腕(かいな)に納まりし竜
2014.10.31 Fri 05:27
元親に抱き締められると
知らぬ間に涙が零れてくる。
初めて出会った頃の気持ちと一緒だ。
『もっと一緒に居たい』と
鬼神の腕の中で泣いた竜。
強く抱き締めてくる鬼神。
今、どんな気持ちで抱き締めてるんだ?
俺を…
責めてる訳じゃねぇ。
ただ、元親の気持ちが知りてぇんだ。
昨夜、抱き締められて
また泣いちまった俺。
意を決して、想いを伝えた。
まだだめだって、今言ったって
時が早すぎると解ってた。
でも、もう自分の気持ちに嘘付けねぇ。
今言わねぇと、もっと遠い場所に行っちまうと。手の届かねぇ場所に行っちまうと思ったんだ。
だから、言っちまった。
『好き、大好き』って二言。
でも、元親からしたら信憑性に欠けると
思われてるかもしれねぇ。
腕に抱かれし竜は、もう嘘つかねぇ。
嘘付けねぇよ。自分の気持ちを偽れねぇ。
何が真実で何が偽りか解らねぇと
元親は思う筈だ。
だが、もう一度鬼神の籠の中に
戻れるならば、誓う。
お前の鬼神の名に誓わせてくれ。
お前には二度と傷付く言葉は紡がない。
嘘偽りも紡がない。
真実だけを言の葉に乗せて…
自分自身のせいで、また地に堕ちた。
だから自分の力で天駆ける竜になる。
鬼神の名に誓う。
自分の力で這い上がるから
見ていてくれ。
[*前へ]
[#次へ]
戻る