※小学生設定パロ
※基←緑
「ただいまー!」
学校から帰っておかえりなさい、と迎えてくれた姉さんにもう一度ただいまを言って、寒い廊下を速足で部屋へ向かう。
部屋にランドセルをさっさと置いて、水が冷たいのを我慢して手を洗った後、向かう先は決まっている。
「はぁー、さっむ」
冬の定番、猫も丸くなるぬくぬくおこたである。
早速暖まろうと炬燵に入ろうとした直後
「おかえり、」
「うわっ!?」
突然真後ろから声をかけられ咄嗟に振り向く
すごく間抜けな声が出たのが恥ずかしい。
「ヒロト!…ただいま」
「緑川、驚きすぎだよ」
そうくすくす笑いながら声の主であるヒロトは炬燵に入ってきた。
ん?ていうかなんで、
「なんで隣に入ってきてんの?」
「え、なんで」
ヒロトは当然のように俺が入っている一角に入ってきたのである。
今は俺達しかいないから向かい側とか、空いてるところは普通にあるのにだ。
別に狭苦しいわけではないけれど、やっぱり必要以上に距離が近い、と思う。
どうしてそんな事が気になるのかといえば、
俺がヒロトを好きだからだ
家族とか、友達としてじゃなくて
これはきっと、隣の席の女の子が友達とこっそり話しているのと同じような、
恋としての好きなんだろう。
そんな事知りもしないヒロトは何か問題でも?とでも言いたげな顔をして机に置いてあったみかんを剥きはじめた。
「いや、座る場所なら他にもあるし、…なんか近いし」
「だって寒いしさ。あれ、緑川冷たい」
「だから帰ってきたばっかだってば」
人の気も知らないでこいつは!それでも移動しようとか思えないあたり、やっぱり好きなんだと思う。
「緑川も食べる?」
「…食べる」
腹いせにヒロトが剥いていたみかんを引ったくってやった。
「あれ、そういえば皆は?」
「姉さんはさっき買い物に行ったみたいだよ。他の皆は外に行ったんじゃないかな」
「今日なんかあったっけ?」
他愛のない会話をして、いい具合に身体も
暖まると、だんだんと眠たくなってきた。
「ねむいかも…」
机に顎を乗せてテレビをぼーっと眺めていると、隣のヒロトが本当に眠たそうに目を擦りながら呟いた。
「俺も、ねむい」
炬燵の力は偉大である。
「ちょっと昼寝しよっか」
珍しくヒロトが宿題も後回しに昼寝を提案してきた。
枕代わりに座布団を折り曲げて寝る気満々である。
「珍しいね、いつも風邪ひくって注意してるのに」
「うーん、たまにはこういうのもいいかなって」
「うん。すごくいいと思うよ!」
そして肩まで布団に潜るとヒロトはころりと反転してこちらに背中を向けてしまった。
ちょっと残念。俺はといえば相手がこちらを見られないのをいいことに、眠りに落ちるまでヒロトを見ていようと思っていた
うわぁ 女々しすぎる。
でもしょうがないだろう。好きなんだ。
本当に、後ろ姿でも見つめていたいと思うくらいには。
「…………」
さっき相当眠そうにしていたし、きっとヒロトはもう寝ているだろう、と
そろりと指で彼の背中に触れてみた。
そのままゆっくり、指を滑らせ伝わらない想いをかいた。
『 すき 』
ああ、ばかだろ自分。恥ずかしすぎる。
「…緑川、今何かした?」
「っ!!?い、や…別に?おやすみっ」
「………そう?おやすみ」
(お お 起きてたのかよぉぉぉぉ)
急いでヒロトに背を向ける。(焦りすぎて寝返る時に肩をぶつけた。いたい。)
うわぁ、うわぁ、どうしよう。
でもヒロトは何されたかわかってなかったみたいだし、ごまかせたみたいだし、大丈夫 だよな…?
ああもうそういう事にしよう!
ほんのすこし伝わらなかった事を残念がる自分に無視を決めこんで、俺は眠りにおちることにした。
(くっつくためにわざわざ隣に座ったとか)
(絶対言えないと思ってたんだけど)
(…緑川がなんてかいたか、わかっちゃった。)
*