anotherstory‐V
 2011.11.18 Fri 20:54
「どういう、事……?」

ごめんというのは、何に対してなのか…

それに たった一人生き残った女の子でさえ…って…?


私は、まだ生きてるんだけど……



守れなかったって…何の事なの…?



レイが疑問に眉を寄せて、彼の顔を伺うと 彼はレイに視線を合わせた。



「レイ……オレ、王家から抜けて来たんだ」


彼女が目を見開いたのは当然だった。

王家から抜けたって……どういう事だろう。


仕える程の人間なら、収入だって悪くない筈、なのに何故…?


レイが彼に問うよりも早く、彼はそれを口にする。





「反逆者なんだ」




反逆者。

それを聞いて彼女は はっと息を飲んだ。


゛王家から抜ける゛ ゛反逆者゛

その二つを繋ぎ合わせれば自然と頭に浮かぶ言葉。




王家に逆らった人







「王家に逆らったの…!?」


「まあ、……そう言う事になるよな」



少しの苦笑い、彼は笑ってはいるけれども……目が笑ってなんかいなかった。

もっと こう…なんというか…。




瞳の奥に何か、強い意志を秘めている……そんな気がした。


「何…したの?」


「さぁ、…何だと思う?」


わざとしらばっくれるように私に問い掛ける彼。



なんだろう



「王家の家宝を売り捌いて金儲け!」

「オレ そんな風に見られてるの…!?」


「違うよね」



冗談はさておき。


本当に分からなくなってきた……。



彼は、何をしたんだろう






彼が瞳の奥に秘めているものは……




「ヒント…欲しい?」


「っ…!」


ば、バレてた…!?

私ってそんなに顔に出てるの…!


「うん、顔に書いてあるね」


「えっ!」


ほ、本当に…?


レイは自分の顔をぺたぺたと触って確認をする。

でも゛これでは分からない゛と 最終的にはポンプから水を汲み上げて 顔を見る始末……


「書いてないじゃない」

むっすりとした顔のレイに彼は笑う。

「その行動自体が答えだよ、レイ」

「あ…!」


顔を触って、水鏡で見たら 考えなくても分かる って言ってるんだ。


彼女は肩を落とし落胆。


「むぅ……」


「じゃあ 答えを教えて上げる」


陽気そうな彼の声。

それに釣られて顔を上げれば、彼の指がある物を指差していた。



「ぇ……?」

彼が指差してるのは……





「…わたし?」


「そういうこと、゛君゛だよ」



私がどうしたら 貴方が王家に逆らう事になるの…?



意味が分からない…



レイがまた疑問を顔に浮かべると、彼は あっ!と何かに気付くように声を上げた。



「あぁ ごめん、゛今は゛君って事になる…って話」


「それって どういう……」





「君の一族の処刑を止める……それで王家の反逆者になったって訳。


全てを守る事は出来なかったけど…

生き残った君だけでも……オレが守らないと」


彼はそう言って私に微笑みかける。


君は 優しい笑顔の裏に、とても重い使命を背負っているの…?


それを自分から……?




貴方が得する事なんて、何もないのに……。



「反逆者になって……アルファは、王家に何もされなかったの?」


「いや 何もされない程王家は甘くないよ、俺はしばらく牢獄行きだったな」


牢獄、行き……


檻の中に閉じ込められるって言われる…




「馬鹿、みたい…。

貴方にとって 良い事なんて何も無いじゃない…!なのに、なんでそんな事…」

レイが色々と言った後、彼女がふさぎ込むのを見て アルファは自分の背中に背負った剣を引き抜いた。


「オレはね、元は捨て子で王家に拾われて育ったんだ…。

すごく感謝してた…オレは一生王家に仕えていく、そういう気でいたんだ。


だけど…ある日、大臣達の中で一族を暗殺しようかという話が持ち上がった。


その一族の自然を操る力はとても強大で、王家側にとっては強い味方だった。


けれどもその反面、その力が強大過ぎた故に恐れられても居たんだ。


゛もしかしたら裏切り者が出るかもしれない゛


それで、一族は暗殺された。」

彼は重く溜め息を吐く。

その声は微かに震えていた。


「信じられないよな…。

自分を拾ってくれた王家が、自分の国の民を殺すんだよ レイ…。


そんな事 考えたくもなかった。


認めたくなんてなかった。



だから……オレ」



そうか…


この人も、…辛いんだ。




そうだよね、自分を拾ってくれた人が 人を殺すなんて、考えたくなんてないもの……



だから ゛哀しいの゛



彼女は腕を彼の首に回し、優しく抱き締める。



「レ、イ……?」


「今はもうこれ以上、何も…言わなくて良いよ……

貴方は 哀しいって気持ちを知ってるもの…

私はそれだけでもいい…


続きは、また今度……アルファが落ち着いたら聞くから」



私が何を言っても、アルファの気持ちが全て理解出来る訳じゃない…



きっと、貴方の気持ちは言葉でなんて 言い表せないから…






大切な人が死ぬのも…

信じていた人が 人を殺してしまうのも…


復讐をするのも……




貴方はそれを゛哀しい゛と言った。




貴方はその意味を知っているもの…。


今は、それだけで十分


だから、



私 貴方を信じるよ…。






アルファ……







「「ありがとう」」








.

コメント(0)



戻る
BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
あきゅろす。
リゼ