よりみち
*少し不適切な表現があるかもしれません。不快な方はお読みにならないでください。
「うん、お母さん仕事遅くなっちゃうからさ
冷蔵庫の一番上の
そうそう、それをチンして食べちゃって」
菜々子は、ぐっしょりと濡れたブラウスの袖を気持ち悪く思いながら続けた。
「風つよいんだから、窓開けちゃだめよ。うん、お願いね。じゃ」
携帯を切ると同時に、菜々子の唇は佐藤に塞がれた。
上唇に佐藤の伸びてきた髭を感じながら、菜々子は新鮮な空気を求めて顔を上にむけた。
それでも、佐藤の抱きしめる強さはかわらず
雨に濡れた菜々子の頬や首筋のしずくをすべて舐め取ろうとしているようだ。
「まって・・・」
菜々子は佐藤から離れると、ペットボトルのお茶を飲んだ。
「待てないよ・・・」
佐藤の湿ったスーツから湯気が立ちのぼりそうなほど、彼の顔は紅潮していた。
「わかってる。言っとくけど、寄り道だからね」
「ああ」
佐藤は上着を脱ぐと、椅子の背に放り投げ、ネクタイも捨てた。
立ったまま、菜々子のブラウスのボタンを外していく。
ズボンの前を膨らませながら、固い表情の佐藤をぼんやりと菜々子は見つめていた。
ぐっしょりと濡れたブラウスが肌を離れると、ひんやりと薄ら寒さを感じるが、同時に重いものを解かれた快感があった。
冷たくなった肌に、佐藤の愛撫は熱かった。
肩に、脇腹にゾクリとし、乳首へのくちづけで震えた。
そして、菜々子は何も考えなくなった。
「俺にも一口ちょうだい」
「ん」
ペットボトルのお茶を佐藤に差し出すと、菜々子はスカートのファスナーを確かめ、姿見で全身を写してから、にっこり笑った。
「明日からはまっすぐお家に帰る、いい子に戻りますんで。
よろしくお願いします。佐藤課長」
菜々子は振り返らずに部屋を出た。
ホテルのエレベーター前で、取り出した携帯の画面にあるサイトは
『〜きままに寄り道ブログ〜』
寄り道が趣味の、NANAKOの日記。
まっすぐ帰るのももったいなから、寄り道してこ!
小さな発見がある毎日に。
なんとなく、疲れたときに。
人生何事も経験。楽しいね。
冷たく湿ったブラウスは、やはり冷たく
脱ごうが、風呂に入ろうが
菜々子の肌が暖かくなることは、ない。
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