独立世界
2012.05.13 Sun 16:18
「ちょっとお兄ちゃん!こんなの持ってくの?」
「異動だからな、一気に持っていったほうが後が楽だろう?」
荷物は仕送りしてくれるのに、と考え兄の鞄から一つ手帳を摘み上げて中身をぺらぺら捲る。
「だからってこんな…」
レイが一つまみに持ち上げた小さな手帳。
何やら女性名が沢山書き込んであるようだが・・・
彼女の表情が曇る。
「お兄ちゃんのすけべ…」
「何だそれは、!…っこれは俺のじゃないぞ!」
「だって、名前だってお兄ちゃんのって書いてあるもん」
否定していた兄もそれを聞いてレイの手から手帳を受け取る。
しばらくしてから、以外にも渋々納得したような"そうだな…"という声が聞こえた。
「でもこれは俺の字じゃない!そもそもこんな女たらしな……。」
女たらしな、手帳
「あ、この字大佐のだよ?」
「あいつ、嫌がらせだな。最後の最後まで俺のこと嫌ってる。」
アーベントが剣を抜いているのを他所に、レイは手帳を片手に白紙の紙に何か綴り始めた。
それに気付いた兄もまた隣からそれを覗き見る。
出来上がった文を見てレイが笑ったのを横目に見て、彼はその紙を手に取った。
「幸運を祈る…?何故こうなる」
「名前の頭文字、並べると文になるんだって前にリザさんが教えてくれたの!」
「へぇ、もっと増しな言葉を綴るんだったな。台詞が三流だ」
「あ、お兄ちゃんほんとはリザさんの言葉が欲しかったんでしょ?」
「、そんなんじゃない」
ぷいっと顔を逸らす大人気ない兄に少し苦笑していると電車の汽笛が鳴り出した。
それに釣られるように二人とも電車の窓から外を見る。
遠ざかる駅のホーム。
大総統府のあるセントラル
すべてが遠ざかってゆく…。
「もう、逢えないね」
俯いたレイが首に結んだリボンに手を掛ける。
「逢いたくなったら、遊びに来ればいいさ」
"そうだろう?"と問いかけ俯くレイの頭を撫でてあげればれば、寂しい顔をしていたレイはコクリと頷いて顔を上げた。
「新しい場所でも頑張れる、よね…?」
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