大好きだったよ。
擦れた空気みたいな声で君が呟いた。
口元に浮かぶのは、あの日と同じ、陽だまりのような笑み。
瞳に映る空はくすんだねずみ色なのに、君の青は何処までも果てない。
貴方に会えて、幸せでした。
無色の雫が頬を伝った。
伏せられた瞼はもう、開かない。
白い頬が赤く染まることもない。
静かに、けれどとめどなく、彼女の生気は消え失せた。
もう、彼女は彼女でなくなってしまった。
それは酷く哀しいことである筈なのに、僕はついつい笑みを溢した。
これで世界は消え失せる。
嬉しいなぁ、
BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
リゼ