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目を見開いてその場をじっと見る。いくら見ていてもまた妖怪が現れる訳はなくて。けど逃げた様子は見られない。だってついさっきまで私に向かって来ていた。
このまま襲われても可笑しくないって思った。実際妖怪だってその気だっただろうし…。妖怪の顔が思い浮かび身体が震える。
特に強い奴ではなかったのに、けど不意討ちで行き成り来られるとこんなに怖いんだ…。いや、動きが遅かったのならまだ対応出来ただろう。
対応と言っても退魔法を唱えて、必要ならば九字を。それだけなのだけれど…弱い物ならそれで十分事足りると思う。
やっぱり油断大敵、少しの油断からこうなったんだと思う。だって、油断して居なかったら…。ぎゅっと唇を噛む。

「おい、大丈夫か」

「え…あ…花開院、君」

そういえばさっき妖怪が消える前に滅という声がしたっけ…?自分の事で一杯一杯になっていたから全く気が付かなかった。そうか、花開院君…それで妖怪が居なくなったんだ…。
妖怪が本当に居なくなったと認識出来、力が抜けて行く。怖かった。妖怪が襲って来るまでが一瞬の出来事に思えた。実際は一瞬では無かっただろうが、動かなかった体のおかげで早く思ったのかもしれない。
…もし、花開院君が来なかったら…?そう考えるだけで震えが止まらない。来なかったらこうして震える事も安心する事も無かった。涙も出てきて、何だか本当に情けない姿を晒してしまっている。
チッ、と小さく聞こえた舌打ちは花開院君の物だ。そりゃ、襲われている所を助けたのに泣くなんて面倒な事をされてしまえば舌打ち位出てしまうだろう。

「ごめっ、気にしないで良いからっ…帰って大丈夫だよ…」

震えと泣ている所為で出るしゃっくりの2つが重なりとても喋り難い。だけど花開院君に何時までも此処に居てもらうのは申し訳無いし、花開院君も困ると思う…多分。
花開院君は冷たくもあるけど、情がある所もあるみたいだから…。…私の事を全く気にして無いならそれで良いから、というかもしそうなら自意識過剰過ぎて恥ずかしいから一人にしてほしいな、と…。
めんどくせぇな、小さく呟いたであろう花開院君の声が耳に入る。人通りの無い此処でははっきりと聞こえ、花開院君の低めの声は耳に残る。
何か面倒な事でもあるのだろうか。私はこの事を口外するつもりはない。…思い出したくないから…。まだ目に焼き付いて消える事が無い妖怪の姿。震えが止まらない。

「おい」

「え…っ」

どうかした?そう聞きたかったけど腕を掴まれ強く引かれる。その力の強さと行き成りの行為に驚き縺れそうになったものの、きちんと自身の足で立つ。
花開院君は私が立ったのを確認してから手を離す。えっと…どういう事なんだろう…?吃驚して涙は引っ込んだ。

「行くぞ」

「え、あ、待って」

此方を一瞥してから歩き出した花開院君に戸惑いつつ、小走りになり後を追う。行くって何処に…?斜め上にある花開院君の顔をちらりと盗み見る。

「お前家どこだ?」

「え…」

花開院君が言った事が一瞬理解出来なくて、変な声が出た。聞き間違えだろうか…?だっていくらクラスメイトだからと言ってそこまでする義理は花開院君には無い。
第一、助けてくれただけでもう十分だというのにそこまでして貰うのは申し訳ない。それに迷惑ではないのだろうか…。こんな時間に出歩いているのだから何処か行く途中だったのでは?
そう思うと本当に申し訳なくて、思わず良いよ、と声を上げる。立ち止まり振り向いた花開院君は眉間に皺が寄っていて、見慣れたと思っていた表情だが肩が大袈裟なまでに跳ねる。

「良いから行くぞ。自分に有利な好意は受け取っといて損はねぇ。使えるモンは何でも使え」

な、んというか花開院君、強引なんだけど…。だけど花開院君の言う事は合理的で、もしまた妖怪が出たらと思うと甘えたくなってしまう。
行くぞと私の家を知らないであろうに歩き出す花開院君を急いで追う。

「花開院君!そこ右…!」

公園から出て左に曲がろうとした花開院君にそう言うと睨まれた。確かにもっと早く言えば良かったんだろうけど、先にどんどん進んで行ったのは花開院君の方で…。
私、悪くないよね…?内心思うもそれを口に出せる訳が無くて、チッと舌打ちをした花開院君に苦笑するしか無かった。



時折道の指示を出す以外、特に会話がなく、何処と無く気まずい。そんな雰囲気のまま家の近くまで来てしまう。何時もより歩いた気がするのはきっと気持ちの問題だと思う。

「花開院君、もう此処でいいよ。もうすぐそこだから」

「そうかよ」

少し面倒臭そうに放たれた言葉は今までの優しさから感情を隠す為にそう装った様に思えてしまい。変な方向に解釈してるのがバレたら花開院君に起こられそうだ。
街灯の明かりでははっきりと表情が見えないのが救いなのかも知れない。立ち止まった花開院君を追い越してから止まって振り向く。

「うん、わざわざありがとう。助かったよ」

おう、と小さく返事をして踵を返した花開院君。そのまま帰るのかと思いきや、何かあったのか花開院君は振り向いた。

「何かあったら言えよ」

「ぁ…うん…ありがとう」

きょとんと呆けつつ返した言葉。きっと返事を聞く気は無かったのだろう、私が言葉を発する前に花開院君は再び歩き出していた。
…花開院君、やっぱり面倒見いいし、変な所で優しい…。この数十分だけで大分花開院君に対する印象が変わった。
段々と離れていく花開院君をぼうっとしながら見ていたが、ふと我に返った。私も帰らなきゃ。また妖怪に遭遇したら洒落にもならないし…そう何度も花開院君に面倒を掛ける訳にはいかない。
なんだか凄く疲れた。借りた本を読むのは明日になるかも知れない。…本を読んでいただけに帰るのが遅くなったから少し複雑な思いがあるのは…まぁ仕方ないかなぁ…。





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