「あー!チョウジそれ俺の肉だってばよ!!」


「遅いほうが悪いんだよナルト。こういうのは早い者勝ちだからね〜!」


「ナルト、分かってねぇな。チョウジと焼肉食う時の基本は『狙った肉は全力で死守せよ』だぜ」


「あ、この肉も〜らい!」


「あぁ!それ俺の肉だろ!返しやがれチョウジ!!」


「一人余裕こいて油断してるからだってばよ、キバ」


「お前らめんどくせぇな。肉ならまた追加で頼めばいいだろ」

ジュージューと肉が焼ける音とともにたわいもない言い合いも聞こえてくる、焼肉店。
ナルトたち四人は先日の任務の打ち上げとして、下忍の頃から行きつけとなっているこの店に来ていた。



「それにしても、あと数週間でお前が火影になっちまうなんて‥俺は今でも信じられねぇぜ」

アカデミーの成績なんて断トツドベだったくせによぉ。
昔を思い出しているのか、キバは面白そうに笑い出す。


「でもほんとすごいよね。僕も実際にこんな日がくるなんて全く想像してなかったよ」


「まあ、どこまでいっても結局こいつは意外性ナンバーワンってことなんだろ」

キバに同意するチョウジやシカマルもまた、昔を思い出しては自然と笑みがこぼれていく。


「へへ。諦めさえしなけりゃ、アカデミー時代の成績なんて関係ねぇんだぜ!!」

昔からの仲間の言葉に照れくさくなりつつも胸を張って答えるナルトに、調子に乗るなと笑われるのはいつものことだった。


「昔からの夢もついに叶っちまったし、あとは‥なぁ?」

突然ニヤニヤと笑い出したキバに何が言いたいのかと首を傾げると、お前は何も分かってねぇな〜と肩を叩かれる。


「何なんだってばよ」


「バカだな。夢が叶っちまったお前の人生に必要なものっつったら、あとは美人な嫁さんしかねぇだろ?」


「嫁ぇ?」


「つまり結婚。火影にでもなれば女なんてより取り見取りなんじゃねぇの?」


「‥別に女にモテたくて火影になったわけじゃねぇってばよ」


「でも実際かなりモテてたじゃねぇか。しかも結構可愛い子ばっかだったしな」

お前だってちょっとは満更でもなかっただろ?
楽しそうに笑うキバに、思い出すのは今回の任務でのこと。


今回の任務は火の国の大名の護衛だった。

しかし護衛といいながらも、実際はただの火影就任前の挨拶回りのようなもの。
任務のあいだ何回か大名主催の集まりに招かれ、ナルトはずっと火の国の何人ものお偉い人たちに会わされていた。

しかもそれだけではなく、会うたびにしつこく自分たちの娘や孫娘の紹介までされたのだ。


確かにナルトが紹介された女の子はみんな綺麗な子ばかりで、そんな彼女らに想いを寄せられれば、男なら悪い気はしないと思う。


けれど、どんなに可愛い子から告白されようとも、自分が本当に好きな子から想いを告げられなければ何の意味もない。

そのことを、今回ナルトは改めて実感したのだった。



「でさ、見てみろよ!俺がお前の代わりにもらってきてやったんだ」

そう言って渡されたのは、何枚もの女の子の写真だった。


「何だこれ?」


「これ全部お前が紹介されてた女の子たちだぜ」


「げ」


「おま、げってなんだよ。失礼な奴だな」


「だってさぁ。その気もねぇのに女の子紹介されたって、俺にとっちゃ迷惑なだけだってばよ」


「迷惑って‥もったいねぇなぁ」

そんなんじゃいつまでたっても結婚できねぇぞー。
呆れたように呟くキバを気にすることなく、ナルトは再び目の前の肉へと箸をのばす。



キバに言われなくても、心から結婚したいと思う相手ならすでにいるのだ。

世界でたった一人、この先何があってもずっとずっと一緒にいたい相手。


あと数週間、正式に火影に就任したら、彼女には今まで秘めていた自分の想いを告げようと決めている。

たとえ呆気なくフラれたとしても、諦める気は微塵もない。
何度だって、想いを告げてやるつもりだ。


昔とは違い、彼女はちゃんとこの里にいるのだから。

大好きな彼女とともに、ゆっくりと幸せな未来を掴んでいけばいい。







何も知らないまま、ナルトはそんなことを考えていた。





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とりあえずナルト視点はこんなかんじ。

たとえ両想いであろうとも、そう簡単にはうまくいかないのが当サイトのナルサスです。笑




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