「うめぇ〜!!サスケの作った飯食うなんて初めてだってばよ!」


「‥もっと落ち着いて食えよ。喉詰まるぞ」


そんなに腹が減っていたのか、がつがつと勢いよく皿を平らげていくナルトに、サスケは呆れたように呟く。

しかし素直にうまいうまいと繰り返すナルトには正直悪い気はしない。
成り行きで夕飯を作ってしまったことを少し後悔していたサスケだったが、結果的には作ってみてよかったかもしれないと、無意識に小さな笑みが浮かんだ。


「サスケ?何が面白いんだってばよ?」

うっかり浮かべてしまった表情に目敏く気付いたナルトが、サスケの顔を覗き込もうとしてくる。


「‥っ‥‥別に何でもねぇよ‥。‥それより‥、今回の任務はどうだったんだ」


「‥え?あーうん‥」


咄嗟にごまかそうと話題を変えたサスケだが、今回の任務と聞いて一瞬複雑そうな表情をしたナルトに、今度は自分のほうが首を傾げる。


「どうした?」


「‥いや、どうってわけじゃねぇんだけど‥無駄に疲れたっていうか‥」


「‥何があったんだ?」


「‥‥今回の任務は大名の護衛だったんだけど‥俺、もうすぐ火影になるだろ?だからさ、火の国のいろんな人たちに‥挨拶し回ってたんだよ。任務中ずっと」


「‥つまり、自分が期待していた任務じゃなかったから拗ねてるだけかよ」

バカじゃねぇのか、と呟くサスケに、ナルトはむっとした顔で言い返す。


「そ、そんなことで拗ねるかよ!火影になるんだから、それくらいで文句言わねぇよ!ただ‥」


「‥?」


「‥火の国上層部の娘とか孫娘とか紹介されて、ちょっと大変だっただけだってばよ」


「‥‥‥‥紹介‥」

ナルトの言葉を繰り返しながら、サスケは目を見開く。

今ナルトに彼女らを紹介するということは、おそらくいずれは見合いさせることも考えてのことなのだろう。


「‥‥‥その中に、お前が気に入った女は‥いたのか‥?」

どくん、と緊張して強張る顔を見られたくなくて、サスケは僅かに俯く。


もしもナルトから『いた』という返事を聞いてしまったら、自分は一体どうすればいいのか。


サスケの中でさまざまな考えが浮かんでいるなか、ナルトは一切迷うことなくはっきりと告げた。


「へ?別に気に入った子なんていねぇってばよ」


ナルトの言葉に、サスケは安堵とともに強張っていた顔が戻っていく。


しかし、良かったと思う間などありはしなかった。



「そもそも俺、好きな子いるしさ」


照れくさそうな顔でチラリとこちらを見るナルトに、どんな反応をすればいいのか分からない。

目の前が真っ暗になるとは、まさにこのことだと思った。


『好きな子がいる』

ナルトは今、はっきりとそう言ったのだ。



「‥‥っ‥!!」

認識した途端、突如サスケを襲ったのは最近毎日のように経験している、あの激しい吐き気だった。

手が僅かに震え始め、慌てて持っていた箸をテーブルに置く。


しまった、とサスケは内心で舌打ちをする。

目の前に、ナルトがいるのに‥。


気持ち悪さに口を手で押さえ、サスケは必死に席から離れようとする。


「サスケ?どうした?!」

そんなサスケに気付いたナルトが、驚いた声で駆け寄ってくる。


「‥はぁ‥‥何でも‥、ない‥‥」


「何でもないわけねぇだろ!顔色悪ぃぞ!!」


「‥‥‥ほんとに‥、大したことは‥」

ない、そう言おうとした時、突然サスケの体がふわりと浮き上がった。


「‥なっ!!?」


「俺は医療忍者じゃねぇから、こんなとこでごちゃごちゃ言っててもしょうがねぇ。木の葉病院に連れてく!!」


「‥‥やめろ‥待て‥!」


「待たねぇ!急ぐからしっかり掴まってろよ!!」


自分を横に抱き上げながら、ナルトは急いで玄関へ向かう。

サスケが止める間もなく、ナルトは部屋を出た。





「‥‥待て‥余計なこと、するな‥。すぐに‥‥、落ち着く‥」


「強がるんじゃねぇよ!!体調悪ぃんだろ!?何かの病気だったらどうすんだ!!」


病院へ向かっているあいだもサスケは何とか止めようとするが、ナルトは自分の話など全く聞こうとはしない。


「‥‥病気なんかじゃ‥ねぇよ‥。早く‥下ろせ‥」


「嫌だ!!このまま何もしずに、お前に何かあったら‥俺は‥」


不意にナルトの声色が変わったことに気付き、どうしたのかとサスケが下から覗き込めば、彼は一旦立ち止まってこちらを悲しげな表情で見つめていた。


「‥‥‥ナル‥ト‥?」


「なぁ、俺‥お前にもしものことがあったら‥もう生きていけねぇんじゃねぇかって思う。それくらいお前が‥」

大事なんだ。

ナルトの今まで聞いたことのない必死な声は、サスケから抵抗という二文字を簡単に奪っていく。


卑怯だと思った。


『好きな子いるし』

好きな子がいるくせに、仲間である自分にはこんなことを平気で言ってくる。


中途半端な優しさなんていらない。



今すぐにでも本当のことを伝えて、一生自分だけに縛り付けて。

いっそ何もかも捨ててそうできたなら。


サスケは走るナルトの胸に顔を埋め、ぎゅっと彼の服を握りしめた。





――――――――――

何かいつもこんなパターンですみません‥。

次はナルト視点‥かな?




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