「ここはこの公式を使う」
「‥へぇ」
「それで、こっちは違う公式を使って‥」
「?この問題とこの問題、どう違うんだってばよ?」
「‥‥‥」
サスケは呆れたように小さなため息をつく。
先ほどからこんな会話ばかりが繰り返されている。
初日のテストが終わり、放課後の誰もいない教室で、さっそくナルトはサスケから勉強を教わっていた。
実際、勉強を教わるというのはただの口実で、本当はサスケと一緒にいたかっただけ、というのは彼には内緒だ。
「あーあ、俺疲れちまった。休憩にしねぇ?」
「お前、まだ20分もやってないぞ‥」
「俺の集中力は10分が限界だってばよ」
「‥小学生か」
サスケは再び呆れたようにため息をつく。
子供だと思われるのは嫌だが、限界なものは限界なのである。
「それよりさ、前から‥聞きたかったことがあるんだけど」
「何だ」
サスケは仕方ないと言わんばかりの表情で、ナルトへ視線を向けた。
「サスケって‥臨時だろ?その‥いつまでこの学校にいんの?」
内心、恐る恐る尋ねる。
ずっと、聞きたかったことだった。
もうあまり時間がないということは、分かっているけれど。
「年末までだ。年明けからはここの担任が復帰するらしい」
何でもないかのように、どうでもいいことのように、淡々とサスケは話す。
「‥‥1ヶ月、半‥」
それが何だか、無性に切なくなる。
どうでもいいことなんだろうか、と。
「‥サスケは、ここ辞めたらどうすんの‥?」
「前の学校へ戻る。もともと俺がいた暁は木の葉の系列の学校で、人手不足だからと呼ばれただけだからな」
「じゃあ、ほんとに‥」
あと、1ヶ月半しかない。
たったそれだけの時間しか、一緒にいられないのだ。
年が明けたら、もう会えなくなってしまう。
サスケはこの学校からいなくなってしまうのだ。
そんなの。
「絶対、嫌だ‥」
「‥え」
「サスケと会えなくなるなんて‥俺は嫌だ‥!」
「‥‥‥うずまき?」
サスケは目を丸くしながら自分を見ている。
いきなりこんなことを言われても、困惑させるだけだろう。
でも。
それでも。
「この学校に‥残ってほしい‥」
何もないまま、サスケと離れたくはないんだ。