現代パラレル。


 次男と三男の恋愛事情





自分に弟ができたのは、もう10年以上も前になる。

事故で両親を亡くし身寄りがなかったそいつを引き取ったのが、そいつの両親と友人だった自分の両親。
当時二歳だった自分にその時の記憶はほとんどなく、自分の古い記憶には当たり前のように常にそいつはそばにいた。

たとえ同い年で血は繋がっていなくとも、自分たちは初めて出逢った日から兄弟だった。
喧嘩ばかりだったが、確かに自分にとっては大事な弟だったのだ。


そしてその頃からすでに、自分は無自覚な想いを弟へ向けていたのだろうか。




ちゅ、ちゅ。
微かな音とともに、温かくて柔らかい感触。
終始優しく触れるそれは、額、瞼、頬へ何度も降ってくる。

擽ったさに身をよじれば、すでに腰と背中にまわされた何かで離さないとばかりにぎゅっと引き寄せられる。


「ん‥‥」


「サスケ‥起きろってばよ‥」

耳元でそっと囁かれ、次第に覚醒へと導かれていきながらゆっくりと瞳を開く。

静かに目の前の眩しい金色を見つめていると、その主の表情がさらにぱぁっと眩しいものへと変わった。


「へへへ。おはよ、サスケ」

最後に顔中へ降らせていた口づけを唇へ落とし、吸い付かれたサスケは一気に眠りから覚醒する。


「てめ、ナルト!何やってんだ!!」

サスケは反射的に起き上がろうとするが、ナルトの腕に捕われて身動きができない。


「何って、サスケを起こしにきたんだってばよ」


「そんなこと分かってる!だからっていつもいつも勝手に人のベッドに潜り込むんじゃ‥て、どさくさに紛れてどこ触ってやがる!!」

あらぬ場所に違和感を感じて慌てて振り向けば、ナルトの手はズボンの中に入りこみ、いやらしい手つきでサスケの尻を撫で回していた。
サスケは目の前の金髪男を鋭く睨むが、ナルトには全く効果はなく、楽しそうにニヤニヤと笑みを浮かべるだけである。


「サスケってば普段なかなか一緒に寝てくんねぇんだからさ。ちょっとだけ、な?俺たちはれっきとした恋人なんだし」


「お前のちょっとなんか信用できるか!この前だって‥‥ちょ、やめ‥!」


「最近全然シてねぇからそろそろ限界なんだってばよ。今夜お前の部屋行ってもいい?」


「‥こ、今夜は父さんも母さんも‥兄さんもいるだろ‥!」


「大丈夫だって。フガク父ちゃんたちの寝室はここから結構離れてるし!それにイタチ兄ちゃんにはとっくにバレて‥」

その時だった。
コンコンというノックの音がして、ガチャリとサスケの部屋のドアが開いたのは。


「サスケ、そろそろ起きないと学校が‥」

いつものようにドアを開けたイタチの言葉は、部屋の奥にあるベッドを見てピタリと止まる。
イタチから見れば、高校生にもなった弟二人がベッドの中で服を乱しながら抱き合っているのだから当然である。


「バ、バカ!このウスラトンカチが‥!さっさと退けよっ!!」

少しの間お互いに呆然と見つめながら固まっていた三人だったが、一番早く我に返ったサスケが今の状況をどうにかしようと慌てて抵抗する。
うっかりイタチの登場に気を取られていたナルトは、反応が遅れてそのまま呆気なくベッドから蹴り落とされてしまった。


「いってぇ‥。いきなり蹴り落とすことはねぇだろサスケぇ‥」


「うるさい!兄さんの言うとおり学校遅刻したらどうするんだ!」

再びサスケが睨めば、ナルトは時計をちらりと見てから渋々といった様子で立ち上がる。
離れたナルトはすでに制服で、今日も朝から部活があるのだろうと思った。





「んじゃ、行ってくるってばよ!」


「‥‥あぁ」


「行ってらっしゃい、ナルトくん」


ナルトとともに階段を下り、先に部屋を出ていたイタチはダイニングのテーブルに二人分の朝食を並べていた。
先に朝食も終えていたらしいナルトは、そのまま一人玄関へ向かう。

自分とは違い、部活に所属しているナルトは毎朝練習のために自分よりも早く家を出る。
それをイタチと二人で見送るのがいつもの日課となっていた。


いつもどおり家を出るナルトを見送ったサスケは、やっと面倒なのがいなくなったとばかりに小さくため息をつき、静かに朝食の席に座る。
同じくイタチも席に着き、二人で『いただきます』と呟いた。




