学園パラレル。
不器用な野獣と
「さっさとこっち来いよ!」
「‥‥ぐ‥っ」
勢いよく校舎の壁に叩きつけられ、背中がズキズキと痛む。
自分の目の前を囲むのは、四人のクラスメイトである。
「離せ‥!!」
「フン、相変わらずムカつく目しやがって」
「いいじゃねぇか。こういう奴ほど屈服させるのが楽しいんだ」
「こいつ、顔だけは美人だからな」
「もういい加減諦めてなっちまったほうがいいぜ?ナルトのモンにな」
クラスメイトの一人であるキバが言った、ナルト、という名にサスケはぐっと拳を握り締める。
今のサスケにとって、その名は嫌悪の対象でしかなかった。
「サスケ」
クラスメイトの数歩後ろから黙ってこちらを見つめていた男が自分の名を呼ぶ。
金髪に、青い瞳の派手な男。
サスケがその男を敵意を込めた目で睨むと、ナルトは面白そうにこちらへ向かってきた。
サスケの前に立ち、近視でかけている眼鏡を外して両の頬に手を這わせる。
そのままさらに顔が近づき、当然のようにナルトの唇が自分の唇と重なった。
「‥‥や‥っ、はな‥んぅ‥!」
頭を振って振りほどこうとするが、がっちり掴まれてびくともしない。
ぴちゃ、と漏れる小さな音。
口の中で、ナルトの舌が強引に絡んでいく。
嫌で嫌でたまらないのに、どうやっても抵抗できないのが悔しかった。
「あんま恐い顔で睨むとせっかくの美人が台なしだってばよ?」
にやりと余裕の笑みを見せられ、今すぐ思いっきりぶん殴ってやりたいのに、両腕をクラスメイトに押さえつけられて動かすことができない。
「なあ、さっさと俺の彼女になればいいじゃねぇか。そしたらもっと優しくしてやるけど?」
「誰がてめぇの彼女になんかなるか!気色悪ぃんだよ変態野郎が!!」
「顔に似合わず口の悪さは相変わらずだなぁ。可愛くねぇってば」
「おいナルト、こんな奴さっさとヤっちまえよ。一度ヤれば少しは大人しくなるだろ」
そう言って、クラスメイトの二人がサスケの制服のシャツとズボンに手をかける。
カチャカチャとベルトを外そうとする音が聞こえて、サスケは慌てて叫んだ。
「な!?やめろ!離せっ!!」
「うるせぇな、大人しくしてろよ」
「痛くされたくなければ大人しくしてるほうが身のためだぜ?」
クラスメイトたちが今から自分に何をしようとしているのか。
ニヤニヤと厭らしく笑う姿に、嫌でも理解してしまう。
ちくしょう、なぜ。
なぜ自分が、こんな目に。
一ヶ月前にこの男子校に転入してきたばかりのサスケには、今のこの状況がただの悪い夢にしか思えなかった。
こんな最低な奴らと関わることになってしまったのは、恐らく転校初日の出来事がきっかけだったのだろうと思う。
その日サスケは、隣の席だったナルトにあろうことか初対面でキスされてしまったのだ。
『お前のこと気に入ったぜ。俺の彼女にしてやるってばよ』
冗談じゃない、何の嫌がらせだ、と思った。
男である自分にキスをし、あげく彼女だなんて頭がおかしいとしか思えない。
怒りのままに殴り掛かったサスケの拳は、ナルトによって容易く受け止められてしまった。
このうずまきナルトという男は、校内ではかなり有名な不良グループの中心で、喧嘩は滅法強く誰もが逆らえない存在らしい。
その日以来ナルトたちに暇つぶしの玩具として目をつけられたサスケは、絶対にこんな奴らには屈しないと心に何度も誓いながら、何度も繰り返される今の状況をひたすら耐えてきたのだった。
「お前ら、やめろよ」
不意にそう言ったのは、ナルトだった。
「何だよナルト、今日こそヤるんじゃねぇのかよ?」
「こんな華奢な奴、どんなに暴れたって俺たちで十分抑えられるぜ?」
不満げに呟く二人を無視して、ナルトはサスケのほうに再び近づいてきた。
「今日は俺の気分が乗らねぇから、これだけで勘弁してやるってば」
ナルトはサスケの顎を押さえてキスすると、そのまま唇を首筋、鎖骨、胸へとゆっくり移動させていく。
途中何度か強く吸われ、サスケはチクリとした小さな痛みに耐える。
離れる間際、耳元でナルトの声が響く。
「でも他の男には見せちゃだめだってばよ?この身体は、俺のモンなんだから」
踵を返し去っていくナルトたちを睨みながら、残された赤い痕を隠すようにシャツを握りしめる。
支えを失い、体に力が入らなくなったサスケはガクンと地面に座り込んだ。
身体が、小さく震える。
あんな最低な奴、大嫌いだ。
大嫌いな、はずなのに。
ナルトの言葉の意味を理解した瞬間。
サスケの身体に走ったのは怒りでも恐怖でもなく、
ほんの一瞬の、甘く溶けそうなほどの痺れだった。
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学パロで不良な野獣ナルトと、美女(?)サスケ。
『不良×いじめられっこ』でリクしてくださった方、ありがとうございますv
一応いじめられてるサスケですが、地味にはなってなくてすみません‥。
もう少し続きます。