ライオン
2012
優しい陽射し 柔らかな鳥の声
空っぽになる あなたの愛した間取り
剥がれ落ちたペンキの細かな屑
ふたつ買った染みのついた皿
馴染んだそのすべての遊び道具を
固く縛り蓋をした
広く蘇る部屋
嘘みたいに明るい
ライオン
詰くなった檻から出ていくふたり
ずっと同じように笑っているだろうか
古い写真 今よりわたしは細く
顔の皺も 目蓋の厚さも違う
あなたの方は 腰に届くような髪
琥珀色のたてがみに見えた
鋭いその視線の裏に潜む
孤独な日々の営みを
わたしという絵具で
塗り潰せると思った
ライオン
詰くなった檻から出ていくふたり
また似てる人を探してしまうだろうか
ライオン
詰くなった檻から出ていくふたり
もう何処に居てもわたしを捜さないで
ライオン
詰くなった檻からあなたを放そう
ずっと同じように笑っているだろうか
天野月子
[*前へ]
[#次へ]
戻る