「‥‥‥‥」

今日は兄との二人だけの朝食がどうしようもなく気まずい。
サスケは先ほど兄に見られてしまった恥ずかしい光景を思い出しては、あいつあとで覚えてろよ!と今ここにはいない弟を恨み続ける。

実のところ兄にあのような光景を見られるのは今朝が初めてではないうえに、自分たちの関係もすでに知られているが、それでも自分はナルトのような細かいことは気にしない楽観的な思考には絶対になれないのだ。

サスケが小さくため息をつくと、気づいたイタチがどうした?と問い掛けてきた。


「‥別に、何でも‥」


「‥もしかしてさっきのことか?あんなのどうせいつものことだろう?」

本当に何でもないというように淡々と答えるイタチに、サスケはいつも何故、と思う。


一応この家では自分にとって弟となるナルトと恋人という関係になって、数ヶ月。
兄にナルトとの関係を知られたのもその頃で、血が繋がっていないとはいえ兄弟で男同士なんて確実に反対されるんじゃないかと思っていた。
しかし自分の予想とは大きく異なり、兄にはよかったな、と言われてナルトとともに笑って頭を撫でられたのだった。


「‥兄さん」

声をかければ、兄は手を止めて再びこちらへ視線を向ける。


「兄さんは‥‥何とも思わないのか?」


「何とも、とは?」


「だから‥‥、俺たちのこと。普通じゃ‥ねぇだろ‥」

自分らしくもなくどうしても声が弱気になってしまうのは、大好きな兄に軽蔑されたらという不安からである。

しかし、返ってきたのはいつもの穏やかで優しい声だった。


「俺は、お前たちが幸せならそれでいいよ」


イタチの言葉に、サスケは無意識に俯いていた顔を上げる。


「一般的に見て普通とは言えない関係だとしても、それでもお前はナルトくんを選んだことに後悔など全くしていないんだろう?」


優しく微笑む兄への答えに、迷いは一切感じなかった。

この兄は、もうとっくにすべてが分かっているのだ。





「行ってらっしゃい、サスケ」


「‥行ってきます」

ナルトが家を出てから数十分後、イタチに見送られながらサスケが学校へ向かうのもいつもの日課である。

サスケが靴を穿いて家を出ようとしたところで、不意にイタチがそういえば、と思い出したように声をかけてきた。


「兄さん?」


「今朝母さんたちが言っていたんだが、今日は二人とも仕事でかなり遅くなるそうだ」


「そうなのか?」


「あぁ。それでな、今日は俺も夜に大学の友人と出かけることになっていて遅くなるんだ」


「‥‥‥え」


ちょっと待て。
そこで一旦、サスケの思考は止まる。

つまりそれは、今夜家には父さんも母さんも兄さんも誰もいない‥ということなのか?


『今夜お前の部屋行ってもいい?』
思わず今朝のナルトの言葉を思い出して固まってしまったサスケを気にすることなく、イタチはいつものように微笑む。


「今夜はナルトくんと喧嘩することなく、二人で仲良くしろよ」

心なしか『仲良く』を強調するイタチの言葉に、サスケの頭にはあのウスラトンカチな恋人がニヤニヤといやらしく笑う姿が嫌でも浮かんできてしまう。

どんどん赤く染まる顔をどうすることもできず、もう一度兄に小さく行ってきますと告げてサスケは足早に家を出る。
後ろから、ナルトくんにもちゃんと伝えておいてくれよと聞こえたが、そんなことを簡単にあいつに言えるわけがない。

それではまるで、自分があいつを誘っているみたいではないか。



「あのバカ兄貴‥」


やはり兄は、すべてを分かっていたようだった。





 end




――――――――――

義兄弟なナルサス+イタチのギャグ‥なのか?(聞くな)
後半ナルトが全然出てきていないので、どちらかというとナルサスというよりはナルサス前提のうちは兄弟‥かも?;

当サイトの兄さんは基本この小説のようにナルサスの味方ですが、『弟に近づく悪い虫(ナルト)は排除する!』な兄さんも大好きですv笑

そしてもちろんこの兄さんに夜の友人との約束はなく、ラブラブな二人のために今夜はしばらく出かけていようと考えている弟想いな兄さんなのでした☆(ちなみにフガクさんとミコトさんの仕事はほんとです)




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