ずっと好きだった。

昔からサスケのことだけが、好きで好きでたまらなかった。


いつか絶対、サスケを自分に振り向かせてみせると決めていた。

それなのに今、サスケが誰かに掻っ攫われそうになっているなんて。




「‥‥誰の子、なんだってばよ‥?」

声が、震えた。


サスケと特別親しい印象の男なんて、ナルトには全く思い浮かばなかった。

けれどサスケが実際妊娠している以上、確実にいるのだ。
サスケが特別な行為を許す、たった一人の男が。


後ろで、僅かに息をのむ気配がした。
子供の父親がナルトでないことに、いのが驚いているのだろう。


「‥っ」

ナルトの問いに、こちらを見つめていたサスケの瞳が揺れ、何かを堪えるような表情になる。

ベッドのシーツを握りしめたまま、サスケは小さな声で呟いた。


「‥‥‥父親は、いない」


「?どういう意味だよ‥?」


「‥そのままだ。この子供には‥父親なんていない」


「は‥?そんなわけねぇだろ?サスケには付き合ってる男がいて‥‥そいつとの子供、なんだろ‥?」

いつかサスケは‥そいつと結婚するんだろ‥?

そんな男なんて絶対に認めたくなかったが、あのサスケが好きな相手以外にそんな行為を許すなんて思えない。
だからそう言っただけなのに、何故かサスケの表情は悲しそうに歪んだ。


「‥サスケ?」


「‥‥‥付き合ってなんか、いない。結婚も‥できない‥」


「‥?」


「‥‥俺は‥確かにそいつが好きだったが、そいつには‥他に好きな女がいる。だから‥付き合ってもいないし、結婚もできない‥」


諦めや悲しみ、いろんな感情が入り混じったその表情から、相手の男への一途な想いを感じてしまう。

その、他に好きな女がいるという男だけが、サスケにこんな辛い表情をさせているのだ。


どうして。

自分なら、サスケにこんな表情は絶対にさせないのに。


込み上げるのは、悔しさと怒りだ。


その男は自分がずっと好きだったサスケにこんなにも想われていながら、他の女が好きで。

そして何より。


「‥そいつは‥他に好きな女がいるくせに、サスケに手ぇ出したってことだよな‥?」


「‥‥‥ナルト?」


「つまり、サスケの気持ちを利用して手ぇ出したってことじゃねぇのかよ‥?挙げ句妊娠までさせて‥!そいつに好きな女がいるかどうかなんて関係ねぇだろ、男として責任取らせるべきだってばよ!」


どうしても許せなかった。

サスケをこんなふうにしておきながら、その男はのうのうと好きな女と幸せになろうとしているのか。


「なあ、そいつの名前教えろってばよ。俺がそいつ連れてきてやるから!」

俺がその男を取っ捕まえて、サスケを一生大事にしろと言ってやる。


目を見開くサスケに男の名前を問い詰めるが、どうやっても絶対に答えようとしない。
小さく首を横に振り、やめろ、と呟く。


「‥気持ちを利用したとか、そんなんじゃねぇよ。お互い酔った勢いでこうなっただけだ‥誰かが悪いわけじゃない。俺は‥そいつには、本当に好きな相手と幸せになってもらいたいんだ‥」


「じゃあサスケの幸せはどうなるんだってばよ?他の奴と結婚すんのか‥?」


「‥‥子供がいる俺と結婚したいなんて、そんな物好きはいねぇよ。それにもう‥そいつ以外に好きになれる相手なんて、考えられない‥」


「‥っ、でも‥それじゃあサスケが‥!」


「‥‥でもまあ、その物好きがいい奴だったら‥少しくらい考えてやってもいいけどな‥」



どくん、と胸が高鳴った。


もしかしたら、最後の言葉は半分冗談のつもりだったかもしれない。

けれどナルトにとっては、暗闇の中に見えたほんの僅かな光のようだった。


サスケと幸せになりたい。
何よりも、サスケを幸せにしたい。


気づいたら、手は伸びていた。



「じゃあ俺が、その物好きになってやる」


サスケの細い体を、ぎゅっと抱きしめる。


「俺がその子供の父親になって、サスケだけを一生大事にする」



サスケへの想いだけは、誰にも負けない自信がある。

後悔なんて、させやしない。




「好きなんだ、サスケ」





――――――――――

やっとナルトの告白。

今回空気になってしまったいのさん、申し訳ない。




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