anotherstory‐U
 2011.10.18 Tue 13:00
゛哀しいんだ…゛


目の前の男に、私が刃を向けた後言われた意外な言葉がこれだった。



殺しに来たんでしょ?



それならさっさと剣を抜けばいいじゃないか……




なのに


何故剣を抜かない……


レイがキッと相手を睨むと、彼は言葉を続けた。


「君は、復讐に捕らわれて、自分自身が分からなくなってる…」


「は……」


何が、言いたい……



復讐に捕らわれて?


復讐をして何が悪いんだ。
私は十分にその権利があるじゃないか…


「私は自分自身の意志で復讐しようとしているの、復讐に捕らわれてなんかいない…!」


「じゃあさ、君はオレを殺してどうするの、次は王家に立ち向かうの?」

「……、そうだ。」




お前も王家側の人間なら、お前を殺して 次は王家に復讐する。


私達と同じ思いをさせるんだ……





「その後は?」


「 」



その…後…?



「殺した後 復讐した後 君は何をする訳。

ただ残るのは……」



゛きっと虚しいだけだよ゛




復讐は復讐を呼ぶ。


死は新たな死を……



「殺しても、死んだ人は 二度と戻って来ないよ…レイ」


「分かってるよッ!!!そんな事……


私が、一番 知ってるの」




知ってるから……



だから…



「同じ思いをさせたかった。

大切なものを失うのが、どんなに哀しいかを…


思い知らせたかった……」


顔を手で覆ったら、また涙が溢れてきた。


熱い涙が頬を滑る。




寂しい


哀しい



なんでこうなったんだろう…





神様……



何故ですか……



この質問を何回神に問うただろう

この質問を繰り返す度に 何度泣いただろう…



神に問い掛けても、無論 私のこの気持ちに答えなんて返って来ない筈なのに…。

また、虚しいような気持ちがぶり返してきて…寂しさが募る。



その代わり、私は温かい何かに包まれた。


愛おしい温かさに 顔を覆った手の指の間から外を見れば……


そこには 金色の髪があった。




「オレが無力なばっかりに……君を そんな気持ちにしてしまったんだろう。


オレがもっと早く……大臣達の意見を止められていたら。


強かったら……


こんな事に、ならなかったのに。


君が……復讐なんて事を考えなくても良かったのに…


本当に、ごめん……」

申し訳なさそうに…彼は言った。


たった一人生き残った女の子でさえ守れなかったのだと、呟いて……。









まだ、貴方を信じられない


でも…今は貴方が怖いとも思えないの。




何も分からない…


だけど、何となく貴方からは



あの時


王家から来た人達からした禍々しい感覚じゃない…



何か、優しいものを感じたから…。



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