生徒×教師パラレル。
境界線
「サスケ〜!!」
チャイム5分前。
朝のHRのために担当するクラスへ向かっていたサスケは、自分を呼ぶ声にゆっくりと振り向いた。
「‥今日も遅刻ぎりぎりか、うずまき」
いつものことだと思いながらも、サスケの声は溜め息混じりになる。
「ぎりぎりでも、遅刻しなければいいんだってばよ!」
そう言ってサスケの横に並ぶ生徒、うずまきナルト。
「おい、いつも言うが生徒は先に行け。毎日毎日教師と一緒に教室へ行くな」
「何で〜?サスケと教室に行くくらい別にいいじゃん」
「あと、その呼び方もやめろ。代理とはいえ教師を名前で呼び捨てにするな」
サスケがそう言えば、ナルトはいつものように、名前のほうが呼びやすいも〜ん、と言う。
ナルトたち生徒にとっては校内で一番年の近い先生として親しみを込めているだけなのだが、サスケ本人には全く伝わっておらず、ただ年が近いから嘗められているだけにしか見えていなかった。
サスケがこの高校へきたのは1ヶ月前。
ナルトのクラスの担任が怪我で入院し、自分はその代理となった。
担当することになったクラスには個性的な生徒が多く、その中でもこのうずまきナルトという生徒は、個性的どころか校内でも有名な問題児だった。
地毛らしいが、金髪に蒼い瞳という目立つ容姿。
スポーツは万能だが、赤点とサボりの常習犯。
罰として居残りさせたこともこの1ヶ月で何度かあった。
何を考えているのか、いまいち掴めない生徒。
サスケの中で、ナルトはそんな印象だった。
「連絡事項は以上だ」
サスケの言葉で、起立、礼、と声がかかる。
HRが終わり、サスケは教室を出ていく。
真ん中の一番後ろに座るナルトは、大きな欠伸をしながらそんな姿を見送っていた。
「お前、今日も遅刻しなかったんだな〜」
聞こえた声に、ナルトは眠い目を擦りながら視線を向ける。
横にはクラスメイトのキバの姿。
「当たり前じゃん。遅刻してたらサスケと全然話す時間ねぇもん」
ナルトがそう呟けば、キバはニヤリと笑う。
「お前ホント、サスケが大好きだな〜。一目惚れだったか?」
からかい口調な彼だが、本当は応援してくれているのをナルトは知っている。
1ヶ月ほど前。
臨時のクラス担任としてこの高校に転任してきたサスケに、ナルトは晴天の霹靂とも言うべき一目惚れをしてしまった。
今まで気になった女の子は何人かいて、付き合ったことはないものの、それなりに何度か恋はしてきた。
男にそんな感情を抱いたことなど全くない。
それなのに。
不覚にも初めて会った教師に、しかも男に、呆気なく心を奪われてしまったのだ。
「なぁ、キバ」
不意に真剣な声で呼ばれ、キバはニヤリと笑みを浮かべていた顔を戻す。
「ん?」
「サスケ、あとどれくらいこの学校にいんのかな?」
サスケが来て1ヶ月。
元々のこのクラスの担任、カカシの怪我は、重傷というほどのものではなかった。
「まぁ‥あと1、2ヶ月くらいだろうな」
キバの言葉にナルトは俯き、小さなため息を漏らす。
残された僅かな時間、ずっとそばにいたい。
そしてあわよくば想いも告げて、恋人に。
たとえ相手が教師だろうと男だろうと、この想いだけは貫きたかった。