中間考査の最終日。
今日で全教科のテストを終え、サスケは職員室で自分が担当するクラスの答案を採点していた。
いくつもの答案を採点していくうち、『うずまきナルト』とお世辞にも綺麗とは言えない字で書かれた答案にたどりつく。
ピタリと手を止めたサスケが思い出すのは、テスト初日の放課後でのこと。
あの日以来、朝ナルトが自分とともに教室へ向かうことはなくなった。
サスケが教室へ入る頃にはすでに席に座り、ナルトは普段どおりにクラスメイトと喋っている。
毎日のHRで姿は見かけるものの、それ以外には全く接点はなく、目さえ合わすことはない。
これが本来の教師と生徒の関係なのだろう。
そう納得する一方で、かつて自分に向けられていた彼の眩しい笑顔を思い出してしまえば、サスケの胸には締め付けられるような痛みが走るようになっていた。
「サスケ」
不意に呼ばれた名に、サスケははっと我に返る。
手が止まったまま慌てて振り向けば、横には自分が担当するクラスの生徒が立っていた。
「‥奈良」
「これ、まだ提出してなかったの思い出した」
差し出されたのは、すでに提出期限が過ぎた数学の課題だった。
「‥今度からはしっかり提出期限守れよ」
受け取った課題にざっと目を通し、検印を押してすぐに返却する。
それにめんどくさそうに返事をしながら、シカマルはちらりと机の上にある採点途中の答案へ視線を向けた。
「あーあ。ナルトの奴、その様子じゃマジで赤点なんじゃねぇの?」
「おい。人の答案を勝手に見るな」
「‥あいつ、全然勉強に集中できなかったみたいだからな」
シカマルの言葉に、サスケは内心どきりとする。
あの時の、ただひたすらに想いを告げてきた彼の姿が嫌でも頭を過ぎってしまう。
黙り込むサスケに、シカマルは薄く笑みを浮かべる。
「あいつバカだから、あんた次第でどうにでもなっちまうぜ」
いちいちめんどくせぇ奴なんだよな、そう呟きながら用は済んだと職員室を去って行く。
そんなシカマルを見送り、サスケは内心小さく舌打ちする。
自分に、一体どうしろというのだ。
『だからあんたがどうにかしろよ』
先ほどの彼の言葉は、遠回しに自分にそう告げていた。