ見れた。
社会人になった時に母親から貰ったという腕時計の文字盤も黒で、丁度いい。
リヴァイは呆気に取られる王子を置いて、大小玉の大きさの違う数珠をレジまで持って行った。



王子は大根をおろしながら、にやけそうになる顔に必死に力を入れて、キュン死にを堪えていた。
帰りの車の中でリヴァイに貰った小さな玉の数珠は、さすがに料理中なので外しているが、目の届く所に置いてある。
洗濯物を畳みながら夕飯を待つリヴァイの逞しい手首には、大きな玉の数珠がついている。

「(俺はまだまだガキだな。)」

大人のリヴァイには、明確な言葉がなくても十分なのだ。
“これはいったい何なのか”と聞いたら、殴られたのは間違いないだろう。
聞かなくてよかったと、強く思った。
痛いのが嫌なのではない。
ロマンチストで繊細なリヴァイを傷つける事になっただろうからだ。

「(誕生日プレゼント、どうしようか悩んでたけど。食って消えるもん以外に何か買お。)」

リヴァイは物欲はないがセンスはいいので、社会人として必要なものは上等なものを揃えている。
数があっても邪魔にならない靴下、ハンカチがいいだろうか。
それとも購入意欲がないだけで、タイピンや万年筆なども喜ばれるだろうか。
後日、王子に相談されたエルヴィンは、二人の関係にうっかり気づいてしまったが顔には出さず、「リヴァイの趣味はクセがあるから一緒に買いに行く事を提案した方が喜ぶ筈だ」と、微笑みと一緒に助言した。
感謝し頭を下げる王子は、気づいていない。
リヴァイの誕生日がクリスマスである事を。
エルヴィンの助言が王子のためではなく、リヴァイのためである事を。
自分の誕生日に興味がなく、王子から貰えるなら何でもいいリヴァイだったが、王子にクリスマスに一緒に出かけようと提案され、浮足立たない訳がない。
リヴァイは、うっかり恋人達の日に男二人で出かけるという羞恥に耐えた王子に貰ったネクタイを締め、エルヴィンにもお礼を述べたのだった。

「ところでリヴァイ。王子へのクリスマスプレゼントは何をあげたんだい?」

「まだだ。」

「はは!いい歳したおっさんが抜かったな。」

「ふん。それはそれこれはこれと、王子が御所望なだけだ。」

「なんだ。うまくやってるじゃないか。」

「…つまらなそうに言うな。」

 



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