「‥‥‥妊、娠‥?」
サスケが、妊娠?
言葉の意味は理解できるのに、それを事実として受け入れることができなかった。
できるわけが、なかった。
驚愕に目を見開いたまま呆然と呟いたナルトに、いのは不思議そうに声をかける。
「ナルト?」
「‥‥‥っ」
「何よ、どうし‥‥ちょ、ナルトっ!!?」
いきなりどこ行くのよ!?
突如走り出したナルトに慌てた声がかかるが、返す余裕はなかった。
サスケ、サスケ、サスケ。
信じられない。
信じたくない。
サスケに恋人がいるなんて、聞いたことがない。
今までずっと、恋愛なんて興味がないと言って誰のモノにもならないサスケを見てきたのだ。
だから、違う。
妊娠なんて、絶対に何かの間違いだ。
まるで自分に言い聞かせるかのような想いで、ナルトはサスケがいる部屋へと向かった。
「サスケ‥」
部屋に入ると、サスケはまだ幻術にかかったままベッドで眠っていた。
もう一度思い出す、いのの言葉。
『サスケくん、妊娠してるわよ』
違う、よな?
お前が妊娠なんて、有り得ねぇよな?
早くサスケ自身の口で、いつもの呆れたようなあの口調で、そんなわけないだろって、はっきり言ってほしい。
サスケの手をぎゅっと握り、そう強く願っていると、やっと見つけたのだろういのが部屋に入ってきた。
「もうナルト!いきなり飛び出してくから何かと思えば‥サスケくん、まだ眠ってるんだからね?」
「‥‥‥分かってる‥」
「確かに早くサスケくんに報告したいのは分かるけどさぁ‥」
「‥‥‥」
「?ナル‥」
「‥‥‥ん‥‥」
僅かに漏れた声に、ナルトといのは素早く反応した。
「サスケ!?大丈夫か!?」
慌ててナルトが声をかけると、サスケは気づいたらしく閉じていた瞼をゆっくりと開いた。
「‥‥‥ナ‥ルト‥?」
「大丈夫か?調子はどうだ?」
「‥‥‥大、丈夫だ‥」
「そっか‥」
サスケの顔色は、先程よりも大分良くなっている。
ナルトは安心しながら、握った手に少しだけ力を込めた。
しかしその時、サスケが突如はっと我に返るようにビクッと反応したのが分かった。
‥え?
いきなりどうしたのかと驚いたナルトは思わず握っていた手を離してしまうと、その手はベッドの上に落ち、奮えながらシーツを握りしめていた。
「‥‥サ、サスケ‥!?」
まるで怯えるような姿に困惑したナルトは、慌てて後ろに立ついのを振り返った。
「サスケくん、どうしたの!?どこか苦しいの!?」
サスケの様子に気づいたいのもすぐに駆け寄るが、サスケは首を横に振り、小さく違う、と呟く。
じゃあどうしたのかと問えば、今度は苦しそうな顔で、けれど何かを覚悟したような顔で、サスケはこちらへ視線を向けた。
「‥‥もう、分かってるんだろ‥?」
「‥え?」
「‥医療忍者であるいのが検査すれば‥‥気づかないはず、ないもんな‥?」
「‥‥‥っ!!」
どくん。
表情が強張る自分を、どうすることもできない。
サスケが何を言おうとしているのか、嫌でも分かってしまった。
『大好きな彼女とともに、ゆっくりと幸せな未来を掴んでいけばいい』、なんて。
そんな楽観的な考えを持っていた自分は、今までどれだけバカだったのだろう。
「‥‥サスケ‥‥お前‥本当、に‥?」
嘘だと、言ってほしかった。
もしもサスケが嘘だと言ってくれるなら。
「‥あぁ‥本当、だ」
俺は、妊娠してるんだ。
他の誰が何と言おうとも、
自分はサスケだけを、ずっとずっと信じていくのに。
――――――――――
観念してナルトに妊娠を告げるサスケ。
そんなサスケにナルトは‥?
やっと少し終わりが見えてきました‥。