「母子共に問題なし!お腹の子は順調よ」


「‥あぁ」


にっこりと笑って定期健診の結果を告げるサクラに、サスケは今日も安堵とともに自身の腹に触れる。

まだほとんど腹の膨らみはないが、こうして腹に触れるのはサスケにとって毎日の日課となっていた。



「ふふ」


不意にサクラの小さな笑い声に気づき、サスケは腹を見つめていた顔を上げた。


「‥サクラ?」


「何かお腹を見つめるサスケくんの顔、すごく幸せそうだなぁと思って」

ナルトのことが本当に好きなのね。
楽しそうに笑い出すサクラに、サスケは言われた意味を理解して思わず顔が真っ赤になるのが分かった。


「な、俺は‥‥別に‥」


「今さら照れなくてもいいのよ。私はすっごく嬉しいんだから」


「‥嬉しい?」


「サスケくんのそんな幸せそうな顔、初めて見たから」

そう言う彼女の表情は本当に嬉しそうで、彼女がどれだけ自分の幸せを願ってくれているのかが伝わってくる。


あいつの子を、本当に自分が産んでもいいのだろうか。

サクラと就任式後にナルトに報告すると約束はしたが、それでも正直躊躇する気持ちが消えないのは確かで。
そんな自分の気持ちに、彼女はひそかに気づいているのかもしれない。

彼女の言葉に、本当に産んでもいいんじゃないかと思えるのが不思議だ。


「‥‥ありがとう‥」


無性に照れくさくなりながらも心からの礼を告げれば、サクラは一層嬉しそうな笑顔を浮かべた。










「本当に大丈夫なのか?まだ仕事が残ってるんじゃないのか?」


「いいのいいの!今日はもう任務はないし、残りの仕事は大して急ぎでもないしね!」


健診を終え、サスケはサクラとともに家への帰り道を歩く。

サスケが何度一人で帰れると言っても、心配だから家まで送ると聞かないサクラに、半ば強制的に送られているのが今の状態である。


しばらくして多くの店が建ち並ぶ里の中心街に辿り着くと、サクラはにっこりと笑ってサスケを振り返った。


「そうだ、サスケくん。今日の夕飯は何にするの?」


「‥いや、まだ決めてない‥」


「ほんと?じゃあ今日は私が作ってあげるわ!」


「‥‥‥え?」


「食事の栄養管理も担当医の仕事だもの。任せて!」


「‥ちょ、おい、サクラ?!」

サスケの返事を待つことなく、はりきった様子のサクラは急いで近くの八百屋へ行ってしまった。


その場に残されたサスケがどうしようかと一人悩んでいると、不意によく知る声で後ろから名を呼ばれた。




「サスケ?」


どくん、と心臓がこれ以上にないほど大きな音を立てた気がした。

一瞬、ただの聞き間違いかと思った。


けれど自分がこの声を聞き間違えるはずなどないことも、よく分かっていた。


ゆっくりと振り返った先には、会いたいけれど会いたくないとも思っていた、金の髪と青い瞳のあの男。


「‥‥‥ナル、ト‥」


「サスケ!すっげぇ久しぶりだってばよ!!えーと、何ヶ月ぶりになんのかな?」

嬉しそうな笑顔で、ナルトはこちらへ駆け寄ってくる。

ナルトのそばには同期のシカマルやキバ、チョウジの姿もあったが、ナルトが何か言ったらしく、三人はそのままナルトを残して去っていった。


「俺ってば昨日長期任務から帰ってきたばっかでさ、今日は休暇もらってたんだ!もしかして、サスケも今日は任務休みだったのか?」


「‥‥‥‥まあ、な‥」

任務用の上忍服ではないサスケに気づいたのだろうナルトに、サスケは曖昧に小さく頷いた。


「そっか、休みが重なるなんて珍しいよな!サスケは今一人か?買い物?」


「‥いや、サクラが‥」


「え?サクラちゃんもいんの?」

キョロキョロと辺りを見渡すナルトに、今彼女は買い物中だと伝えようとしたところで、タイミングよく後ろからサスケを呼ぶ声が聞こえてきた。


「サスケくん、お待たせ〜‥て、え?ナルト?!」


「あ、サクラちゃん!久しぶりだってばよ!!」

サスケと同じく驚いた様子のサクラに、気づいたナルトは元気よく笑顔で手を振った。



「‥‥そっか‥。あんたついに帰ってきたのよね‥」

何か考え込むように複雑な表情で呟いたサクラの言葉に、ナルトは不思議そうに首を傾げる。


「あ、サクラちゃんは知ってたのか?ついにって?」


「‥ううん、何でもないわ。それよりナルト、あんたこれから用事ある?」


「いや?今日は一日休暇だし、ちょうど家に帰るところだったってばよ」


「ならこれ持って、サスケくんを家まで送ってあげてくれない?」

私、ちょっと用事を思い出したの。
そう言って差し出したのは、サクラがたった今買ってきた買い物袋である。


「おい、サクラ?!!」

いきなり何を言い出すのかと慌ててサスケが声をかけるが、サクラは気にすることなくナルトに買い物袋を押し付けている。


「これ女の子が持つにはちょっと重いの。別にいいわよね?ナルト?」


「おう!そういうことなら俺は全然構わねぇってばよ!」

笑顔で買い物袋を受け取るナルトに満足そうに頷き、サクラは今度はサスケへと視線を向けた。


「サスケくん。私は無理になっちゃったけど、代わりにナルトにでも夕飯ご馳走してあげて」


「は?!サクラ、さっきからお前何言って‥!」


「じゃあ私、仕事に戻るわね」


「おい!サクラ!!?」

有無を言わさない笑顔で去っていくサクラに、彼女がわざと自分をナルトと二人にさせようとしていることに気づく。
しかしだからといってそれを素直に受け入れられるわけなどない。

どうにか引き止めようと咄嗟にサクラへ手を伸ばすが、その手が彼女へと届く前に、同じく引き止めるかのようにもう片方の手が後ろからぎゅっと握られた。


「サスケ」


振り返れば、真っ直ぐにこちらを見る青い瞳とぶつかった。


「‥‥‥ナルト‥」


「俺がちゃんと家まで送るから、行こ?」


「‥‥っ‥‥‥」


優しく手を引かれ、サスケは抗うこともできないままに足を進めた。





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仲良しなサスコとサクラを書くのが大好きです。




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