ナルトを好きになったのは、いつだっただろう。

気づいた時には、どうしようもないくらいに惹かれている自分がいた。


けれど、ナルトが自分を見てくれることなんてないことも分かっていた。

いつもみんなから慕われるナルトのたった一人の特別になんて、絶対になれるわけがない。


だからあの夜だけは、自分の募りすぎた想いを受け入れてもらえたかのようで。

たとえ酔った勢いだったとしても、あの瞬間は間違いなく幸せだった。







『好きなんだ、サスケ』


サスケは腕の中で、ただ呆然とナルトを見つめていた。


今自分はナルトに抱きしめられている。

そして、一体何と言われた?


「サスケェ‥俺、本気だってばよ」

本気で、お前が好きだ。
ずっと、好きだった。

切なげに告げられる言葉が、信じられなかった。
自分の都合のいい夢なんじゃないか、そう思った。


けれど。

『サスケ…、サスケ…』

どくん、と鼓動が高鳴る。

同じ、だ。


今自分を抱きしめるこの力強い腕が、忘れられないあの夜の記憶と重なってしまった。

自分は、確かにこの腕の温もりを知っている。

自分にとって、たった一つの幸せの温もり。


「ナル…ト…」


夢じゃ、ない。


「…サスケ…?」


夢なんかじゃ、なかった。


「…ナルト…ナル…トォ…」


溢れてくるものを、止めることなんてできなかった。


「え…サ、サスケェ…?!な、泣い…泣いて…?!」

サスケの様子に気づき、慌てて腕を離そうとするナルトを無視して、サスケは今度は自分から彼の背中へと腕を回した。

好きだ。

この男のことが、こんなにも。


「…お前は…物好きになんて…ならなくていい…」


もう一生言えないかもしれないと、思っていた。


「サスケ…?」


「…ナルト…。三ヶ月くらい前、同期で飲み会があったことを…覚えてるか…?」


「…………は…?」


「…覚えていないのか?」


「い、いや…覚えてはいるけど…な、何でいきなりそんな話になるんだってばよ…?」

おそらくナルトは先ほどの自身の告白の返事を期待していたのだろう。
突如泣き出し、話まで変えてしまったサスケにナルトはわけが分からず困惑し始めていたが、それを気にすることなくサスケは続けた。


「…その飲み会が終わった後…俺は酔い潰れた男を一人、家まで送り届けた。その時…酔っていたその男に…ベッドに押し倒された…」


「……な…っ、…つまり…子供の父親は…同期の誰かってことか…?同期の誰かが…お前を無理矢理襲ったってことかよ…っ?!」


「……ウスラトンカチ。同期の中で、酔い潰れて俺が送らなきゃならなくなる男なんて…一人しかいねぇだろ…」


「………え…?」


怒りから再び困惑の表情に変わるナルトに、サスケはフッと小さな笑みを浮かべた。

ナルトの手を取り、まだあまり目立った膨らみのない自身の腹へ、そっと添えさせる。


「このお腹にいるのは…お前の子だ、ナルト」

お前が、この子の父親なんだ。



そう告げた瞬間、サスケは再びあの逞しい腕に抱きしめられていた。


「…………ほんと…なのか……?嘘じゃ、ねぇんだよなぁ……?」

縋るようにこちらを見つめるナルトの声が、震える。

そんなナルトに、サスケは変わらない笑みで頷いてみせた。


「っ……でも…だったら俺は…サスケに最低なこと…したってことだよな…!?記憶はねぇけど…飲み会の夜、俺がサスケを無理矢理……、っ?!!」

ナルトが最後まで言葉を発する前に、サスケは自身の口で彼の口を無理矢理塞いだ。

ナルトから謝罪の言葉など、聞きたくなかった。


「俺は、お前に無理矢理されたわけじゃない…。言っただろ?そいつが好きだったって…。俺は、望んでお前を受け入れたんだ」


「…サスケ…」


「俺も、お前が好きだ…ナルト」


やっと、言えた。



「……サス、ケェ…!」


「…ナルっ…んっ…!」

今にも泣き出しそうな、けれど心から嬉しそうな。
そんな何ともいえない表情のナルトに、先ほど自分がしたのとは比べものにならないような深さで唇を奪われた。

口内にナルトの舌が入りこみ、甘く吸われてしまえば頭が痺れて何も考えられなくなる。


ナルト、ナルト。

止まっていた涙が、再び溢れそうになっていく。


叶わぬ恋だと、諦めていたんだ。



それでも。


涙が出そうなほどの幸せは、

確かに今ここにある。





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遅くなってすみません…。

やっと両想いになれたナルサスコ。
次回、最終話予定です。



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